第135話 リハビリ 模擬戦

  学園が再開するまでのモロットで生活していた日常……


 いつもの様にブラットとエレナが家に遊びにきた。


「レイ、一緒に模擬戦しようぜ!」


「またには私もレイと戦ってみるにゃ」


 ふたりが遊びに来るときは、ほとんどが模擬戦をしたり修行したりだったりしていた……


 ふたりは相変わらず修行中毒なんだよな。


 特にチェスガン襲撃事件から更に修行中毒が加速した気がする。


「エレナには勝てる気がしないけど……久しぶりにやってみるかな……」


「楽しみだにゃ」


「よしっ、じゃあ広場に行こうぜ」


「レイくん、私達も見に行って良いですか?」


「私も見に行きたい……」


「お兄様の活躍を見に行きます!」


「別に良いよ。まあ、僕が勝てるとは限らないけどね……」


 結局、自分が模擬戦をやると、もれなくコーデリアさん、シンシアさん、フローラの3人が付いてきた。


「レイくん、頑張って下さい!」


「レイさん。がんば。」


「お兄様、頑張って!」


 この3人は自分が勝つことを信じているな……



 ☆



「まずはブラットとかな。」


「まあ、そうだな。今日はコーデリアさんもいるし、武器は鉄剣の刃がついてないのでやるかな。その方が実戦っぽいしな」


「じゃあ、僕も改良した木剣を使うかな」


 この改良した木剣は、木剣の内部に使い物にならないレベルの小さな虹魔石を大量に仕込んだ物で、【木星剣】というよく分からない名前のついた剣だ。


 効果は【魔導】や【魔力】を流すと、木剣とは思えない程の強度になり、他は【鑑定】でも???と表示される不思議な木剣だった。


 ブラットの腕力で放たれる鉄剣を防ぐにはちょうど良い武器だろう。


 しかも、材料が木と【虹魔石】だから、金属製武器に比べて遥かに軽いのが良い。


 あと、ちょっとずるいかもしれないが、自分は今回の模擬戦に【魔導服】を着させてもらった状態で戦わせてもらおう。


 自分は【木星剣】を右手に持ち、自分の周辺に【魔導剣】を数本待機させた状態にする。


「いつでも良いよ。」


「オッケー、俺も大丈夫だ。」


「了解。じゃあ、今日は僕から行かせてもらうよ!」 


 リハビリみたいなものだけど、何となくブラットと近接戦闘をやってみたくなったので、まずは【木星剣】を使って戦うかな。


 自分は【魔導腕】をパチンコの様に使い、弾くと同時にダッシュをする。


 そうすると、一歩が自分でも信じられない位の速度が出た。


 このダッシュは初めて使ったが、何となくだけど、これは出来そうな気がしたんだよな。


「おっと! レイが近接戦闘に来るなんて珍しいな……しかも、はやっ!」


「またには変わった戦い方も良いかなと思ってね!」


 自分は姿勢を低くして、勢いを殺さないように突きを繰り出す。


 ブラットは自分の突きを紙一重で回避しながらも、自分にカウンターをあわせ、鉄剣を振り下ろすが……自分の周りに待機させていた【魔導剣】によりブラットの攻撃を防いでいた。


「完全に死角だったのに、良く防いだな……」


「まあね……どんどんいくよ!」


 自分は【木星剣】と2本の【魔導剣】を使い、防御を気にせずに攻撃していき、ブラットの攻撃は無意識で【魔導剣】が防いでくれた。


「……なんだこれは? 今までのレイなら防げない速度だし、今のも俺の攻撃すら見えてないだろ……」


「それは秘密だよ」


 実は、モロットで一週間近く眠っている間に起こったのか分からないが、目覚めると自分の無意味なスキル【人見知り】スキルが、【防衛本能】ってスキルに変化していたのだ。


 変化した理由は分からないけど、もしかしつら死にそうな怪我をしてスキルが変化したのかな?


 そんな訳で、この【防衛本能】というスキルは、良く分からないけど、自分の意思とは関係なく【魔導剣】や【魔導壁】を展開していれば、勝手に防御してくれるスキルなんだけど、いろいろ試した結果、自分自身が武器や盾を持っていても発動しないし、【魔導剣】などを最初から展開してないと発動しないしとか、発動するための条件はあるみたいだった。


 今までは、常時【魔導壁】を展開していたけど、一対一でブラットみたいな剣一本の相手になら【魔導剣】を展開しておけば自動的に防御してくれるのがわかった。


 まあ、どこまでのスピードに対応出来るのか分からないので、過信は良くないだろう。


 あと、近接戦闘用に【魔導服】を様々な改良をしたのだが、その搭載されてある中でも筋力を数割増やせる簡易身体強化機能を使い、通常以上の速度で【木星剣】をブラットに向かって振りおろしていく。


「うおっ、レイはこんなに速く動けたのか?」


「驚くのはこれからだよ。」




 自分は2本の【魔導剣】の長さを振る度に微妙に変えていき、ブラットの感覚をずらしていく。


 それとブラットに気付かれない様に極細にした【魔導腕】……糸と変わらないレベルの細さにまで変化させた【魔導腕】をブラットの気が付かない距離から張り巡らしていき、ブラットの動ける範囲を制限する。


「レイがこんなに速く動けるのは予想外だが……まだ身体の動かせ方が悪いな!


 自分も剣術みたいなスキルを持っていないから、確かに動気が悪いのは仕方ない……しかし


「これで終わりだよ!」


 自分は自分の周囲全面に【魔導壁】を作り、ドーム状にする。


「な、なんだ!?」


 そして、ブラットは【魔導壁】に押されるような形で、【魔導腕】が張り巡らしてある位置まで押し出す。


「くっ、そういうことか……!」


 糸状に張り巡らした【魔導腕】をブラットの両手両足に巻き付けていき、何本もの【魔導腕】を地面に力強く引っ張る事で、ブラットの動きに阻害する事に成功する。


 現在のブラットは両手両足に重りを付けたようなものだ。


 このチャンスを逃す訳にはいかないので、怒涛のラッシュと力任せに【木星剣】をブラットに叩きつけていく。


「参った。降参だ。」


 何発か良い攻撃がブラットに当たり出した事で、ブラットは両手を上げ、降参のサインを出した。


「おお、久しぶりにブラットに勝ったかも。だけど、ブラットは手加減していた?」


 文化祭の闘技の部では、ブラットは多才なスキルを使用していた筈。


「いや、手加減はしていないぞ。まあ、一部の模擬戦レベルでは使わないスキルはあるけど、それはレイも同じだろ。」


「そっか、そう言われると僕も同じかな?」


 確かに殺傷力のある好きとか武器は模擬戦では使えないから、自分もブラットも似たようなものか……



「よしっ、次はエレナと勝負だ!」


「レイとは久しぶりにゃけど、負けないにゃ~」


 久しぶりにブラットに勝てたのが嬉しかったが、エレナにはぼろ負けしたので、更に厳しい修行をし、打倒エレナを再度心に誓うのだった。

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