第260話 漆黒宝具 ②
セシリアの用意した漆黒宝具【オルタナティブアーマー】を装着したのだが、ブカブカだった……
まあ、当たり前ではある。
【オルタナティブアーマー】と自分との身長差は30センチ近く違うし、手足だって全く違うのだ。
「しかし、セシリア。 腹部内に椅子が付いているのはこの事を予見しての設置?」
【魔装】をまだ習っていないので、【オルタナティブアーマー】は使えないのだが、そうなると内部に椅子が付いてるのは非常でありがたいのだが、セシリアでどこまで予見しての行動か怖いときがある。
「マスターならば必要かもしれないと思い、念の為に椅子を設置しました。」
「そうなんだ……」
「ふむ、その【オルタナティブアーマー】はカッコいいでござるな。 我が輩も動くところを見たいので早速【魔装】を教えるでござる。」
「お願いします。」
いろいろあったが、やっと【魔装】を教われるよ……
「まず、我が輩が【魔装】を再度使うので、【魔装】に必要な【魔力】量と圧縮密度を見て欲しいでござる。」
「分かりました。」
ペンザエモンさんは膨大な【魔力】を放出したかと思えば、すぐに身体の表面にコーティングするように【魔力】を圧縮しながら綺麗に整えていた。
ペンザエモンさんの【魔力】量はシンシアよりも多いのではないかというほどの量で、それを正確に【魔力操作】しているのは凄いとしか言いようがない。
「何度見てもペンザエモンさんの【魔力】量と【魔力操作】は凄いですね。」
「まあ、レイ殿ならすぐに使える様になるでござる。 それにペンギン族やドラゴン族みたいな種族は獣寄りでござるから生まれつき【魔力】は多いでござる。」
「ドラゴン族……? ああ、竜人族ですか?」
「違うでござる。 竜人族は見た目がレイ殿みたいな人族でござるが、ドラゴン族はペンギン族みたいな感じでござる。 まあ、ドラゴン族は気性が荒いのが災いして普通の竜と間違われて狩られるケースが多いからほとんどいないでござるがな。」
「狩られるんだ……」
ペンザエモンさんみたいに人語を話せるドラゴンが狩られると思うと微妙な気持ちになるな……
「ドラゴン族が狩られるのは自業自得でござるから、気にしてはダメでござる。」
「ペンザエモンさんはドラゴン族があまり好きではないのですか?」
「我が輩というかペンギン族全体がドラゴン族を嫌いでござる。 ドラゴン族を見かけたら即殺でござる。」
「そんなにですか……」
「ドラゴン族は我が輩達、ペンギン族を餌としか見てないでござる。」
「ああ、なるほど。 じゃあ僕もドラゴン族を見たら即殺そう……」
ペンギン族を食べる種族は悪でしかないからな。
「流石、レイ殿。 話が分かるでござるな。」
「マスター、話がまた逸れていますよ。」
「ああっ!? そうだ、【魔装】!」
さっきから話がそれてばかりで【魔装】が出来てない。
「【魔装】についてはほとんど教えることはないでござるよ。 必要なのは【魔力】量と圧縮密度、それと身体と鎧の隙間を【魔力】で埋めて欲しいという願いでござる。」
「なるほど。」
そう言われるとさっき見たのが全てな気がしてきた。
【魔力】量と圧縮密度はさっき見た通りに実践してみる。
自分の場合は【魔導】を【オルタナティブアーマー】内に充填するイメージだが、【魔導王】が【魔装】を使っていたのなら問題ないはずだ。
そして開始してから数分で【魔装】に成功する。
もっと難しいかなといたが、似たような事を転生してからずっとやっていた事だった。
それなら独学で【魔装】が使えてそうなものだが、使用する【魔導】の量が問題だったのだ。
【魔装】に必要な【魔導】の量は、【魔導弾】として使った場合、完全に人を殺してしまう量なので試そうとはあまり思わなかった。
しかし、そのオーバーキルをしてしまいそうな量を圧縮する事により初めて【魔装】として完成するらしい。
「流石は【魔眼】持ちでござるな。 我が輩が教える事は本当にほとんど無かったでござる。」
「ありがとうございます。 しかし、この【魔装】は非効率だから他の人族には真似できなそうですね。」
自分は【魔導】により自然界に【魔素】が無くならない限りは無限に【魔装】に必要なエネルギーを使えるが、今まで見てきた人族の【魔力】では使えなくはないが、無駄だらけなので非効率としか言いようがなかった。
「そうでござるな。 【魔導王】も人族にはわざと使えない様に【魔装】を作ったと言われているでござる。 これは使えば分かると思うでござるが、非常に危険な技術でござる。」
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