第262話 漆黒宝具 ④
ペンザエモンさんと別れた後、自分とセシリアは急いで学校へ向かっていた。
「いや~、楽しい時間だったな。」
「マスターは本当にペンギンが好きですね。」
「うん。 何故か前世の時も気が付いたらペンギンが好きだったんだよね。 だからペンギンを好きになったきっかけとかは分からないんだよ。」
「私も【魔導ペンギン】達みたいに人型からペンギン型にしましょうか?」
「いやいや、ペンギンは好きだけどセシリアがいきなりペンギン型になったら困惑するよ。 それにセシリアは今の姿が一番良いと直感的に思うんだよね。」
「そうですか? ならペンギン型は諦めます……。 マスター、このままでは間に合わないかもしれません。」
「確かに…… あ、ブラットだ。」
目の前にはニナさんの親が経営しているパン屋から袋を持ちながら出てくるブラットがいた。
ブラットは相変わらずパンが好きだな。
「おっ、レイか。 時間ギリギリに登校するなんて珍しいな。」
「いや、ブラットもギリギリじゃん。」
「ん? 俺はギリギリじゃないぜ。」
「えっ? 何で?」
同じ教室がゴール地点なのに自分達がギリギリなのに、何でブラットはギリギリじゃないんだ?
「そりゃ、俺とレイだと走るスピードが違うからな。 じゃあ教室でなっ!」
ドンっ!!
ブラットは【身体強化】をして一気に走り去っていった。
「うわっ、マジか……通学で【身体強化】を使うのは反則だろ。」
確かにブラットの【身体強化】なら間に合うだろうけど、登校するだけで【身体強化】を使うか?
「マスター、早速ですから【オルタナティブアーマー】を試してみたらどうですか?」
「あれか……」
【オルタナティブアーマー】をさっき装着した時は身体に羽が生えたかのように軽かったから、あれを装着すれば間に合うかもしれないが……
「マスター!」
「仕方ない! ちょっとだけ使おう。」
自分は素早く【ストレージ】から【オルタナティブアーマー】を取り出し、【魔装】を展開しながら装着する。
装着した瞬間、やはり身体が軽くなった。
「セシリア、掴まって!」
「はい!」
【オルタナティブアーマー】を装着した自分は体格がドワーフ族並にデカいので、セシリアを左腕で抱っこする感じにして走り出した。
「うおぉぉ!」
走り出すと予想以上にスピードが出てしまいびっくりするがこれは凄く良いな。
【魔装】を使いこなせれば【身体強化】の才能が無い自分でもブラット達に対抗できるのでは無いだろうか?
☆
【オルタナティブアーマー】を使い、ハイスピードで登校した事により無事に遅刻はしなかったが、いろいろな方面で問題になってしまった。
「おい、そこの黒い鎧! 抵抗したら殺すぞ!」
「…。……。……!(カーラ先生、僕ですよ!)」
あれ? 声が上手く出ない?
「カーラ先生、私は大丈夫ですから。」
「セシリアは心配しなくても助けてやるからな! 貴様の目的はなんだっ!」
「いえ、そうではなくて……」
カーラ先生は変な漆黒の鎧が学校に攻めてきたと勘違いしたらしくて、既に臨戦態勢だった。
【チェスガン学園】襲撃事件以降、王国内では学校内に不審者が襲撃してきたら捕縛ではなく殺しても仕方がないという流れになっていた。
学校内には人質にされやすい子供が沢山いるので、子供達の安全を優先して確保しろと言われているらしい。
そして、よりにもよって悪・即・殺なカーラ先生と対峙してしまった……。
「…… …。 …… (ってか、何で声が出ないんだ?)」
最初は声が出ていたはずなのに……
「くっ、会話すらできない新手の魔獣かっ!」
カーラ先生は会話は無理だと切り替えて、手に持った巨大なバトルアックスで襲ってきた。
もうちょっと会話が出来ないかを試して欲しかったが、自分も漆黒の鎧がセシリアを抱えていたら同じ行動したかもしれないかは攻められない。
とりあえずはカーラ先生に攻撃する訳にはいかないから、【魔導壁】で耐えきるしかないか……。
カーラ先生はぶっちゃけブラットの強化版みたいな超接近戦が得意なバトルジャンキーなので【魔導壁】でも耐えられて数分だろうとは思う。
「……! (【魔導壁】!) …? (あれ?)」
ガキンッ!!
何故か【魔導壁】が発動せず、カーラ先生の攻撃を片手でまともに受けてしまうのだった……。
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