第251話 総当り戦 セシリアとエレナ

 天才肌であるブラットが驚異的な【身体強化】を使えるというのがわかったが、自分には対処法が思いつかなかった。 


 まず、姿が見えなかったからな……。  


「そう言えば、セシリアはブラットの動きが見えてたの?」  


「はい。 まだソフィア様レベルのスピードではないですし、ブラットさん本人もスピードに慣れていないのか、直線距離での体当たりしかしませんでした。」


「なるほど、それならいくらでも対処出来るかな。」


「それにブラットさんはもう私と戦う余力は無さそうです。」


「そう言われると……。」



 そんな話していたら、ブラットの方から棄権するとの発言があった。


「ブラット、棄権するほどの怪我か?」


「怪我は大した事無いんですが、なれない事をしたせいで【魔力】が無くなったんですよ。」


「そう言う事か、なら仕方ないな。 次はエレナで最後だな。」



 ☆



「エレナ、任せたぜ。」


「私まで順番が来るのは想定外にゃ。」


「エレナ、セシリアさん相手に手加減は出来ないぜ? そろそろ本気を見せる時じゃないのか。」


「にゃ……。」


「エレナがなんで実力を隠したがっているかわからないが、そろそろ隠すのを止めたらどうだ?」


「私にもいろいろあるにゃ。」


「もしかして、レイの為なのか?」


「……ブラットはたまに勘が鋭いにゃね。」


「まあ、何かあるのなら仕方がないか。」



 ☆



「次の試合はセシリアとエレナを開始しろ。」


 一応、セシリアには本気を出さして良いとは伝えてあるが、高出力の【魔導具】の使用だけは禁止しておいた。


 それとセシリアの場合、ダンジョン内の死亡時に復活出来る保証が無いので無理はしないようにと言っておいた。


 死んだ時に武具なども再生されている位の謎システムだが、もし復活出来なかったら洒落にならないからな。


【魔導砲】とかエレナなら回避してしまいそうだが、クラスメイトに向けるようなものではないからな。


 エレナの本気を見てみたい気はするが……。



 試合開始からセシリアは【魔導銃】を使い、エレナへ何発も射撃する。


 ダン! ダン! ダン!


 この射撃をエレナは予知していたかのように回避していく。


 エレナは簡単に回避しているが、セシリアの使う【魔導銃】はかなりの速度で発射されるので、それだけでカーラ先生辺りにはエレナの凄さが分かるだろう。


 セシリアは【魔導銃】を左手に持ち替え、右手に【神木の小太刀】を持ち、エレナへ向けて【魔導銃】を撃ちながら走り出す。


 遠距離からの銃撃をかわされるのは予想通りだが、至近距離になってもエレナには一切の銃撃が当たらなかった。


 ここまで来ると、勘というより未来予知ではないかとすら疑ってしまう。


 現にエレナはセシリアが【魔導銃】を構えると同時に回避行動に移っているのだ。


 その後もエレナは両手に持つ短剣を使う事なく、セシリアの銃撃と斬撃を超至近距離なのに紙一重で全て回避していた。


 流石にクラスメイトもエレナの異常さに気が付いてきたかもしれない。


 セシリアの銃撃と斬撃を見切れるクラスメイトはエレナ以外なら自分かブラット位で他の人には多分、見えていないだろう。


『セシリア、そろそろ降参しようか。』


『分かりました。』


 セシリアが【結晶能力】や高出力の【魔導具】を使わなかったから勝つのは難しいとは思っていたけど、ここまで実力差があるとは思わなかったな。




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