第256話 菓子パン

 自分とブラットはパン屋の近くにある公園で菓子パンを一緒に食べていた。


 ブラットが通うだけあって美味しい。


「ブラットはニナさんをどう思ってるの?」 


「ニナか? コーデリア程ではないが【回復魔法】に特化していて凄いやつだぜ。」


「えっ? 何の話?」


「ニナの話だろ?」


「そうなんだけど……。 ん?」


 自分はブラットにニナさんの事を異性としてどうかと聞いたのだけど。


「もしかして、ニナさんも【ハンタースクール】の生徒?」


「いや、ニナは聖女育成学園の【マリア学園】の1年生だよ。」


「聖女育成学園?」


「詳しくは知らないが【聖人】マリア様の後継者を育成する学校らしいぜ。」


「そんな学校まであるんだね。 もしかして、他の【聖人】や【魔王】を育成する学校もあったのかな?」


「どうだろうな。 この街にあるかは分からないがいくつかはありそうだよな。」


 安易に冒険者になる学校に来たけど、もっと調べてみても良かったかもしれないな。


 どこかに定職に就くのは嫌だなってだけで冒険者を選んだところもあるからな。


「まあ、それは良いとしてニナさんには見込みがないのかな……。」


「なんの話だ?」


「いや、こっちの話だよ。」


 流石にブラットにニナさんの件を伝えるのはお節介な気がするから黙っていよう。


「そうか? そう言えば、今日のエレナとの戦いはどうだったんだ? 氷の壁で見えなかったから分からなかったんだよな。」


「僕の完敗だよ。 勝てる気がしないってのが正直な感想かな。」


「それに関しては、俺も同じだな。 【身体強化】を覚えはしたが使いこなせていないが、エレナは既に使いこなせているからな。」


「やっぱりそうなのか。 いつからあんなに差がついたのかな?」


【モロット】にいた時はそんなに差は無かった気がするんだけどな。


「もしかしたら、日々の鍛錬の差じゃないか?」


「それを言ったらブラットの方が鍛錬してない?」


「鍛錬かは分からないが、エレナは夜中に出かけることが多いぜ。」


「それは聞いた事あるね。 そうか、鍛錬の差か……」


 それを言われると痛いな。


 幼児期から鍛錬しているみたいなものだから、他の人よりは鍛錬が多いとは思うけど、最近はモノ作りばかりで鍛練をサボリ気味だったのは否定が出来ないんだよな。


 しかし、最近は鍛錬している時間が本当にない。


「レイは【身体強化】は出来そうか? オヤジにも言われた事があったけど、感覚で分からないと取得は難しいらしいぜ。 出来ても身体全体を【魔力】で覆うまでで、近接戦闘で上に行きたい場合は必須の技能って言ってたな。」


「マジかー。」


 感覚で分からない自分には無理なのか?


「俺もオヤジから身体の隅々まで強化出来るまでは禁止されているスキルがいくつかあるからな。」


「そうなの?」


 まだ隠してるスキルがあるのか……


「ああ、肉体の限界を超えたスキルがあるからな。 使えても最悪の場合、身体が崩壊して死ぬらしいからレイも気を付けろよ?」


「それはエレナとの試合で体験済みだよ……。」


「なるほどな、それで終わったのか。」


「うん。」


 両親みたいに化け物みたいな戦いをするにはやはり必要な技能だろうけど、自分には覚えられなかった時の事も考えておかないとな。



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