第241話 総当り戦 ③

 クラスの総当り戦も始まってみたら、コーデリアが4連勝中であった。 


 コーデリアは総当り戦が始まってから数歩しか動いておらず体力はほとんど減っていない。


 そしてコーデリアの【精霊魔法】には【魔力】を使わずに行使出来るから【魔力】切れも狙えない。


 つまりコーデリアを倒すには【水膜】と【守護聖獣】を突破して攻撃を与えないといけない。


 そう考えるとコーデリアもだいぶチートな気がする。


「次はクラリス!」  


 次は【探索者】のクラリスくんとの戦いだが、明らかに弱そうな男子なのだ。


「あの、カーラ先生。 ギブアップしても良いですか?」


「クラリス、一応は戦え。」


「僕の能力ではコーデリアさんに勝てる見込みは……」


 まあ、クラリスくんは戦いに関するスキルはなく、完全に支援系のスキルばかりだからコーデリアに勝つのは難しいかもしれない。


「これは強くなる為の授業なんだ、実戦なら逃げるのも良いが、今は経験を積む為に戦え。」


「分かりました。」


 クラリスくんは観念したのか、両腰に付けた2本の短剣を抜いて構える。


「それじゃあ、始めろ!」


「くっ、もう玉砕覚悟だっ!」


 クラリスくんは無防備な状態でコーデリアに向かい走り、両手に持っている短剣を突き付ける。



 しかし、みんなが予想していた通り、クラリスくんの短剣はコーデリアの【水膜】を突破する事は出来ず、動きを止めたところをアクアに体当たりされて吹き飛ばされる。


「ぐはっ!」


「よし、コーデリアの勝利でいいだろ。」


「クラリスくん、大丈夫ですか?」


「ああ……、ありがとうコーデリアさん。 やっぱり勝てなかったよ。」


「クラリスくんも頑張ればまだ分かりませんよ?」


「そ、そうかな?」


「はい。 誰でも頑張れば強くなれると (レイが言っていたので)信じています。」


「コーデリアさんに言われたらやる気が出て来た! 頑張って強くなるよ!」


「(レイの言ったことが間違えなかった事が分かるのを)楽しみにしてますよ。」


「……!?」




「セシリア、なんかコーデリアとクラリスくんの会話に随分と温度差が無い?」


「私もそれは感じますね。」


「まあ、普通の会話だから気にしても仕方ないか。 コーデリアもまさかの5連勝で凄いね。」


「コーデリアさんの【水膜】はかなり優秀な能力ですからね。 あれを突破するのはなかなか難しいと思います。


「だね。 しかし、次の【弓使い】オリングくんはアタッカーだから、流石に【水膜】も厳しいかな。」


 前世では銃等があったから、弓は弱いイメージだが、この世界の弓は【属性付与】が出来る様になれば、かなり優秀な武器になる。


 何故、弓が強いかというと弓に【魔石】を付けた【魔道具】が主流らしく、非力だとしてもかなりの速度で飛んでいく上に、矢にも【魔石】を付ければ空気抵抗を無視して飛んでいく。


 ちなみに銃も似たような感じだが、弾に【魔石】を付けるのは困難な上にコストが高過ぎるから実用性は無いので人気はない。


 だから護衛のセシリアが【魔導銃】を使うと、自分達がお金持ちか偉い家系の人と勘違いされる事がよくあった。




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