第173話 演算増幅
自分は【演算増幅】の【虹結晶】をセシリアに渡していたらしいが、全然覚えていなかった。
「マスターが擬似人工知能と呼んでいる装置を研究していた時は、ほとんど寝ませんでしたから、記憶が曖昧なのかもしれませんね。」
「あ~、あの成功しなかった研究か。」
「はい。 いくつかの【虹結晶】を擬似脳としてリンクさせて、人格を形成出来ないかという研究です。」
「そこまではなんとなく覚えているな……。」
「結局は演算処理速度不足や人格形成の他に出力不足という結果で終わりました。 ですが、マスターが既存の脳に移植すれば能力が劇的に上がると……。」
「ちょっ! いくら寝不足だからって、なんか危険な思考にいってない?」
人の脳内に【虹結晶】を移植するって事でしょ。 マッドサイエンティストみたいな人体実験をやりそうな思考だな。
「そこは可能性の話だけでしたから大丈夫です。 その後に【演算増幅】の【虹結晶】は使い道がなくなり、勿体無いので私の体内にマスターが入れました。」
「結局、セシリアの体内に入れたのか!? ヤバイ、全然記憶にないぞ……。」
「そのおかげで私の演算処理速度は1.4倍位には上がりましたよ。 もし【演算増幅】が手に入るなら私の体積内なら幾らでも追加出来ますから欲しいと思います。」
セシリアが何かを欲しいって言うのは珍しいな。
まあ、目的は自分の護衛能力向上の為だろうけど……。
「分かったよ。 可能な限り作成するよ。」
「ありがとうございます。」
☆
次の日、放課後。
「コーデリアとシンシアは放課後、暇かな?」
「はい。 最近、レイは学校が終わるとすぐに学生寮に帰ってしまいましたから暇でした。」
「かなり、暇だった。」
2人はちょっと不機嫌な感じだったので、失敗だったなと思った。
「ああ、ごめんね。 ある程度完成したら教えるつもりだったんだけど、最初に説明していれば良かったね。」
「という事は、何をしていたかは分かりませんが、ある程度完成したって事ですか?」
「そうだね。 あとは2人の意見も聞きたい事があったんだよ。」
そのあと、自分達はセシリアショップまで行ったのだが、一昨日より更に完成度が上がっていた。
外から見るだけなら、セシリアショップの販売部分と飲食部分、それに住居部分が完成していた。
あとは社員寮を建てるのと、内部を作るだけになっていた。
「えっ、これって【チェスガン】にあったセシリアショップにそっくりですけど、いつ出来たんですか!?」
「まだ、【スカウトフォート】に、来てから、1ヶ月位、しか経って、ないのに……。」
「最近、【チェスガン】にあったセシリアショップを移築したんだよ。 それで2人には内装のアドバイスを聞こうと思ったんだよ。」
一応、セシリアショップの内装は図面で書いてあるから、女子の意見を聞いて参考にしたいのと……。
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