ジョブホッパーの魔導譚

第277話 テイム

　自分はニャルルさんから【テイム】を習うために、一度スモールグレーキャットを【テイム】している場面を見せてもらう事にした。

　本来は説明して欲しかったが、ニャルルさんが詳しい説明は出来ないので仕方なく見て覚えるスタイルに変更したのだ。

「行くにゃ！！」

　ニャルルさんは両手を使い、スモールグレーキャットの腹を掴むと一気に【魔力】を流していった。

　【魔力】は腹から肩へ、そして肩から上へと徐々にだけど流れているのが分かった。

「うにゃ～～！！」

　次第にニャルルさんは気合いを入れてなのか叫びながら【魔力】を流す量が徐々にだけど上がっていき、スモールグレーキャットの頭部辺りにニャルルさんの【魔力】が到達すると微かに滞留していた。

　しばらくニャルルさんは【魔力】を流し続け、数分が過ぎた辺りでスモールグレーキャットが突然体を震わせて倒れたと思うと、むくっと起き上がりニャルルさんに懐きだした。

「もしかして【テイム】が成功した？」

「はいにゃ……これが【テイム】にゃ……」

　なるほど、対象に【魔力】を流して操るみたいなイメージなのかもしれないな。

　特に頭辺りに【魔力】が集中しているから試してみるかな……？

「それにしても肩で息してるけど、大丈夫？」

「は、はいにゃ……私は【魔力】量が少ないから、１回【ティム】するのも大変なんだにゃ……」

「もしかして、ニャルルさんは大きめの生き物は【ティム】出来ない？」

「にゃ、にゃんでそこまで分かるにゃ！？」

「なるほどね……何となく分かったかも、ちょっと試してみるよ」

「出来れば早めにお願いにゃ。２人が目覚めたら、また気絶しちゃうかもしれないにゃ。」

「りょ、了解。」

　そう言えばコーデリアとシンシアは大丈夫かな？とふたりの方を見たら、気絶はしていないがさっきよりかなり遠くまで逃げていた。

　もしかしたら、自分が思っている以上にスモールグレーキャットは不人気っぽいな……

「さてと……一気にやってみるかな」

　早めに終わらせる意味もあるが、【テイム】の経験を大量に稼ぐ目的で自分は数十の【魔導】を軽く圧縮し、それを近くにいたスモールグレーキャットの頭部に流し込んでみる。

　【魔導】を軽く圧縮しただけのものをぶつけても軽い衝撃を受けるだけのはずだが、スモールグレーキャットはバタバタと全て倒れてしまった。

「あっ！？」

　圧縮がつよかったのかな？

　流石にスモールグレーキャットが死んでしまうのは可哀想なので、近くに行ってスモールグレーキャットを確認してみたら気絶しているだけみたいで、セシリアに頼み気絶したやつは回復してもらうことにした。

　しかし、何がいけなかったのかな？

「ニャルルさん、【テイム】する時ってどんな事を考えてますか？」

「うーん、仲良くなりたいと考えてるかにゃ。それ以外は特にないかもにゃ。」

「ああ、なるほど……仲良くなるイメージか。」

　確かに【魔物使い】などでよくあるパターンだな。

　ギリギリまで【魔導】を与えて、仲良くなりたいとイメージを植え付ければ、もしかしたら成功するかもしれない。

　自分はスモールグレーキャットをよく見て、仲良くなりたいと思いながら……【魔導】を圧縮していく。

　あっ、そういえば【魔導】も一気にぶつけてはショックがデカすぎるだろうから、繊細に流していく感じに……

　それから何回も【テイム】の失敗を繰り返したが、一度気絶したスモールグレーキャットもしばらくしたら普通に復活して動き出していたので、ずっと練習が出来るのではないかとも思ったが、そろそろ練習出来なくなる時間が近づいてきていた。

　自分は更に丁寧にスモールグレーキャットと仲良くなりたいとイメージしながら、優しく【魔導】の塊を流し込んでみると、一瞬体をビクッとさせた後に動きを止めたのだが、少しするとこちらにすり寄って来る感じになっていた。

　【テイムを取得しました。】

　【テイム取得によりジョブホッパーが発動します。】

　【副職種、魔物使いを取得しました。】

　いつもの脳内アナウンスが【テイム】成功を知らせてくれていた。

「にゃ！？　レイくんが本当に【テイム】に成功したにゃ！？」

「うん、ニャルルさんのおかげてテストは成功したよ！　ありがとう！」

「そ、そんにゃ……レイくんが【テイム】出来たら私の存在価値が更に無くなるにゃ。」

「いやいや、そんな事はないよ？」　

　そう言えば、【獣使い】じゃなくて【魔物使い】になっているんだけど、どう言うことだ？

　【鑑定】してみても説明には魔物を操る【職種】としか書いてない。

　そもそもこの世界にいるのは魔物ではなくて魔獣じゃないのか？

【ステータス】

　名前・レイ（10歳）

　状態・良好

　属性・深淵

　主職種・魔導技師

　魔導剣士

　魔導操者

　副職種・魔物使い

　種族・人族

　パッシブ・防衛本能

　建築、土木、料理

　素材の極み

　鍛冶、パラレル思考

　共感覚、魔導科学

　特殊採取

　アクティブ・魔導操作、鑑定

　ストレージ、身体強化

　魔導工房、魔導具作成

　魔導弾、魔導腕

　魔導壁、魔導剣

　圧縮魔導砲、魔導細胞生成

　魔導剣術、二刀流

　魔導操術、魔装

　セカンド・テイム

　魔導工房内・作業室

　金属加工室

　合成室

　魔導炉

　複製室

　固有スキル・ジョブホッパー

　鑑定

　魔喰

　地獄門

　装備・魔導服