第288話 黒き悪魔
自分はカーラ先生の屋敷の外でスモールグレーキャットの特訓をしていた。
まあ、特訓というよりはペットにしつけをするイメージだろうか。
前世ではあまりペットを飼ったことが無かったので、どうすれば良いのかなと最初は迷ったが、いろいろ試している内にスモールグレーキャット達は自分の話が理解出来ている事に気が付いた。
相変わらず、自分の耳にはチーチーとしか聞こえないから意志の疎通が一方通行だが、小さい生き物たちを【テイム】出来たのは便利だと思った。
今のところやるつもりは無いが、スパイ活動なんかもスモールグレーキャットを使えば違和感なく出来る気がする。
そんなわけで自分はスモールグレーキャット達に【魔力操作】が出来ないかを試していた。
先生の話では自然界にいる獣や魔獣が【魔力操作】を出来るかは不明らしいが、多分出来るだろうとの事だった。
研究者や調査員が自分みたいに【魔眼】を持っていれば【魔力】の流れで分かるのだろうが、冒険者の勘レベルでスキルや【魔法】の様な現象を起こしたりしているから、多分出来るだろうって感じだろう。
そして、自分なら調べられると思ったので、スモールグレーキャット達に【魔力操作】の指示をしていた。
「マスター、カーラ先生の庭で訓練をしても良いのですか?」
「うん。カーラ先生の許可はとってるよ。 だだし、庭以外の敷地内でスモールグレーキャットが出た場合は始末されちゃうみたいだけどね。」
「どうもカーラ先生とメイド達では認識が違うみたいですね。」
「なにが?」
「メイド達はスモールグレーキャットに恐怖しており、見つけ次第即殺という感じなのに対してカーラ先生は居ても気にはならないという感じです。」
「本当にGみたいな扱いなんだね……。 小さい猫って感じで可愛いんだけど。」
自分は【魔眼】によりスモールグレーキャットの体内にある【魔力】を見ているとしっかりと【魔力操作】っぽい事が出来ているのが分かった。
自力で【魔力操作】が出来ない場合は、クラスメイト達に使ってみたやつみたいに強制的な【魔力操作】を体験させるのも考えていたけど、自然に出来ているので野生動物は凄いなと思った。
スモールグレーキャットも自分達みたいに毎日【魔力操作】をさせていたら【魔力】量が上がったりするのだろうか?
現在の【魔力】量は微々たるものだけど、個々がスキルや魔法などを使える様になったら面白いな。
しばらくスモールグレーキャットがチーチーと動いているのをぼっーと見ているとセシリアが変化に気付いたらしい。
「マスター、一部の個体に変化が現れましたよ。」
「えっ、どれ?」
集団がモサモサしていて何が変化したか分からないな……
「一部の個体の毛並みが黒く変化しています。」
「あっ、本当だ。」
【ティム】が成功した時に毛並みが若干黒くなっていたけど、今回は完全に真っ黒に変化していた。
そして、真っ黒な個体を【鑑定】してみる。
そしたら種族名がスモールグレーキャットからアビスハートに変わっていた……
「アビスハートって不穏な種族名はなんだ? アビスキャットとか猫やネズミ関連の名前ですら無いじゃん」
ってか種族名って変わるものなのかな?
「マスターの眷属になり強制的に進化したのでしょうか?」
チー、チー。
最初は数体だけの変化だったのだけど、アビスハートへの変化が一気に広がっていき、数分の間に全てのスモールグレーキャットがアビスハートへ変わった事により、灰色の集団から真っ黒な集団に変わっていた。
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