第263話 漆黒宝具 ⑤
自分がうっかり【オルタナティブアーマー】を装着したまま学校に来てしまったせいでカーラ先生に攻撃されたのだが、何故か【魔導壁】が発動せずにカーラ先生の攻撃を片手でまともに受けてしまった。
「……!?」
カーラ先生の攻撃により衝撃で右手が吹き飛んだのだ。
あまりの衝撃で右手が吹き飛んだのかっと思ったが、奇跡的に右手は無傷だった。
この【オルタナティブアーマー】は思っている以上に堅いのか、【魔装】のおかげか分からないが右手が無傷で良かった……
しかし、何で【魔導壁】が出なかったんだ?
「ちっ、本気で良いのが入ったのに無傷とかやべーな。」
「……!? …。 (ちょっ、やっぱり本気なの!?)」
早く【オルタナティブアーマー】を脱がないとダメだけど、さっきのカーラ先生の攻撃が脱いだ瞬間に来たら死んでしまうという恐怖心により、なかなか脱ぐタイミングが掴めない……
せめてカーラ先生の動きが止まってくれたら脱げるのに。
【魔導腕】とかで拘束したいなと思ったのに、何故か【魔導壁】と一緒で発動しない……。
「あまり教室で暴れると後始末が面倒だが、仕方ないか……」
あ、やばっ……
カーラ先生の目が本気モードになってる。
『マスター、内蔵されている武装に【地獄の業火】があります、それならカーラ先生を止められます。』
『いやいやいや、【地獄の業火】って完全に味方には撃っちゃダメなやつだよね!? もっとないの? 穏やかに拘束する武装は!?』
『なら拘束武装の【死への鋼鉄少女】などは……』
『名前が物騒過ぎるよ……』
そんなやりとりをしていたらカーラ先生が本気モードで攻撃してきてしまった。
さっきは右手で防いで無傷ではあったが、あの衝撃は尋常ではなかったので出来れば防がずに避けたいと思ったのだが……
「オラオラっ!!」
ガ、ガ、ガ、ガッ!
速すぎて避けきれないと覚悟した時、背中から黒い羽が自分の身体を覆い防いでくれた。
「くっ、なんだこいつは!? 背中から羽って事は天人族か……? いや、黒い羽なんて聞いたこと無いな。」
『今ですマスター! 逃げてください!』
『えっ? あ、逃げれば良いのか!!』
自分はすぐにセシリアを置き、即座に反転して教室から逃げ出したのだった……。
☆
自分は逃げ出した後、学校近くの公園でどうしようかなと迷っていた。
セシリアを置いてきたからカーラ先生も追っては来なかったが、やっていることは完全に犯罪者みたいな事になってしまった。
「やっとレイを見つけたにゃ。」
「えっ、エレナ?」
公園の椅子に座っていた自分の前には笑顔のエレナと立っていた。
「カーラ先生にはセシリアと私でレイのうっかり暴走って説明したから、多少は怒られるけど大丈夫にゃ。」
「エレナはあの黒い鎧が僕だって分かったの?」
「それは幼なじみだから分かるにゃ。 動きはレイそのものだったからにゃ。」
「そっか、よく考えたらずっとエレナに助けられてばかりだね。」
「私とレイとはそういう運命だから仕方ないにゃ。」
「運命?」
運命ってどういう意味だろう?
「うちのママが占いも出来るって知ってるかにゃ?」
「エリーさんが? 初耳なんだけど……」
「ママの占いはかなりの確率で当たるにゃけど、【スカウトフォート】にくる前にレイ関連だろう占いが出たらしいにゃ。」
「僕の占い?」
「そうにゃ。 ママの占いは大きな流れのターニングポイントになる人が近くにいると自動的に占っちゃうスキルなんにゃ。」
「自動的になんだ……。 それでターニングポイントになるのが僕とエレナなの?」
「ターニングポイントがいつかはまだ分からないにゃけど、そこで私とレイ、あとは数人にゃけど運命の選択を迫られるらしいにゃ。」
「運命の選択……」
自分はあまり占いを信じないのだけど、エリーさんのスキルによる占いなら話は別だなと思うが、いきなり運命の選択があるって言われてもな……
「ママからはそれまでにレイを強くするように言われたにゃ。」
「それでこの前はあんな事をしたのか。 秘密じゃなくて良かったが?」
「そうにゃんだけど、私の勘ではレイにはある程度目標があった方が良いかにゃと思ったから少し教える事にしたにゃ。」
「そっか……。 確かに知らないよりは知ってる方が頑張りそうだな。」
「でもあの黒い鎧で登校するのはやり過ぎにゃ。」
「だよね……。」
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