第156話 初ダンジョン ②

 自分達のパーティーは、自分が探索兼攻撃担当、コーデリアが回復と補助担当、シンシアが遠距離攻撃担当でバランスの良いパーティーだと思う。


 そして、自分達パーティーは学生用ダンジョンの入場手続きと間隔をあける為の順番待ちをしている。


 学生用ダンジョンは入り口が5つあるのだけど、魔物は倒してから30分が経過すると復活するので、通常、学生用のダンジョンでは入場に40分の間隔を空けている。


 そんな理由で40分に5組のパーティーしか入れないので一斉に入ろうとすると順番待ちになってしまう。


「一応、確認だけどダンジョン内では僕が偵察と魔物を引き寄せて来る役をやるから、視界に入ったらトドメはシンシアに頼むよ。 戦闘後に怪我をしていればコーデリアが回復して戦闘中に余裕があれば支援魔法を頼むね。」


 ダンジョン内にどんな魔物がいるかは秘密にされているが、低層のダンジョンには雑魚敵しかいないから死ぬことはほとんどないとカーラ先生が言っていた。


「分かった。 攻撃、任せて、レイ。」


「わかりました、レイ。 支援は任せてください。」


 そうだ。 シンシアに注意しておかないといけないことがあったな。


「シンシア。 例えば狭い部屋で魔物が3匹居たら、どんな魔法使う?」


「えっーと、範囲魔法、ですか?」


「それだと危ないかな……。 狭い部屋でシンシアが火の範囲魔法を使ったら僕達が危ないから、狭い部屋では範囲魔法禁止ね。」


「あっ……。」


「その辺も実戦で覚えようね。」


「はい……。」



 確認も終わった辺りで僕達の順番になった。


「お前達のパーティーは優秀だから3層位は余裕だろうが、油断はするなよ。」


「わかりました。カーラ先生。」




 ☆




 自分達は1階層を探索していたのだが、最初の敵が出現した時点で早速問題が発生していた……。



「いやぁ~~~!!」


「落ち着いて! コーデリア!」


「マスター、これは想定外ですね。」


 学生用ダンジョンの1階層は10センチ位の大きめの虫が出るエリアで、コーデリアは虫や爬虫類が苦手だった。


 虫の戦闘力はほとんど無いに等しいくらい弱いが、10匹単位の行動をしていたのが尚更、気持ち悪いらしい。


「シンシアは虫、大丈夫なの?」


「私は、割と大丈夫、です。」


「本当はダンジョンの中で連携とかの練習をしたかったけど。 どうしようか。」


「マスター、いきなりですが緊急事態です。 虫エリアは一気にクリアされる事を推奨します。 コーデリアさんとシンシアさんは私が担ぎますから、殲滅はマスターにお願いします。」


「それしかないかぁ。」


 いきなり緊急事態ってのも恥ずかしいが、コーデリアが恐怖で動けないとなると担いでもらうしかないか。


「レイ、私は、動けるよ?」


「いや、走りながら進むから、シンシアもセシリアに担がれて。」


「コーデリアさん、シンシアさん。 失礼します。」


「えっ? かつぐ……」



 返事を待たずにセシリアは2人を両肩に担ぐ。


 絵面的にメイドが幼女二人を誘拐しているみたいだな……。


「セシリア、最短ルートだ!」


「了解です。」


 自分は【魔導玉】を探索の為に大量に展開していき、虫がいれば【魔導弾】を放ち、殲滅しながら進んでいった。


「きゃああああ~!!」


 ダンジョンの魔物は倒せば消えるのだが、消えるまでには数分かかるので、自分達が通路を走る時には虫の死骸が大量にあったので、コーデリアは悲鳴をあげたあと気絶してしまった。




 ☆



「まさか、虫エリアが3層まで続いていたとは……。」


「コーデリアさんが気絶していて助かりましたね。」


「今日はカーラ先生の言うとおり終わりにするつもりだけど、ちょっとだけ4層も見てから帰ろうか。」


「分かった。」


「マスター、了解しました。」



 ちょっとだけ4層を見るだけだったのだが、またしても想定外の事が起きてしまった。


「レイ、ごめんなさい、私と、コーデリアは、爬虫類も、苦手……。」


「マジか。」


「マスター、このまま爬虫類エリアも進みましょう。」


「えっ? 4層を攻略したらカーラ先生に怒られるよ?」


「緊急事態ですから……。 幸いコーデリアさんが気絶している間に……。」


「……仕方ないか。 爬虫類エリアだけだからね!」


「了解しました。」




 結局、爬虫類エリアが終わったのが7層エリアになり、かなり予定よりオーバーして攻略してしまった。


 そして、ボスモンスターを倒した先にある【帰還結晶】でダンジョンから出るのだった。



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