第284話 テレーザ
自分とカーラ先生が晩御飯を食べていると、入り口の方で少し音がしたのに気が付いた。
誰か来たのかな?
「帰ってきたか。」
カーラ先生も入り口の音に気付いていたみたいだ。
しかし、このカーラ先生の反応は使用人が戻って来たとか、そういう反応ではないな。
まあ、これだけデカい屋敷なら、使用人が入り口を使うこと無いだろうけど……
「カーラ先生って結婚してないですよね?」
「ああ、そうだな。 帰って来たというのは……」
バンッ!!
「レイさんはもういますか!!」
勢いよく食堂の扉が開いたと思ったら、銀髪の女の子が自分の事を探す為なのか、キョロキョロしていた。
「ああっ、レイさん! 久しぶりです!」
銀髪の女の子は自分を発見するなり嬉しそうに抱きついてくる。
突然に抱きつかれたからビックリして反応出来なかった。
しかし、誰だ?
「ああ、久しぶりです。」
向こうの銀髪の女の子は明らかに自分の事を知っているが、自分には誰だか分からなかったが、明らかに親しい感じだったのでとっさに知っているふりをしてしまった。
「テレーザ、騒ぐな……食事中だぞ。」
「す、すいません。 ですが、カーラさんが食事中のマナーの事を言うなんてどうしたのですか?」
「旨いものを食べている時は集中したいんだ」
なるほど、この銀髪の女の子が話題のテレーザさんか……
多分、カーラ先生は自分がテレーザさんだと分かっていないのを察して名前を呼んでくれたんだろう。
しかし、不思議と銀髪の女の子がテレーザさんだと分かった途端に、昔の可愛らしい時のテレーザさんが頭の中に浮かんできそうなんだけど……
抱きつかれた時に何故か青いリボンが気になったのと、とても似合っていたので
「そのリボンはとても似合ってますね。」
「覚えてくれてたんですね! このリボンを付けてから凄く調子が良かったのでずっと付けてるんです。それにレイさんからもらったものは私の宝物です。」
「それは良かった。だけど、何でテレーザさんがカーラ先生の家に来てるの?」
「元々、テレーザは【スカウトフォート】の出身だからな。 今は王都に屋敷を移したが、昔は近くに屋敷があったから、テレーザは昔からよく遊びに来ていたんだ。」
「そうなんです。本当はレイさんが【スカウトフォート】に来るのは知っていたので、すぐにでも会いたかったのですが、私にはやらないといけない儀式があったので【スカウトフォート】から離れていたんです。」
「儀式?」
「はい。王族には【天翔翼の儀】という儀式を受けなくてはいけない決まりがあるのですが、私は適正値が高めだったので儀式が長引いたんです。」
「へ~、そんな儀式があるんだ? 適正値が高いなんてテレーザさんは凄いんですね。」
【天翔翼の儀】がどんなものかは分からないが、王族が受けるものだから凄いんだろう。
「【天翔翼の儀】は王族のみが使えるスキル【天翔翼】を取得する為の儀式だが、適正が無いと取得は出来ないんだ。」
「って事はカーラ先生も【天翔翼】を使えるんですか?」
「いや、私は適正が無かった方だから使えない。しかし、テレーザは近年の中では適正値がダントツで高いらしいぞ。」
「テレーザさんは凄いんですね」
「そんな、レイさんはきっと私なんかよりも凄いんでしょうね!」
「テレーザは近接戦闘の天才と言われてるから、近接戦闘ならレイより強いかもな」
「カーラ先生がそこまで言うなんて凄いですね……」
もしかしたらエレナ並に凄い戦闘能力があるのかな?
「それはきっとレイさんがカーラさんの前で本気を出してないだけです! 私なんかがレイさんに勝てる筈がないですから!」
「いや、そんな言うほど僕は凄く無いよ?」
テレーザさんの自分に対するリスペクトが高すぎるのだが、何故だ?
確かに最近になって、新しい力などを手には入れたが未だに使いこなせてはいないので、テレーザさんの言うほど凄くもないと思う。
現に自分はエレナにボロ負けしたしな……。
「そしたらカーラさんにレイさんの本気を見せてあげて下さい! きっと評価が変わるはずです!」
昔の自分はテレーザさんにどんだけ凄い事をしてみせたのだろうか?
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