第253話 総当り戦 エレナ ②

 自分はエレナとどう戦うかの時間を稼ぐ為に、自分を中心とした広範囲に【魔導腕】を地面から生やす事にした。


 流石のエレナでも大量の【魔導腕】に足を取られたら身動きが取れなくなるだろう……


 と思っていたら、エレナは軽くジャンプしたあとに空中に着地していた。


 正確には空中に【魔法】で足場を作ったのか?


【魔法】の痕跡が微力過ぎて、【魔眼】で見てもほとんど見えないな……。


 というが、あんな薄い足場の上に立っていられるな。


 自分なら速攻で落ちそうな気がする。


「足止めすら難しいか。」


 そしてエレナは自分の目の前にふわりと降り立つ。


 流石に目の前まで来られたら負けかなと思ったが、エレナは自分の後ろにまわり首を軽く締めながら、小声で話しかけて来た。


「悪くないと思うにゃけど、レイの戦い方は昔から変わっていないからわかりやすいにゃ。」


「そ、そうなのか?」


「もっと本気を出さないと守りたいものも守れなくなるにゃよ? 【チェスガン】の時は運が良かっただけにゃ。」


「本気を……」


「レイはまだ試していないスキルがあるはずにゃ。」


 確かにまだ試していないスキルはあるが、エレナがなんで知っているんだ?


「なんでそれを。」


 まだ人には見せた事が無いのに……。


 あのスキルは未完成な上に失敗すれば大怪我をしてしまうものだから使用を躊躇われていた。


「それは秘密にゃ。 でも死なない今が試す時にゃ。」


「……。」


 多分、エレナが言っているのは雷属性の【身体強化】の話だろう。


 もしかしたらエレナはエリーさんから聞いたのかもしれないな。


 お父さんの最強スキルである【神鳴り】を……。


 話では数分間限定で【魔王】様達すら超える身体能力を得るって話だけど、多分、ブラットが使った【身体強化】よりも難しいんだろうなというのは想像しやすい。


 以前にダンジョン内で右腕だけ試したら筋肉がずたずたになったんだよな……。


 だけど、エレナの言うとおり試してみるのは良いかもしれない。


 もし雷属性の【身体強化】が、出来ればエレナが【野生の勘】により回避するよりも早く動ける事になるからな。


 まあ、もしこれでも駄目だったらエレナには勝てる気はしないしな。


「わかった。 試してみるよ。」


「それでこそ、レイにゃ。 当たって砕けろにゃ。」



 そう言うとエレナは自分からある程度の距離まで飛んで離れる。


 これはもう試合というよりもエレナによる指導みたいになってきたな。


 こうして自分は一度も成功したことの無い雷属性の【身体強化】をやってみるのだった。





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