第258話 魔装

 自分とセシリアは【身体強化】を使いこなす為に朝のトレーニングをしていたら、喋るペンギン族のペンザエモンさんと出会い、白銀二刀流の剣技を見せてもらったのだが、凄いの一言しか出なかった。


「我が輩の剣技はどうでござったか?」


「凄いです……。」


「ふむ、それは良かったでござる。」


 確かに剣技も凄かったのだが、自分が気になったのはその前の方だった。


「剣技の前に全身から高密度な【魔力】を出してましたけど、あれはどうやるのですか?」


 自分の【魔導腕】みたいな感じもしたが、何かが違う気がした。


 何となくだが、ペンザエモンの使ったあれは自分の【身体強化】問題を解決してくれるきっかけになるのではないだろうか?


「この【魔装】の事でござるか?」


 ペンザエモンさんはまた全身から高密度な【魔力】を瞬時に出し、身体の表面に留める。


「それは【魔装】っていうんですか。」


「【魔装】をまだ使えないでご……、そう言えば人族は【魔装】を必要としないからマイナーなスキルでごさったな。 【魔装】とは我が輩みたいな手で武器を使えない種族が使う基本技術でござる。」


「それって僕も使えますか?」


「レイ殿なら出来る筈でござるよ。 【魔装】に必要なのは膨大な【魔力】と願いだけでござる。」


「えっと、膨大な【魔力】は分かりますけど、願いってなんですか?」


「願いで通じないとなると、何て言えば良いでござるかな……。 例えば、我が輩が言葉を使っている事に疑問を感じないでござるか?」


「確かに不思議ですけど、今ですか?」


 最初から疑問だったけど、異世界って事でスルーしていたのに……


「我が輩が言葉を使えるのも【魔装】を応用したもので、声帯を【魔力】で形成してるでござる。 【魔眼】持ちのレイ殿なら似たような事が出来ないでござるか?」


「それで声が出てるのか……。 【魔力】を固定したりするのは可能ですね。 だけど、ペンザエモンさんは【魔眼】持ちに詳しいんですか?」


 【魔導操作】で人には見えない【魔導】を形成したものなら出来る。


「我が輩の祖先がアルティメットペンギンと話しましたが、遙か昔、アルティメットペンギンは【魔導王】の仲間だったのでござる。 だから我が輩らペンギン族は【魔導王】の技術を応用した技が伝承されていると共に【魔眼】についても多少は分かるでござる。」


「ここで【魔導王】が出てくるとはびっくりだね。 それで【魔装】は?」


「ふむ、【魔装】はペンギン族で言えば話がしたいとか剣を使いたいという願いを【魔力】で具現化したものと言えば良いでござるかな?」


「何となく分かりますが……どうやれば?」


「やり方は簡単で、【魔力】を一定以上圧縮してから何をしたいかを願うのでござる。 【アーカイヴ】に登録されている願いなら使えるでござる。」


「【アーカイヴ】って?」


 【アーカイヴ】って書庫とか、そういう意味かな?


「それは分からないでござる。 だが使える技術でござる。」


「【アーカイヴ】は分からないのか……。」


「これも【魔導王】から伝承されているものではあるが、【魔導王】は知らなくても良いことは伝えてないでござる。 【魔装】の注意点は身体を拡張する事でござるから、身体から離れる様な願いは無理でござる。 例えば手を伸ばして剣を振り回したりは出来ないでござる。」


「なるほど。」


 自分の【魔導腕】みたいな事は出来ないのか……。


「レイ殿は【魔眼】使いだから【魔導王】みたいな【魔装】の使い方をするのはどうでござる?」


「【魔導王】の使い方?」


 なにそれ、超興味があるんだけど……


「【魔導王】は【魔装】と独自の鎧を使って戦ったと伝えられているでござる。 鎧の詳細は伝えられていないが、【パワードスーツ】と呼んでいたらしいでござる。」


「【パワードスーツ】か……。」


 そのワードだけでどんな感じか想像出来てしまった。


 そして、【魔導王】も転生者か転移者疑惑が濃厚になったな。




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