第250話 総当り戦 シンシアとブラット ②

 シンシアとブラットの戦いは、【炎の女王】により見た目はシンシアが優勢だった。


 しかし、そろそろブラットが……


「くっ、まずはこの炎から倒したかったが無理そうだな。」


 ブラットはそう言うと、【炎の女王】を無視してシンシアめがけて走り出す。


【炎の女王】はスピードが無いから、無視してシンシアを攻撃する事が出来てしまうのだ。


「悪く思うなよ。 このあと二人も残っているんだからな。」


 ブラットはそのままシンシアを斬りつける。


 ボウッ。


「ここまで、予想通り。」


「なっ!? グホッ!」


 シンシアの【炎壁】から炎の腕が2本生え、ブラットの大剣を掴んで防ぎながらブラットの腹を殴っていた。


「【炎壁】と、【炎の女王】は、繋がって、いる。」


 なるほど、【炎の女王】をよく見たらさっきより小さくなっており、更に両腕も無くなっていた。


【炎の女王】はシンシアの身体に繋がっているスキル内なら瞬時に移動し、部分的に展開する事も出来るみたいだ。


 自分の【魔導腕】みたいな感じで、使い勝手が良さそうだな。


「久しぶりにまともな攻撃を食らったな。 それに戦い方もレイに似てきたな。」


「それは、嬉しい。」


「しかし、どうやって戦うかな。」


「来ないなら、こっちから、攻める。」


 シンシアは炎の両腕だけ残して、槍型の【炎弾】をブラットに向かって放つ。


「さっきと同じものは舐め過ぎだぜ……。」


「さっきと、違う。」


 ブラットは【炎弾】に合わせて相殺しようとするが、【炎弾】は大剣に当たる直前に微かに軌道を変え、ブラットの太ももにかする。


「ぐっ、遠隔操作か……。 本当にレイと似てきたな。」


 確かにシンシアの戦い方は自分に似ているかもしれないな。


 しかし、自分とシンシアには決定的に違うところがあるんだよな……。


 もしかしたらシンシア自身も気が付いていないかもしれない。



「あまり使いたくは無いが、本気でいくぜ。」


「私も、負けない……。 きゃ。」


 ブラットが本気を出した途端、ブラット内にあった【魔力】が一気に圧縮される様な感じになり、気が付いたらシンシアが吹き飛ばされていた。


 ブラットは身体能力が高いから、移動スピードも10歳にしてはかなり速いが、お父さんみたいに眼で追えないレベルのスピードではなかった。


 しかし、シンシアを吹き飛ばしたブラットの動きは、瞬間移動したかのようなスピードだった。


「あのスピードは一体……」


「レオン様やソフィア様が使う【身体強化】に近いと思われます。」


「あれが【身体強化】?」


 ブラットは試合開始からずっと【身体強化】を使っていたはずなのだが……。


「はい。 【身体強化】にもいくつかの段階があり、学生の身体全体を覆う【身体強化】の他にレオン様などが使うのは細胞レベルで【身体強化】をされていると予想します。」


「ブラットが細胞なんて知ってるのかな?」


「そこはセンスによるものかと……。」


「くっ、これだから天才は。」


 感覚で限界突破していく天才が羨ましい。


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