第289話 悩み

 テレーザさんが学校に登校を開始して2日目。


 テレーザさんとブラットの試合をたまたま見ていた人から、ブラットが負けたという話があっという間に広がり、クラスでも話題になっていた。


 カーラ先生からテレーザさんは天才の部類だとは言われていたが、自分の中での天才であるブラットを倒したというのは、テレーザさんの評価がもの凄く上がった瞬間だった。


 まあ、自分もブラットに勝つことは出来るが、ブラットは対応力が凄いのでトータル的には負けてしまうのだ。


 しかし、話によるとテレーザさんとブラットは何回も闘っていたが、全ての試合に勝ったらしい。


 ブラットから全勝出来るにはカーラ先生みたいな身体能力高い大人か、同世代ならエレナの【野生の勘】というチートスキルみたいなものを持つひとしか想像出来ない。


 こんな事なら自分もブラットとテレーザさんの試合を見に行けば良かったなと思う。


「テレーザさんは登校して2日目なのに大人気だね。」


「そうだな。」


「ブラットは結局、何回負けたの?」


「あ~、数えてないけが20回以上は負けた気がするな。」


「そんなに負けたの?」


「ああ、最後まで攻略法が分からなかったな。」


「ブラットがそこまで言うのは予想外だね。 テレーザさんが格闘技を使うのは聞いたけど、実際はどんな感じだったの?」


「本人が言うには帝国発祥の古武術で、カウンターで殴られたり投げられたな。あとは関節技などもあって複雑な感じだったぜ」


「帝国発祥の古武術……?」


 また帝国か。


 確か帝国は、日本からの転生者などが国を作ったのではないかと予測するくらいにいろいろな物が日本っぽいらしい。


 冒険者になったら是非行ってみたい国のひとつではある。


 しかし、帝国発祥の古武術ってほぼ日本人出身者が居たのは確定じゃないか?


 まあ、前世ではあまり格闘技には詳しくなかったから古武術って言われても本物かは分からないけどな……


「あとは俺の攻撃がほとんど効かなかったな。俺の剣戟を素手で受け止められた後、気が付いたら殴られたり投げられていたんだ。」


「えっ、それって木の大剣?」


「いや、金属製の大剣だぜ。殺傷力のあるスキルは使わなかったが、手加減のしてない攻撃を素手で受け止められたのはオヤジ以来だな。」


「それは凄いな……」


 自分の【魔導壁】ですらサクサク破壊していくブラットの攻撃を素手で受け止めるなんて……


 テレーザさんが取得した【天翔翼】ってスキルの効果なんだろうか?


「ああ、これからは同じパーティーメンバーだから模擬戦相手には困らなくなりそうで助かるぜ。」


「エレナとは戦わないの?」


「【ハンタースクール】に入ってからはほとんどエレナと戦わなくなってるぜ? レイも戦ったら分かるだろうが、強さの次元が違うって感じだからな。」


「確かにエレナには勝てる気がしないな……」


 以前は多少なりとも勝てそうな気はしたんだけどな……


「それにエレナは学校が終わるとどこかに行っちゃうからな。」


「そうなの? エレナは前から謎が多かったけど、更に謎が増えてるね……」


「レイ、ちょっと相談があるんですが良いですか?」


 ブラットと話をしていたらコーデリアとシンシアが真剣な表情で話しかけてきた。


「うん、大丈夫だけど、場所を変える? そういえば、僕も2人に相談したい事があったんだった。」


「はい、お願いします。」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る