第259話 漆黒宝具

 ペンザエモンさんから【魔導王】は【パワードスーツ】と呼ばれる鎧を着て戦ったと伝えられていたと聞いた時、自分は作成中の巨大機動兵器を連想していた。


 セシリアも似たことを考えていたのか、すぐさま自分に提案してくるのだが……


「マスター、現在作成中の機動兵器【オルタナティブアーマー】がちょうど良いのではないでしょうか?」


「ぶふっ!?」


「マスター、汚いですよ。」


「えっと、セシリア。 【オルタナティブアーマー】って何かな?」


 何となくというか、ほぼ分かるのだが、確認せずにはいられなかった……。


「マスターの考えたカタストロフィ・マジシャンに出てくる漆黒宝具【オルタナティブアーマー】です。」


「うん、やっぱりね。 分かったよ、この展開。」


 最近のセシリアは自分と記憶がリンクしているからって黒歴史を引っ張り出し過ぎだと思うが、自分の事を思っての行動だから悪く言えない……。


 カタストロフィー・マジシャンとは前世の自分が作り出したいくつかの黒歴史の中でもかなり完成度の高い設定で、確か夢で見たことを書き留めているうちに完成した話だったかな?


 その中でも主人公が死界より召還した宝具が【オルタナティブアーマー】という漆黒の鎧だった気がする……


「【オルタナティブアーマー】……。 カッコいい響きでござるな。」


「はい。 マスターのネーミングセンスは完璧です。」


「あまり褒めるのはやめて……」


 褒められると逆に恥ずかしすぎて逃げ出したくなるからヤメテホシイ……


 まだ冷たい目で見られた方が良いかもしれない。


「まあ、名前は良いとしてオルタ……機動兵器はまだ未完成だし、【魔装】に使うにはデカすぎるんじゃない?」


 【魔導王】の装備していたものが鎧っぽい【パワードスーツ】なら、自分が作っていた機動兵器みたいに乗り込むタイプのものだと違う気がする。


「【オルタナティブアーマー】はマスターの体格に合わせてある鎧なので問題ないと思います。 ただ、欠点が改善する事が出来てないところがあるのです。」


「欠点ってダメじゃない? ちなみにどんな欠点なの?」


 欠点って言うくらいだから装着者に不都合が生じるんだろう。


 流石に欠点がある状態の鎧を着たいとは思わない。


 だって自分の黒歴史だが、【オルタナティブアーマー】っていう名前からして怖いからな……


「欠点は超巨大な【魔導砲】が導入出来るスペースが全く無いことです。」


「いや、【魔導砲】はいらないよ……いや、出来ることなら欲しいけどさ。」


「そうなのですか? マスターが巨大機動兵器にはロマン兵器が必要と言っていましたからてっきり必須だと思っていました。 申し訳ありません。」


「まあ、【魔導砲】がないだけでほとんど完成してるって事だよね?」


「それ以外にも武装はまだ17個しか搭載出来てません。」


「いやいやいや、17個もあれば十分だよ。」


「そうですか? でしたらほとんど完成しています。 今出します。」


 セシリアは蒼炎と共に漆黒宝具である【オルタナティブアーマー】を呼び出した風の演出をしながら【ストレージ】から取り出していた。


 本来ならいらない召還風の演出だが、ペンザエモンさんがいるので必要だろうと思って恥ずかしい気持ちを耐えながら見ていた。


「ほう、これは凄い鎧でござるな。」


「あれ? 鎧のサイズが少し大きくない?」


 鎧のサイズはどう見ても成人男性以上の大きさがあり、しかもガインおじさんみたいなマッチョ体型だ。


 自分の体型は身長も普通だが、体型も一般的な子供くらいの細さなので明らかに大きい。


 これじゃあ着られないですよね?とペンザエモンさんに聞いてみたが、返答は予測とは違うものだった。


「通常なら無理でござるが、レイ殿なら【魔装】として使える筈でござる。」


「大丈夫なんですね……」




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