第137話 低学年 修行 ②

 モロット近くの森へ、自分はエリーさんの手伝いの為に付いて来たのだが、【職種】の熟練度を上げるため、逆に魔獣狩りに付き合ってもらえる事になった。


「なんか邪魔しているみたいで申し訳ないです。」


「子供がそんな事を気にしちゃダメにゃよ。特にレイくんの場合はもう少しわがままでも良い気がするにゃ。」


「確かに、お母さんにもたまに言われます。結構、わがままを言っている気がするんですけどね……そう言う意味ではエレナがわがままを言っているところはほとんど無いかも。」


 エレナはファッション位に興味があるのは分かっているが、幼なじみなのに、それ以外の趣味などは知らなかったりするから、結構謎な感じだったりする。


「エレナは、私にはいろいろ言ってくるにゃ。まあ、他の子供よりは控え目みたいにゃけど。」


「エレナの趣味ってなんなの?」


 ちょっと気になったので、エレナに聞いてみる。


「趣味ではないにゃけど、森の探索は好きにゃ。服も好きにゃけど、チェスガンには好きな服屋が少なかったにゃ……あとは秘密にゃね」


 あれだけ自分とブラットを買い物に付き合わせているのに!?と、思ったが……


 落ち着け自分……


 ここは精神的に大人なので……


「それじゃあ、今度僕がエレナに服を作ってあげようか?」


「にゃ!? レイは服も作れるにゃ?」


「あれ? 知らなかった? 僕が今着ている服も自作だよ。」


 裁縫のスキルは無いが、前世でコスプレ衣装なども作っていたし、【魔導】でミシンの代わりに精密な作業も可能だし、きっとエレナの気に入る服は作れるだろう。


「お願いするにゃ!」


「ちなみに服のセンスは無いから、デザインはエレナがするんだよ? ラフスケッチでも良いけど。」


「分かったにゃ! 約束にゃよ!?」


 予想以上にエレナが食いついてきたな、やはりエレナは服が好きなのか。


 採寸のあとは……型を作るかな?


 エレナがどんな服をデザインするのか、今から楽しみだなと思った。




 ☆



 自分は魔獣狩りをする為に、【木星剣】を出し、右手に構えながら森を歩いていた。  


 その近くにはセシリアとエレナ、もう少し離れてエリーさんが歩いている。


 最初はエリーさんがそんなに離れていざという時、大丈夫かな?と思った聞いてみたら、本気のエリーさんは眼では追えないほど速く、20m位の距離なら一瞬で詰める事も可能だったのだ。


 生物があんなに速く動けるのにびっくりしたよ……。



 とりあえず自分達は、はぐれの魔獣を探して回ることにした。


「……あ、魔狼がいる?」


 昔ならば気が付かない距離なんだけど、何か嫌な気配がするな……と意識してみると、いろいろなことがわかった。


 何気に成長してるんだな……


「レイが1人でやってみるにゃ?」


「エレナは?」


「私は魔狼位ならよく倒してるから、今日はやらなくて良いにゃよ」


「なるほど……エレナがソロで倒せるなら、僕もソロで倒してみるよ」


「わかったにゃ。」


 そして、自分は1人で狩ることになり、ゆっくりと近づいてみたが【防衛本能】のスキルは発動しないので、多分1人でも倒せるのではないかと思う。


【魔導弾】を放てば直ぐに終るだろうが、それでは修行にならないので近接戦闘で倒すつもりだ。


 まずは【鑑定】をしてみたが、取得しているスキルも無いから、安心して斬りかかる。


 遠足時に教われた時は魔狼が集団だったからか、怖かったが魔狼一匹位ならあまり怖くはなかった。


 魔狼のいる場所に近付くと、魔狼は脚を止めてこちらを警戒している様な仕草をしていた。


 よし、それならこちらから……


 自分は【木星剣】を構え、ブラットとの模擬戦で使った加速で、一気に魔狼へ近付き……【木星剣】を水平にし、最初は魔狼の首を狙らおう。


 スパッ!


 え?


 首にダメージを与えて有利に戦おうと思っていたら、魔狼の首は簡単に斬れてしまった……


 魔狼って、こんなに弱かったか?


「その年で魔狼相手にそれだけ圧勝出来れば十分にゃ。 はぐれを数匹倒してあとは、徐々に魔狼の数を増やして集団戦に慣れると良いにゃ。」


「分かりました。」



 こうして自分は魔狼や魔犬などを近接戦闘で倒していく事で【魔導剣士】の練度が上がっていくのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーー


 名前・レイ(8歳)

 状態・良好

 属性・雷

 職種・魔導技師4.3 魔導剣士4.9

 種族・人族


 パッシブ・防衛本能、建築、土木、料理

      素材の極み、鍛冶、パラレル思考

      共感覚、魔導科学、特殊採取


 アクティブ・魔導操作、鑑定、クリーン

       ストレージ、武器強化、雷属性付与

       魔導工房、魔導具作成、魔導弾

       魔導手、魔導壁、魔導剣

       圧縮魔導砲、魔導細胞生成

  有線遠隔射撃

       魔導剣術、二刀流


 魔導工房内・作業室、金属加工室、合成室、魔導炉


 固有スキル・ジョブホッパー

       鑑定の魔眼


 装備・魔導服




 ーーーーーーーーーーーーーーー


 名前・セシリア

 職種・魔導姫

 種族・魔導生命体


 固有能力・魔素通話、魔素データ通信、同期

      魔素圧縮吸収、魔素操作、指揮


 装備・神装魔導服(メイド服タイプ)

    神木の小太刀

    魔導圧縮銃



 


【マーティナ視点】


チェスガン襲撃事件から数日後……


私は治療施設が崩壊して使い物にならなくなったので、学生寮へと移動していた。


「あの時、私がいなければ……マグナさんは死なずに済んだかもしれないのに……」


私は目の前で人が死ぬのを見るのは初めてで、それが信頼していたマグナさんだという事実をうまく飲み込めずにいた。


マグナさんのことを考えると、どうしても私のことを気に掛けたせいで、隙だらけになり、魔獣に殺されてしまった……と考えてしまう。


コンコン……


不意に部屋のドアがノックされた。


「え?」


学生寮では基本的に自分の部屋以外にはいかないし、クラスメイトとも学生寮内では交流がないから、普段ノックなんかされないので、ドアがノックされビックリする。


誰?


寮長かな?


「誰ですか?」


ガチャ


「初めまして、私は【バベル】より派遣されました、グリフェスと言います」


グリフェスと名乗った女性は、薄茶色の腰まである長い髪に、銀色の瞳をした美女だったけど……


私はその容姿以上に、腰に差している2振りの短剣に意識が集中してしまった。


何で短剣に意識がいったのかは分からないけど、私の本能が無視出来ないと告げていた……


だけど、マグナさんの所属していた秘密組織の名前を出すということは、マグナさんの同僚だと思い直す。


「私はマーティナです。それで、グリフェスさんは何故ここへ?」


「私はマグナの任務を引き継ぐ為に派遣されました。」


「マグナさんの任務を?」


やっぱりマグナさんの同僚なんだなと思いながら、マグナさんの任務ってなんだろう?と思った。


「はい。マグナの任務はマーティナ様のサポートと護衛。そして最終的にはマーティナ様を我々の【バベル】本部へお連れし、保護することです。」


「なら、グリフェスさんも私の護衛として、チェスガンに住むんですか?」


「本来ならマグナ同様にマーティナ様の体調が安定するまではチェスガンで滞在してもらった方が良かったのですが……私としては早急に本部へお連れするのが良いと思います。」


「私が本部に……それはすぐにでもですか? 魔獣襲来があったからですか?」


確かにマグナさんとはいつか本部へ行きましょうとは約束していたけど……


急に知らない人から本部へ、と言われると戸惑ってしまう。


それにブルーノくんと会えなくなるのも……


「魔獣が仮に襲来しても私の力ならばマーティナ様を確実にお守りしますので、その点は安心してください……マーティナ様を本部へ急いで連れていきたい理由は、マーティナ様の変化にあります」


「え、私の変化?」


てっきり魔獣襲来がまたあると危ないからって理由かと思ったら、違ったみたいだった。


しかも、私の変化が理由って……


髪色や瞳の色……もしくは、胸に浮かび上がっている紋様みたいなものが理由なのかね?


あ、でも胸の紋様の件はマグナさんにも話していないから、これは違うかな。


「はい。マーティナ様の容姿もそうですが……」


グリフェスさんの語る私の変化にはビックリし、そして私も理由を聞いたからには【バベル】本部にて精密検査というものを受けないといけないかなと考えた。


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