第273話 魔喰の落とし穴 ③

 自分はブラット、セシリアと共に学校の闘技場を使わしてもらうために早朝から学校に来ていたが、廊下でカーラ先生とエターナル先生のコンビに話しかけられた。


「闘技場に同行する教師はカーラ先生とエターナル先生なんですか?」


「ああ、そうだ。 何か不満でもあるのか?」


「いえ、不満ではなくて2人もいるのかなって思いまして……」


 実際はカーラ先生だけでも属性が変わった事がバレそうなのに、エターナル先生みたいな属性付与の専門教師が居るとなると本格的にバレる可能性が高くなるなと思っただけだ。


 フレイザードさんに秘密結社の【魔眼協会】での出来事は他人には話さないで欲しいと言われてるんだよな。


 【魔喰】の説明をするなら、【魔眼】が進化したとでも言っておけばバレないとは言われたが、属性に関しての理由は任せると言われたんだよな。


「どうせレイがあの黒い鎧の性能試験でもしたいって理由で闘技場を使うんだろ? それなら危ないから私とエターナルの2人で対処するって事になったんだよ。」


「あとは私もレイくんの黒い鎧ってのを見てみたかったのよ。」


「そうなんですか……。」


「先生が多い方が安心だから良いんじゃねえか?」





 自分達が闘技場に着くと、自分、ブラットは模擬戦の準備をささっと始める。


 自分が【魔装】を使って、ブラットは学校が貸し出しをしてくれる金属製の剣と皮の鎧を構える。


 ブラットは基本的に特定の武器は使わず、貸し出しされてる剣を使っているが初めて使うものでも剣なら使いこなせてしまうのは凄いと思う。


「ブラットさん、今日はマスターの防御力を試したいので合図をしたら自由に攻撃して下さい。」


「ん? 何でセシリアさんが説明してるんだ?」 


「まだ【オルタナティブアーマー】を装着時はマスターが話せないので、私が代わりにマスターの言いたいことを伝えさせてもらいます。」


「会話が出来ない鎧ってかなりの欠点じゃないか?」


「今後の訓練次第で話せるようになると言ってます。」


「そうなのか……」

 

 ペンザエモンさんの話から推測すると話が出来ないのは【オルタナティブアーマー】のせいではなく、【魔装】のせいなのだが鎧の欠点にしておいた方が説明が楽だったので、全て【オルタナティブアーマー】の欠点にしておいた。


 【魔装】を使うと慣れるまでは声も【魔法】もほとんどが通らないのではないかと推測したが、よく考えたら相手の声や音は聞こえるし空気も吸える上に【魔素通話】は使えるという矛盾にぶち当たるので、現状は意味が分からないって感じだった。


 まあ、今回試したいのは【オルタナティブアーマー】の防御力で、搭載されている武装のうち【無慈悲な黒翼】と、【魔装】使用時のみ使える特殊スキル【聖なる堕天使の左手】が防御にも使えるだろう性能だった。


 まずは【無慈悲な黒翼】からだな……


 これは黒い翼を展開し、身体を覆う事で多少は攻撃を防げるかどうかのテストだ。


 本来の使い方は狭い範囲攻撃なんだが、危ないから今回はやらない。


 【無慈悲な黒翼】を展開して、翼で身体を包む。


「ブラットさん、攻撃して良いみたいです。 翼が破壊されるまで攻撃してみて下さい。」


「おう。 いくぜ!」


 バサッ、バサッ!


 ブラットは勢い良く剣で黒翼を攻撃してくるが、カーラ先生の攻撃みたいに身体ごと吹き飛ばされるみたいな衝撃は一切無い。


 目をつぶっていたなら、ちょっと身体を押されてるのかな?位の感覚でしかない。


 あとは多少だが攻撃される度に羽根が減っている位か……


 この黒翼を含む全ての武装に【自動回復機能】があるのだが、損傷具合で回復時間が違うみたいだ。


 武装の種類にもよるが、あまり損傷し過ぎると完全回復まで数日かかったりするみたいだから注意しないと必要な時に使えないなんていうトラブルが発生してしまう。


「くっ、何だこの翼はっ、手応えが全然ないぞ!?」


 今、ブラットがやっている攻撃は完全な物理攻撃だから、もしかしたら黒翼には物理耐性が高いのかも……


「レイ、見ているだけだと暇だ。 協力してやるから私にも攻撃させろ。」



 えっ……?

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