第276話 副職種 ②
放課後に【副職種】のコピーを試すためにクラスメート達とまた闘技場に来ていた。
放課後の同行をしてくれるのは自分が知らない先生だったから、いろいろ詮索されないで都合が良かった。
「それで私はなにをすれば良いにゃ?」
「ニャルルさん達にはスキル指導をして欲しいんだよね。」
「レイくんにスキル指導? って、レイくんに教えられる事は無いにゃよ?」
「えっと、ニャルルさんなら【テイム】【獣操作】【獣育成】のどれかをいつもどういう風にスキルを使っているかとか注意している点を教えて欲しいんだよね。」
「教えるのは良いにゃけど、全部【獣使い】が覚えられるスキルにゃから、レイくんが取得するのは無理じゃないかにゃ?」
ニャルルさんは不思議そうな顔でもっともな疑問を聞いてきた。
確かに自分も【職種】をコピー出来る人がいるなんて知らなければ、ただのスキルマニアだと考えてしまうだろう……
「本来なら僕がニャルルさんのスキルを使うのは無理なんだけど、ちょっと試したいことがあるんだよ。もしかしたら【獣使い】のスキルが使えるようになるかなって。」
「そんな事が可能なのかにゃ? ……でも不思議とレイくんなら出来そうな気がしてきたにゃけど、レイくんは【テイム】する獣はどうするにゃ? 【獣使い】のスキルはほとんど【テイム】しないと始まらないにゃよ。」
「それなら用意してあるから大丈夫だよ。 セシリアよろしく。」
「分かりました。 マスター。」
セシリアは持って来ていた、大きなカバンサイズの箱を地面に降ろす。
「あっ、ちょっとセシリア、箱を開けるのは待ってくれる? えっと、コーデリアとシンシアはかなり離れてた方が良いかな……」
「えっ? 分かりました。 離れていますね」
「うん、嫌な予感が、するから、離れる……。」
二人は不審気な表情で少し離れていく。
「もっと離れてた方がいいかな!」
自分はコーデリアとシンシアがかなり離れたのを確認したら、大きな【魔導壁】を展開して自分やニャルルさん達をまとめて覆う。
「えっと……レイくんは何故2人だけをあんなに離したのだ?」
「何か嫌な予感しかしないです……」
「ん? コーデリアとシンシアは集団でウジャウジャしてるのは嫌いだから離れてもらったけど、2人はニャルルさんとパーティーを組んでるから平気かなと思ってね」
「だから、何の話しているの…… キャアアア!?」
「ちょ、レイくん! それって!?」
話の途中だったけど、セシリアが箱を開けた事で捕獲していた生き物が一気に飛び出す。
「あ、あれは、スモールグレーキャットかにゃ?」
「流石は【獣使い】だね。 話ではレアな猫らしいけどよく分かったね。」
スモールグレーキャットは二足歩行する小さい猫で、一匹が数センチしかない可愛い生き物である。
街外れのペットショップで、うちでしか扱っていないレアな生き物だけど、格安で売ってくれたのだ。
しかも200匹近くいるので【テイム】の練習には良いだろうと思ったのだ。
しかし、何でオルミルクさんとリュミエルさんはあんなにキャーキャー言いながら逃げているのだろうか?
悪さをすれば反撃として噛んでくるらしいが、基本的には穏やかな性格の猫で集団生活を好むとペットショップの人は言っていた。
いや~、街外れだったからか我ながら良い買い物が出来たと思っている。
「レイくん……」
「どうしたのニャルルさん。 これだけいれば【テイム】出来るんじゃないかな?」
「レイくん、違うにゃ! スモールグレーキャットはレアな生き物じゃなくて嫌われ度が高いからペットにする人はほとんどいないって意味のレアな生き物にゃ! あとスモールグレーキャットは猫じゃなくてネズミにゃ!!」
「えっ? これがネズミ?」
確かに遠くから見たらグレーのネズミ集団に見えるかもしれないが、シマシマ模様の毛が全身に生えていて猫にしか見えないぞ?
「スモールグレーキャットは別名、灰色の悪魔って呼ばれていて、家にすみついたら食料を根こそぎ食べ尽くしてしまうネズミにゃ。 しかも繁殖力が高いからたちが悪いにゃ。」
「灰色の悪魔って……」
まるでGみたいな扱いじゃないか……
見た目は小さい猫で可愛いんだけどな。
「にゃっ!? 2人が大量にくっつかれて失神してるにゃ!」
「なら仕方ないからさっさと【テイム】の練習をして、箱に仕舞っちゃおうか、可愛いと思うんだけどなぁ……」
「それでもやるんにゃね。」
「せっかく大量に買ったんだからね」
「あれを買ったにゃか……レイくんは確実に騙されたにゃね……」
それからニャルルさんに【テイム】のやり方を聞いてみたが、実は【職種】を手に入れた時に使える様になっていたから、感覚でしかやり方が分からないらしい。
これは自分の【魔力操作】とかと一緒で、ニャルルさんは何となく手探りで出来る様になったみたいで、ほとんど説明が出来ないってのと同じだった……
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