第133話 襲撃後のセシリア
自分が目を覚ましてから2日が経過しており、自分は未だに部屋のベッドで安静にしていた。
自分が目覚めた日は、エレナやブラット、コーデリアさんやシンシアさんと自分達家族が集まって、パーティーの様な豪華なご飯が出てきていた。
どうやら自分はかなりの重症だったらしく、お母さんの到着が数十秒遅れていたら、自分は死んでいたらしい。
記憶には無いが、自分はどんだけ無茶したんだって感じだが、シンシアさんを守るために禁止されていた【光雷の魔剣】に雷属性付与をしたと聞いた時は、仕方ないなと納得した。
ちなみに、ブラットやエレナも学園が休みの間は地元に戻っているので、休みが延長された様な感じだった。
そして、その日の夜中にはセシリアからチェスガン襲撃事件の時の話を聞くのだった。
☆
【セシリア視点の回想シーン】
レオン様によりチェスガン学園周辺の魔獣が一掃され、レオン様はチェスガン内にいる魔獣殲滅の為に、チェスガン学園を後にしたあとの話……
チェスガンへの襲撃もレオン様の活躍により、魔獣はほとんど倒されたので、私は当初マスターに指示されたとおりに、誰にも見られないようにチェスガンの外へ向かい、【虹魔石】を抜いて隠していた試作品の【魔導具】を回収する作業をしていた。
「メイド服のお嬢さん、ちょっと話を聞いても良いかな?」
「えっ!?」
私は突然話しかけられ、振り向くとそこには血まみれのレオン様が立っていた。
私は周囲に誰もいないのを確認してから作業を開始したし、作業中も警戒をしっかりしていた筈なのに、レオン様に声をかけられるまで背後を取られている事に気が付きませんでした。
予想外の事態だったので私は咄嗟に身構えてしまう。
「ああ、悪いな……俺はそんなに驚かす気はなかったんだけど、お嬢ちゃんに逃げられると困るからさ、気配を消して近付かせてもらったんだ。俺としてはお嬢さんに事情を聞きたかっただけだから、あまり警戒しないで欲しい。」
「……すいませんが私の判断では話せません。」
マスターと私の関係やこれまでしてきた多くの事をマスターはご両親に隠されているので、私の考えだけではレオン様に事情を話せませんでした。
「メイド服を着ているから、誰かに仕えているんだろうな……そしたら、ひとつだけ確認したい。」
「な、何でしょう?」
先ほどまでの優しい雰囲気だったレオン様の表情が真剣になり、そして回りの空気も一瞬にして変わる。
これは……このあと聞かれる質問だけは答えろよ?という圧力でしょうか……今にも殺されそうな雰囲気です……
「お嬢さんはチェスガンを守る側か?」
「それは間違いありません。」
それは間違いないし、マスターの秘密とは無関係な質問だったので、私は即答する。
「即答だな。 嘘もついていなさそうだな……。」
レオン様と話をしているタイミングで騎士団のひとりが慌てて走ってきた。
「レオン様! また魔獣の襲撃です! 今はチェスガン入口で治療をしてくれていたソフィア様が防いでいますが救援をお願いします!」
「まだ魔獣がいたのか、直ぐに行く! お嬢さんはどうする?」
「私も一緒に行きます。」
入口に向かうとソフィア様が2本のメイスを両手に持ち、振り回しながら魔獣を薙ぎ倒していた。
ソフィア様は【回復魔法師】なのに強いですね……。
ソフィア様がメイスを振り上げてから、振り下ろされるまでの動作が全く見えないし、殴られた魔獣は潰されたトマトの様に弾け飛び、ソフィア様は次から次えと魔獣を倒していく。
「ソフィア! 戻ったぞ!」
「レオン!」
レオン様は魔獣を斬り裂きながらソフィア様に話しかける。
チェスガン入口付近には魔獣の数が約300匹ほどいたが、2人にかかれば数分で片付いてしまうかもしれない……
魔獣をアッサリと倒していく姿を見て、この2人の強さは別次元なのだと認識しました。
それにしても、魔獣はどこから沸いてきたのだという位のしつこさでした。
「まだこんなに居たのか!」
その時、店舗の庭に放していた【魔導スライム】の視界に、物凄い速度で移動する魔獣の姿を捉えていた。
セシリアショップのある立地はチェスガンの入り口とは反対側にあり、魔獣は壁を超え、裏から隠れて入られた形になっていた。
そして、その魔獣は真っ直ぐに学園へ向かっていた。
すぐにその事をマスターへ報告し、ご両親にも話すことにした。
「レオン様! ソフィア様! 街の反対側から魔獣が侵入して学園に向かっています!」
「お嬢さんは何でそんな事を……」
「レオン、その女性を信じましょう! 学園にはレイがいるはずだから、私が向かうわ!」
「ああ、そうだな。ソフィア、ここは俺が防ぐから学園を頼む!」
「解ったわ!」
すぐソフィア様は走っていった。
私もすぐにソフィア様の後を追いかけましたが、その時には既にマスターが魔獣と戦闘になっていました。
☆
私が学園に着いた時には、魔獣は既にマスターに倒されており、倒れているマスターと重傷の先生が1人、他にも負傷している騎士団、生徒や先生が数人いました。
ソフィア様はまずマスターを治療し、次に重傷の先生に回復魔法を使い始め、あっという間に負傷していた人達を治してしまいました。
しかし、ソフィア様も傷は治せても亡くなってしまった騎士団の団員はどうすることも出来ず、悲しそうな表情をされていました。
そして、私はソフィア様により傷を治してもらったマスターの元に駆け寄り、抱き寄せますがマスターが目を覚ますことはありませんでした……。
☆
「セシリアさん、あなたはうちのレイとどういう関係なのかしら?」
「……」
私は現在、学園内にある個室でソフィア様とレオン様の3人しかいない状況にいた……
私が心配なあまり、マスターを抱き寄せてしまったのがいけないのですが……
「あなたにも何かしら事情があるのは分かるわ……でも、親として謎の多い女性が近くにいたと知ったからには見過ごせないわよ?」
「私は……」
どうしましょう……
マスターならば誤魔化して欲しいと思うはずですが……この2人にはそんな誤魔化は通用しない気がします……。
本当の事を言う?
それならばどこまで言う?
私はマスターに造られましたなど言って、信じるでしょうか?
「ソフィア、そんな怖い顔で聞いても答え辛いだろ……」
「……なに? あなた……?」
「いや……何でもない」
「はぁ……えっとね、私達は別にあなたがレイにとって悪い存在だとは思っていないわ……いえ、逆にレイの為に何かをしているのだろうとも思っているわ。だから私達はあなたが何のために動いているかとか知りたいのよ……それにあなたは人族じゃないでしょ?」
「なっ……何でそれを……」
私はソフィアに人族ではないと言い当てられて動揺してしまう。
「そんなのは私達からしたらすぐに分かるわよ。だってあなたからは心臓の鼓動が聞こえないのだから……でも邪法による気配も無いし……ちなみに私達は、あなたには悪いけど納得出来る話を聞けるまで、あなたを解放する気は無いわ」
「……分かりました。お二人にはお話しますが、マスターが絶対に話したくないと思っている内容は絶対に言えません」
「ええ、教えてちょうだい」
私はお二人に、私はマスターが【魔石】の研究しているときに偶然自我に目覚めた特別個体で、マスターのスキルにより身体を作ってもらい、現在はチェスガンでセシリアショップを任されていることを話しました。
マスターが異世界転生者という件はもちろん秘密にし、他にも【虹結晶】やマスターのスキルについても秘密にしました。
これで納得してくれると良いのですが……
「分かったわ……私達はそれ以上聞かない事にするわ。」
「ありがとうございます」
「あと、他の人にはあなたが人工に造られた生命体ということは秘密にした方が良いわね……」
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