第271話 空白の歴史

 自分はフレイザードさんの言う精密検査がどんなものか、ちょっとドキドキしたのだが、やったことは台の上に寝かされてスキャンみたいな事をされただけだった。


 それから結果が出るまで暇になったのでペンザエモンさんと【魔装】について話していた。


「ペンザエモンさん、【オルタナティブアーマー】を着ている時に【魔法】が使えなかったんですけど、そう言うものなんですか?」


「それは単純にレイ殿が【魔装】に慣れていなかったからだけでござる。 【魔装】に慣れていないと、放出系の【魔法】が使えない事はよくあるでござる。」


「なら訓練次第で両立出来る様になるんですね。」


「それは出来る人と出来ない人がいるでござる。 2種類の系統を同時に発動出来る人なら可能でござるが……」


「なら僕は出来るかもしれないです。」


 自分には【パラレル思考】があるから慣れ次第で同時に発動出来る可能性が高そうだなと思った。


「そうでござるか、なら今度は本格的に稽古をつけてあげたいのだが、どうでござるか?」


「僕の方から頼みたかった位です。」


「分かったでござる。 我が輩が【白銀二刀流】を教えるでござる。」


「【白銀二刀流】はペンザエモンさんのオリジナルなんですか?」


「【白銀二刀流】は【魔装】を使える者用に創られた剣技で、遥か昔の【魔眼】使いが開祖と言われているものでござる。」


「へ~、遥か昔ってどれくらい昔なんですかね。」


「その辺は詳しくないでござる……」


「この世界の歴史は全て古くても千年前までしかないのじゃ。」


「あっ、フレイザードさん。 全て千年前っておかしくないですか?」


 明らかに人類が居るのなら数千年以上の歴史があるはずだ。


 まあ、前世での歴史基準だから、この世界は神様がいきなり人を作ったとかなら話は別だけど。


「疑問に思うのはもっともじゃが、どの歴史を調べても千年前を記載した書籍は無いのじゃ。 もしかしたら【聖教会】には資料があるかもしれないが、あやつらには頼みたくないのじゃ。」


「【聖教会】と仲が悪いんですか?」


「そうじゃな。 レイくんは【聖教会】に対しての印象はどうじゃ?」 


「えっと、世界を正しく廻すためにルールを管理している神様の使いですかね。」


「そうじゃ、あやつらはルールは確実に守るんじゃが、【魔眼】持ちで制御不能な者は容赦なく隔離施設に監禁してしまうのじゃ。 私ら【魔眼協会】には【魔喰】みたいにいくつか【魔眼】を無害化する方法があると言っても一切聞いてくれないのじゃ。」


「僕の【聖教会】のイメージとはかなり違いますね。」


「普通の人には優しい守護者みたいな者じゃから、レイくんの印象は間違いではないのじゃ。 ただ、争いはしないが【魔眼協会】とは犬猿の仲といった感じなのじゃ。」


「なるほど。」


 基本的には良いことをしているはずの【聖教会】も全てを救うことは出来ないもんな……。


「まあ、話はそれたのじゃがレイくんの検査結果は、とりあえず問題は無さそうじゃ。」


「とりあえず?」


 なんか不安になる言い方だな……。


「例の【魔喰】が眼に現れなかったのは、【魔眼結晶】が心臓付近に大部分と左手に少し反応があったのじゃ。 こんな例は初めてじゃが、心臓付近に【魔喰】の本体があり左手に端末の様なものがあるイメージじゃな。 もし、レイくんが試したいなら制御不能状態の【魔眼】持ちから【魔喰】を使い、吸収してみるのもありだと思うのじゃ。」


「ちょっと考えさせてもらって良いですか? いろいろな変化がありすぎたので……。」


「そうじゃな、ゆっくりと考えて欲しいのじゃ。」



 自分とセシリアは後日、また【魔眼協会】に来るとだけ伝えて、今日は帰ることにした。

 

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