第283話 カーラ先生の自宅へ ②
自分はカーラ先生の自宅で当分の間、泊まることになったのだが、晩御飯を見てビックリしていた。
「マギリさん? これは大丈夫なんですか?」
「レイさん、こればかりは仕方ないのですよ……。私達も説得はしているのですが……食べ物くらいは好きなものを食わせろって譲らないもので……」
「これはセシリアショップの唐揚げですよね?」
自分の目の前には山盛りのセシリアショップの唐揚げだけがかなり大きな皿に乗っかっていた。
一応はスープもあったがもしかして晩御飯のおかずはこれだけなのか?
「ああ、この唐揚げと酒さえあれば十分だろ?」
いやいや、それは飲んでいる人の発想だろう?
「これって今日だけですか?」
「……これが毎日なのです。」
「えっ……マジですか?」
自分も前世では揚げ物とビールを晩御飯にしていたときはあるが、多少は野菜とか数種類の揚げ物があったりしたのだが、目の前には数キロはありそうな唐揚げとスープ、大ジョッキのブドウジュースだった。
「セシリア……何か良いの無い?」
「サラダと白いご飯で良いですか? 良ければソースもありますけど。」
「唐揚げにサラダとご飯は良い組み合わせだね。何杯でもご飯が食べられそう。」
「何だ、レイは白いご飯が好きなのか? あれはパラパラで好きじゃないんだよな。」
「パラパラ? ふっくらじゃなくてですか?」
白いご飯がパラパラってどういう事だ?
この世界のお米事情は分からないが、【モロット】と【チェスガン】では前世でもなじみのお米だったけど、もしかしたらカーラ先生の食べているお米は違う種類なのだろうか?
「カーラの言っているお米はドワーフ国で主流のお米を言っているのです。」
「なんだ? あの米とは違うのか? 王城で食べていた米は全部パラパラだっただろ。」
「あの米は王国でほとんど出回っていないものです。」
「それは初耳だぞ……?」
「カーラ先生、ふっくらしたご飯を食べてみますか? 美味しいですよ。」
正確には自分の【素材の極み】によりチート級の美味さになった究極の白米なのだが、とりあえず食べてもらった方が早いだろう。
カーラ先生に白いご飯を薦めるとちょっと嫌そうな顔をするが、もの凄く美味しそうな匂いに負けて、一口食べてみる。
「な、なんだこれは……!? 昔食べたものと全然違うぞ! マギリ!!」
「ちょっと、カーラ。そんなに殺気を出さないで下さいよ。私は慣れていて大丈夫でも普通のメイド達がビックリするでしょう。」
「うっ、すまないな。しかし、これは美味しい以前に形すら違う食べ物だぞ。」
やっぱり米の形して違うのか……。
パラパラのお米って言うと、前世では一度だけ米不足の時に輸入された海外産のお米を食べたことがあったな。
あれは海外産のお米を日本製の炊飯器で炊くと凄くまずい飯が出来るという負の歴史では無いだろうか?
元々、パラパラのお米は日本のお米みたいに粘り気が無いから、チャーハンやカレーライス、パエリアみたいなものにするのが美味しかった気がするな。
「レイさん、私にもそのご飯を食べてみても良いですか? カーラの反応からして美味しいとは思いますが……」
「たくさんあるんで大丈夫ですよ。セシリア、みんなの分も頼むね。」
「分かりました、マスター。」
マギリさんにだけ渡すのもアレなんで、今日からお世話になるんだしメイド達、他の従業員の分も渡しておく事にした。
評判が良ければおにぎりにしてみるのも良いかもしれない。
「こ、これは確かに美味しいですね。しかしですねカーラ、【スカウトフォート】で食べられるお米と形は似てますが、味が全く違いますよ。」
「どういう事だ?」
「普通のご飯っぽいですが、別物の料理じゃないかと錯覚する位に美味しいのです。セシリアショップから購入している唐揚げも再現不可能なレベルの美味しさですし……何故でしょう?」
それは全て【素材の極み】が犯人なんだけど、あえて何も言わないことにした。
「なるほどな、レイとセシリアは冒険者じゃなくて料理人になった方が良いんじゃないか?」
「それは良い案ですね。レイさんなら王城での就職も斡旋出来ますよ。レイさんが王城で料理を作ればカーラも王女として戻ってくれるかもしれませんしね。」
「その手は汚いぞマギリ! 私は自由に生きたいんだよ!」
「僕もどこかに就職しない冒険者になりたいんで、料理人になったとしてもセシリアショップなどで料理を出すくらいですよ。」
「それは残念ですね。」
前世の影響だろうけど、やっぱり戦闘職よりも生産職の方が得意なんだよな。
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