第140話 ハンタースクール ②
自分達は【スカウトフォート】に到達したらすぐに【ハンタースクール】の事務室に行こうとしていた。
学生寮の生活になるので、【チェスガン学園】の時みたいに、まずは学生寮に荷物を置きに行きたい。
「うわ~、広いな。」
【スカウトフォート】は外壁の端が霞むほど広いのは分かるが、街にいくつもある専門学校のうちの1つである【ハンタースクール】だから、規模は【チェスガン学園】より少し広め位かなと思っていたが、予想以上に広かった。
「この周辺では唯一の冒険者育成の為にある専門学校だからにゃ。 いくつもの施設や専用のダンジョンなんかも学校内にあるにゃ。」
「流石、情報通のエレナだね。 ダンジョンに入れるのは楽しみだったんだよね。」
「俺もダンジョンが楽しみだぜ! ダンジョン内ならいくら暴れても大丈夫なんだろ?」
「いや、暴れても良いだろうけど、ブラットが暴れたらパーティーメンバーに迷惑がかかるでしょ。」
「そうか……。」
「ブラットはあのスキルの制御が出来る様になったの?」
「まだなんだよな。 投げるだけなら出来る様になったけど、レイみたいな事は無理なんだよな。 オヤジからもダンジョン以外では使うなって言われたからダンジョンに行けるのが楽しみなのもあるんだよな。」
ブラットには、自分の【ジョブホッパー】やエレナの【野生の勘】みたいな【固有スキル】を持っているんだけど、制御が難しくて父親であるガインおじさんから使用を止められているらしい。
「子供の時は普通にスキルを使っていたのにね。」
「あの時は精度が低かったからな。」
「そうだったんだね。」
「レイくん。 事務室が混んでいるみたいなので早く行きましょう。」
「そうだね。 早く学生寮に荷物を置くかな。」
☆
事務室に向かうと、予想外の人が待ち構えていた。
「レイくん! やっと来たわね!」
「えっ、何でアメリアさんが居るの?」
【チェスガン学園】の先輩であったアメリアさんが、何故かいた。
「何でって、卒業の日に約束したじゃない!?」
「約束?」
約束ってなんだ?
「マスター、きっと魔法戦の時の約束ではないでしょうか? アメリアさんがマスターの言うことを1つ聞くという内容の……。」
「そうよ。 レイくんは私が【チェスガン学園】を卒業する時に『いつか困った時にお願いします。』って約束よ。」
「確かに言ったけど、まだ困ってないから……。」
本心は、アメリアさんが絡むとコーデリアさんとシンシアさんの機嫌が悪くなり、面倒事になりそうだから永遠に無いだろうけど『困った時にお願いします』って感じで言ったのに、それがなんでアメリアさんが【ハンタースクール】の事務室前にいる事に繋がるのだろう?
「そう、それよ!」
「?」
「レイくんがいつ困るか分からないから、なるべく一緒に行動した方が良いって気が付いたのよ。」
「ええっ? そう言えば、アメリアさんは【魔法学校】に行ったんじゃなかったんですか?」
思い出したが、アメリアさんは【魔法学校】の学校へ行ってはずだ。
「【ハンタースクール】に編入したわ。 私も今年から1年生として、この学校に通うからよろしくね。」
「1年生?」
アメリアさんは自分達より先輩なのに何故1年生として通う事になるのだろう?
「そうよ。 編入すると学費などが全額自腹になるのと、1年生からやり直しになるのよ。」
「マジか……。」
「あと、ブラットくんの方も楽しみにしていてね。」
「俺? 俺は全く関係無いぞ?」
「ブラット、知らない内になにかやらかしたんじゃないのか?」
「レイじゃあるまいし、そんな事はないと思うぞ?」
「……。」
否定したくても、反論がすぐに出てこない自分がいた……。
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