第136話 低学年 修行
自分は現在、エレナとエレナの母親であるエリーさん、護衛すると言って聞かないセシリアと一緒にモロット近付くにある森に来ていた。
エレナと2人だけで来ているた時は、森の中でも、もっと浅いエリアだったが、エリーさんがいるので安心という事で、両親から森の奥に入る許可もすんなりとおりた。
エリーさんの強さは、化け物じみた強さを誇るお父さんでさえ、単体では勝てないと言わせる程の実力者みたいだが、お父さんもエリーさんも雲の上の強さなので違いは分からない。
「レイくんは久しぶりにゃ~。元気していたかにゃ?」
「お久しぶりです」
エリーさんはエレナと全く同じ髪色、瞳の色が一緒で、雰囲気なども似ているので、知らない人から見たらエレナのお姉さんと勘違いする程若く、コーデリアさんやシンシアさんも最初はエレナのお姉さんと勘違いしていたらしい。
「レイくんはそろそろエレナにも勝てる様になったかにゃ?」
「いえいえ……勝てる所かエレナとは差が広がっている気がします。先日もボロボロに負けましたし。」
ブラットに完封したので意気揚々とエレナに模擬戦を挑んだのだが、結果は惨敗だった。
そして、強くなってエレナの強さが更に実感したのだった。
「そうにゃか? おかしいにゃね……今頃ならレイくんらエレナに勝ってる時期にゃけど……。」
「えっ? なんて言いました?」
後半部分が良く聞き取れなかったので聞き返すが……
「何でもないにゃよ。それにしても、レイくんは何でエレナに勝てないと思っているにゃ?」
うーん。
そう聞かれても……全く、エレナには勝てる気がしないから、答えがすぐには出ないんだけど……。
「エレナの【野性の勘】と回避能力を上回る攻撃手段が無いことですかね?」
「にゃるほどにゃね……エレナから見て、レイくんの弱点はどこだと思うにゃ?」
「ブラットに比べてスピードというか、筋力が無いから、戦うこと自体が楽にゃ。だから、筋力不足じゃないかにゃ?」
「う、筋力不足と言われるのは……否定出来ないな……」
一応、毎日筋肉痛になるくらいは筋力トレーニングをしているのだけど、ブラットみたいに筋肉質な身体にならないんだよね……
「あとはちゃんとした体術や剣術を使えないのが問題かもにゃ」
「確かに僕には近接戦闘に向いているスキルがないかもしれないな……」
「にゃるほどにゃ……まず【野性の勘】の対策は、認識出来ない速度で動けば問題ないにゃ……」
エリーさんは簡単にそう言うと、目の前から忽然と消えていた。
「えっ、消えた……?」
「ふにゃ!?」
エレナの叫び声に反応して振り向くと、エレナはエリーさんに組伏せられていた……
えっ、何このエリーさんのスピードは……
まるで目の前で手品を見せられているこのような状況だった。
「まあ、こんな感じにゃね。」
「いや、こんな感じって言われても……」
「これでもスピードを抑えているにゃから、レイくんでもそのうち可能にゃ筈にゃよ」
「えっ、本当に?」
あのスピードで抑えてるのにもビックリだけど、自分にも出来るというのには更にビックリした。
というか、エリーさんの言うことにはずれる事は無いらしいが、自分がどうやったらあんなスピードで動けるのだろう?
「これは速く動いている様に見えるテクニックもあるにゃけど、ある程度の身体能力も必要にゃ。レイくんは普段、どんな鍛えたかをしているにゃ?」
自分はエリーさんにいつもの日課としているトレーニングを説明する。
「それだけやってる割には、あまり筋肉が付いてないにゃね……?」
エリーさんは自分の身体を触りながら考え込む。
やっぱり自分は筋肉が付きにくい体質なのだろうか?
「レイくんは本気で強くなりたいにゃ? ちょっと辛いにゃけど、今よりも強くなれる効率の良い方法があるにゃよ」
「えっ、はい。強くなりたいです!」
チェスガンの襲撃が無かったら、ちょっと強くなれれば良いかなと思っていたけど、お父さんみたいな力が自分にもあれば、もっと救えた人が沢山いただろうと思うと、辛い方法だろうと強くなれるならばチャレンジしたいと思う。
「じゃあ、こっちに背を向けてしゃがむにゃ」
「はい」
自分がしゃがむと、エリーさんは自分の頭に手を乗せると、聞いたことの無い言葉でボソボソと話し始める……
【反呪術・高負荷を受けました】
えっ、反呪術?
「これで終わりにゃ。これはエレナにもやってるものにゃけど、本人が本気を出したいと思った時以外には、常に身体へ高負荷を与えるものにゃ。これでいつも通りのトレーニングで数倍の効果が出る代わりに、数倍辛くなるにゃけど、トレーニング量を減らしてはダメにゃよ」
「なるほど……分かりました。」
いろいろ疑問はあるけど、エリーさんの言うことだから、素直に従えば良いかなと思った。
「あと、レイくんは回復系のスキルもあるにゃよね? 以前、ソフィアがうちの子は天才よって自慢していたにゃ」
「お母さん……って回復系のスキルはあります」
「トレーニング中は常時身体全体に回復系のスキルを展開出来る様に練習すると更に効果が良くなるにゃ」
「なるほど……それは思い付かなかったな……」
自分はあまりにヒドイ筋肉痛を治す時にしか【魔導細胞生成】を使っていなかったけど、常時展開するか……
「この【回復魔法】の使い方は、ソフィアが得意とする方法にゃ。だからソフィアは細い腕なのに、あれだけの腕力があるにゃよ」
「確かにお母さんの腕力は異常なほど強いですね……」
以前、町の人が不注意で自分に怪我を負わせてしまった時のお母さんは……今でも忘れられないほど、凄かったからな……
金属製の剣がボキッて……いや、思い出してはいけない気がする……あれ以降、自分はモロット内では町の人達のため、怪我をしないように慎重になったんだよな……
「そう言えば、レイくんは魔獣狩りをしたことあるにゃ? 【魔法剣士】みたいな前衛職は魔獣狩りをしないと【職種】の練度が上がらないかもしれないにゃよ。」
「最近、【職種】の練度が上がらないのはそのせいなのかな?」
「魔獣には特殊な【魔素】を体内に蓄えていて、魔獣が死んだときに、殺したモノへと【魔素】が移動する性質があるにゃよ。だから魔獣を殺すことで【職種】にも変化が起こるにゃよ」
「その話は初めて聞きました……」
図書館や授業でもそんな話は聞いたことが無かった。
「まあ、秘密の話にゃからね。他所では話さない方が良いにゃよ」
「え……」
さらっと秘密の情報を伝えないで欲しい……
「折角だから魔獣狩りをして試してみるといいにゃ。」
しかし、【魔導剣士】の練度は4.6からほとんど変わらなかったのはそのせいかもしれないな。
自分1人だと魔獣狩りなんて危ないから、両親は絶対に許可は出してくれないから、エリーさんに同行してもらっている今がチャンスかなと思った。
「じゃあ、魔獣狩りをお願いします。」
「この森には魔狼や魔犬位の雑魚しかいないから気軽に戦うと良いにゃ。 奥に行くと稀に魔熊がいるにゃけど、私と一緒なら問題無いにゃ。」
「どうやって戦おうかな。遠距離攻撃の方が得意ではあるんですが、最近は近接戦闘を学びたいなと思っているんです。」
「近接の事ならレオンかガインかにゃ。剣の事ならガインが最適かもしれないにゃ。なんたってガインの【職種】は【剣王】だからにゃ。」
「ガインおじさんの【職種】が【剣王】? 【鍛冶】ではないんですか?」
「ガインの【職種】は【剣王】にゃ、最強の剣技系【職種】と言われているにゃ。ガインは剣技以外も凄いスキルがあって、強さだけなら【魔王】も超えるかもしれないにゃ。」
「えっ、【魔王】様って最強クラスの7人という話ですよね?」
「そうにゃ。確かに戦ったらスキル的な上下関係により【魔王】が勝つにゃけど、それが無かったとしたらガインが勝つのではないかと言われているって事にゃ。」
「なるほど、そう言うことかぁ。」
ガインおじさんは凄いとは聞いていたけど、まさか最強クラスだとは……。
「ちなみに、レイくんのお父さんであるレオンも条件次第でガイン並みに強いにゃよ~」
「えっ? 強いとは聞いていたけど、お父さんってそんなに強かったのか……。」
強いんだろうなとは思っていたけど、【魔王】クラスだとは知らなかった。
そしたら、自分が強いのも両親からの遺伝みたいなものなのかな?
いや、そしたら頑張ればもっと強くなれるはずだから、頑張ろう。
ーーーーーーーーーーーーーーー
名前・レイ(8歳)
状態・良好
属性・雷
職種・魔導技師4.3 魔導剣士4.9
種族・人族
パッシブ・防衛本能、建築、土木、料理
素材の極み、鍛冶、パラレル思考
共感覚、魔導科学、特殊採取
アクティブ・魔導操作、鑑定、クリーン
ストレージ、武器強化、雷属性付与
魔導工房、魔導具作成、魔導弾
魔導腕、魔導壁、魔導剣
圧縮魔導砲、魔導細胞生成
有線遠隔射撃
魔導剣術、二刀流
魔導工房内・作業室、金属加工室、合成室、魔導炉
固有スキル・ジョブホッパー
鑑定の魔眼
装備・魔導服
ーーーーーーーーーーーーーーー
名前・セシリア
職種・魔導姫
種族・魔導生命体
固有能力・魔素通話、魔素データ通信、同期
魔素圧縮吸収、魔素操作、指揮
装備・神装魔導服(メイド服タイプ)
神木の小太刀
魔導圧縮銃
☆
【ブルーノ視点】
俺は学生寮で塞ぎ混んでいた……
「はあ……お姉ちゃん……」
魔獣襲来時に俺の姉は遊撃隊として、チェスガン学園のバリケード前よりも少し離れた場所で、俺と一緒にチェスガン学園を守っていたんだけど、予想以上の魔獣が襲ってきたため、姉は利き腕である右腕と背中に大きな傷を受けてしまった……
まあ、俺も顔に怪我をした影響で左目の視力が極端に落ちてしまったけど、姉に比べれば大した怪我では無いだろう……
レイのお母さんにも【回復魔法】を試してもらったが、欠損部位などは時間が経過したり、本人が怪我した身体を正常だと認識してしまっては治せないと言われてしまった。
確かに姉は大怪我を負いながらも、騎士団が持っていた【回復ポーション】により、戦えるレベルまでには傷口が塞がってしまったのが悪かったのかもしれない……
しかし、姉はその事は後悔していないと言っていた。
そんな事を考えながら、部屋でふさぎ込んでいたら、部屋のドアが勢いよく開けられた。
「ブルーノ! 旅に出るわよ!」
「えっ、お姉ちゃん? 旅って? 騎士団は?」
姉が突然、学生寮に入って来たのもビックリだが、旅?
基本的に騎士団に所属している人が勝手に旅など出来ない筈だ……
「騎士団は辞めてきたわ~!」
「えっ、辞めた!?」
「どうせ、この片腕じゃ騎士団にいるのは無理だからね~。」
「それで旅? どこにいくつもりなの?」
「とりあえずの目的地は【帝国】よ。あそこには有名な義手職人がいるらしいから、きっと私の右腕に合う義手も手に入るわ~、そしたら冒険者になって世界を旅するのよ~」
「……え?」
いきなりの事で俺は混乱してしまった。
「ブルーノは私に付いてくる? 付いてこない?」
「もちろん付いていくよ!」
混乱はしていたが、姉に付いていかないという選択肢は無かった。
「流石ブルーノね! あとはマーティナちゃんも誘ってみるのも良いかもね」
「えっ、マーティナさんも……?」
マーティナさんも誘うと言われてちょっとドキッとした。
何でかは分からないけど、マーティナさんと一緒にいると、姉と一緒にいる時とは別のドキドキがするんだよな。
「そうよ。マーティナちゃんは女子寮よね?」
「うん、襲撃以降は会ってないけど……あ、治療施設にまだいるのかな……」
「治療施設? あそこにいた人達はみんなチェスガン学園のシェルターに移動しているし、治療施設は半壊している筈だから……女子寮ね!」
俺と姉は一緒に女子寮へいき、寮を管理している人にマーティナさんを呼んで貰うことにした。
「マーティナさんは学園を退学してますので、現在は女子寮も退去しています」
「え? 退学? 退学理由は分かりませんか?」
「私にはそこまでは分かりませんが……見た目も随分と変わっていたので、襲撃時に何かあったのかもしれませんね……」
「見た目が?」
マーティナさんは魔獣と戦うようなことはない筈だけど……何があったのかな?
それから、学園に行ってマーティナさんの退学理由を聞いてみたけど、身内の事で帰らなくてはいけなくなったらしい。
「ブルーノ、どうしたい?」
「えっ……俺は……」
俺は何故かマーティナさんのその後が気になってしまった。
しかし、姉は帝国に行くし……
どうしよう……
☆
そして、悩みに悩んで俺の出した結論は……
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