第257話 ペンザエモン

 エレナと戦ってから数日が経過していた。


 あれから自分は日々のトレーニングも日課に入れて頑張っていた。


 目標は【身体強化】を使いこなせる様になることだ。


 そして、今はセシリアと共に早朝トレーニングをしていた。


「マスター、あまりやり過ぎてもよくないのではないですか?」


「そうなんだけど、やっぱりコツみたいなのを掴むまでは頑張りたいんだよね。」


「分かりました。 マスターがそう言うのでしたら頑張りましょう。」


「ふむ、まだ若いのに朝から頑張るとは見所があるでござるな。」


「えっ? 誰だ?」


 突然違和感のある声が後ろからしたので振り返る。


 そこには自分と同じくらいの身長をした、ペンギンがいた……


「ペンギン?」


 しかも、背中には2本の剣を背負っており、片目には傷があったりと違和感があったが、見た目はそれ以上に違和感があった。


 声のした方向にはこのペンギンしかいないのだが、誰が喋ったんだ?


「ほう、我が輩の種族名を知っているとは博識でござるな。 しかし、我が輩の正式な種族名はソードペンギンでござる。」


「ぺ、ペンギンがしゃべった!?」


「何を驚いてござる? ペンギン族が喋るのは当たり前でござるよ。」


「マジか……。」


 この世界のペンギンは喋るのか……?


「あれ? でも同級生だった人がペンギンは魔獣だって言ってた気がするんだけど?」


「確かに似ている魔獣にアビスペンギンはいるでこまざるが、我らペンギン族とは別でござる。 祖先は同じアルティメットペンギンという説もあるので別進化を遂げた生物みたいなもので、人族と猿みたいなものでござる。」


「いろいろな衝撃が一気に来たんだけど、ペンギン族っていっぱいいるのですか?」


 アビスペンギンやアルティメットペンギン……


「個体数はあまりいないでござるが、ソード、ブロック、クイーンなど種族はいっぱい居るでござるよ。 おっと、自己紹介がまだでござったな、我が輩はソードペンギン族のペンザエモンでござる。」


「あっ、人族のレイです。 こっちがセシリアです。」


「ふむ、【魔眼】持ちのレイでござるな。 それで先程は剣の訓練をしていたようでござるが、自己流でござるか?」


「えっと、いろいろな人には教わっていますけど自己流みたいなものですね。」


「良ければ我が輩が少し助言をしたいと思うのだが、どうでござるか? 我が輩はこれでも白銀二刀流の皆伝でござるよ。」


「それはありがたいんですが、ペンザエモンさんは剣を持てるのですか?」


 手というか、フリッパーしかないペンザエモンさんが剣を持てるとは思えないのだが……


「なるほど、確かに実力を見せないのは失念していたでござる。 しかし、実力をどうやって……」


 ペンザエモンさんはピコピコ動きながら唸っているのだが……。


 可愛いな……


 ペンギンが喋るのにはびっくりしたが、いろいろな種族がいるのは初耳だったので剣の助言は別にしても仲良くなりたいな。


 しかし、何でござる口調なんだろう?


「おっ、良いことを思いついたでござる。 我が眼前に氷柱を創りたまえ、【アイス・メイク】」


 ペンザエモンさんは突然フリッパーをパタパタとしたら全長4メートルはありそうな巨大な氷柱が数秒で生成されていた。


「す、凄い……」


 ペンザエモンさんが氷柱を作るときに【魔力操作】を一瞬しかしていないのにこんなに高密度な氷を数秒で作る実力にびっくりした。


「驚くのは早いでござる。 我が輩の剣技を見よ、【白銀二刀流・八十二乃剣・高速回転剣舞・陰桜】」


 ペンザエモンさんは技名?を唱えると、全身から高密度な【魔力】が噴き出し、その高密度な【魔力】から2本の腕みたいなものが生えてきて、背中の剣を掴んだと思った瞬間、ギリギリ認識出来る速度で氷柱を切り刻んでいった。


 キン、キン、キン、キン!!


 そして、十秒後位には巨大な氷柱がペンザエモンさんの氷像へと変化していた。


「どうでござるか、我が輩の腕は?」



 これが自分とペンザエモンさんとの運命的な出会いだった……。



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