第130話 チェスガン襲撃⑤
自分がセシリアに【魔導高炉石】の使用を指示した後……
「お父さん、どうやら予想以上に魔獣の数が多いみたいだけど、この馬車のスピードはこれが限界なんだよね?」
「ああ、これでもかなり速い馬だし、ソフィアの【回復】すら使っている位だからな、これ以上のスピードは流石に無理だな。それよりも魔獣の数は分かるか?」
「えっと、推定だけど……約800匹位かな。まだ増える可能性は高いけど……」
セシリアから【魔導高炉石】により大量の魔獣を殲滅したあとの数を確認してもらい、自分はお父さんにまだ生き残っている魔獣の数を教える。
「確かに随分と多いな……ソフィア」
お父さんは少し考えたあと、何かを決断したような表情でお母さんの名前を呼ぶ。
「ええ、分かってるわ。気を付けてね」
「レイ、俺はこれから1人で先にチェスガンに向かうが、しっかりとお母さんの指示に従うんだぞ」
「えっ、お父さんが1人で? どうやって?」
セシリアの飛行能力でもない限りは、今乗っている馬車が1番速い移動手段だと思ったけど、実は違うのだろうか?
「俺は馬車から降りて1人で走って行く」
「走る?」
「ああ、俺が1人で走った方が圧倒的に速いからな。流石にモロットから走ると疲労が凄いが、ここまで来れば問題ないからな。じゃあ、レイ達は無理するなよ!」
そう言ってお父さんは馬車から飛び降りたかと思ったら、ものすごい土埃を上げながら爆走していき、少しするとお父さんの後ろ姿は見えなくなるほど離れてしまった……
馬車よりも圧倒的に速い速度で数十キロも走るって、相変わらずお父さんは規格外だな……と思った。
☆
【ブラット視点】
レオンさんが馬車から走り出したのを見て、やっぱりレオンさんもオヤジやエリーさんと同じく規格外だなと……と眺めていると、エレナから肩を叩かれる。
「(なんだ? エレナ)」
こういう時のエレナは、レイに内緒の話をしたいパターンだと思い、小声で答える。
まあ、この状況だとやることは限られるだろう……
「(私達もチェスガンに近付いたら、レイに内緒で馬車から降りるにゃから、準備しておくにゃよ)」
「(分かった。俺はいつでも良いぜ)」
俺はやっぱりなと思いながら、覚悟を決める。
俺とエレナの戦場はレイ達とは違うのだろうか。
☆
しばらくして、レイとソフィアさんが話し始めたタイミングで俺はエレナから合図を受け取り、俺達はこっそりと走行中の馬車から飛び降りる。
「ふぅ、随分とタイミング良くレイとソフィアさんが話し出したな……」
「ソフィアさんには私から頼んでいたんだにゃ」
「なるほどな……それもエリーさんのアレか?」
「そんな感じにゃ」
「それで? 俺達は何をするんだ?」
「私達は、これ以上チェスガンに魔獣が合流しない様に、魔獣の群れを殲滅するにゃよ」
「そっか……だから、オヤジは珍しく俺にこんな大量な魔剣を渡してきたのか……」
基本的にオヤジは、俺に魔剣の使い方は教えてくれたが、魔剣を貸してくれることは無かった。
だから、こんな大量の魔剣を渡された時点で危険度は高いんだろうなとは覚悟していた。
「そうだにゃ。ここが第1のターニングポイントってママが言っていたにゃから、ここでは私も本気を出して良いって言われているにゃ……だから、ブラットも死ぬ気で付いてくるにゃ」
「ああ、任せろ。俺達はこの為に過酷な訓練をしてきたんだからな。さっさと終わらせてレイの加勢に行こうぜ!」
「その意気にゃ」
☆
しばらく移動すると、本当に魔獣が大移動しているのが遠目から見えた。
「あの数はやべぇな……一体何匹いるんだ?」
「そうにゃね……967匹にゃ」
「……」
相変わらずエレナの能力は謎だからだが、こういう時には頼りになるなと感心する。
それに明らかに普通の魔獣とは違うのが分かったが……
「あの魔獣は俺にとっては良い敵だな。俺の【グラディエーター】の対象らしいぜ」
俺の【職種】があの二足歩行して武装している魔獣は前衛職の能力上昇効果の対象だと告げていた。
「それは助かるにゃ。先ずは先頭集団を殲滅する為に広範囲攻撃スキルを使いたいにゃけど、ブラットも出来るかにゃ?」
「ああ、この魔剣……【焰の熔岩剣】を使えばいけるぜ」
「【焰の熔岩剣】にゃか……覚醒は使えるにゃか?」
「ギリギリ覚醒2段階までならいけるな」
「覚醒1段階で良いにゃから、あの方向に魔剣の限界まで撃って欲しいにゃ」
「おう、了解したぜ!」
俺はエレナの指示通りに【焰の熔岩剣】を覚醒1段階にして、魔剣のスキルを発動させる。
「俺の敵を殲滅しろ、【熔岩流星弾】!」
すると魔剣から一気に魔力を吸われたあと、魔獣の群れに向かって数メートルはある熔岩弾が無数に降り注ぐ。
「まだまだいくぜ、【熔岩流星弾】!」
「私もやるにゃ……」
☆
パリンッ……
「はあ、はあ……【焰の熔岩剣】も限界か……」
【焰の熔岩剣】は、5発の【熔岩流星弾】を撃った時点で、刀身が粉々に砕け散った。
魔剣の覚醒は、魔剣の限界を超えた能力を使える代わりに、魔剣が粉々になるリスクもあるから、普通は魔剣の覚醒を使えたとしても使わないとオヤジは言っていたが、今回に関しては渡された魔剣全てが壊れても構わないってオヤジに言われているから、遠慮なくガンガン使うことにしていた。
「魔獣の半分くらいは削れたにゃね。ブラットは魔獣がこっちに到着する前に魔力を回復させておくにゃ」
「ああ……この魔力回復させるポーションは不味いから嫌いなんだよな……」
俺は魔剣と共に、何本も渡された魔力回復ポーションの1本を一気に飲む。
「我慢するにゃ……あと、向かってくる魔獣の先頭に大きいヤツがいるにゃけど、アレが中ボスみたいなものだから、雑魚魔獣を殲滅するまで拘束するにゃ」
ああ、あの先行して走ってくる、巨大な斧を担いだ巨漢の女魔獣か……
「拘束するならこの魔剣だな……【霊夢の幻夢剣】、眠れ【無限夢魔】!」
俺は先行する魔獣に向かって【霊夢の幻夢剣】覚醒2段階スキル【無限夢魔】を発動させる。
これは対象一体を無限に眠らせるスキルなんだが……
「くっ、完全には決まってないな……」
「実力差があるから仕方無いにゃ……【氷結縛】!」
エレナは俺の【無限夢魔】に被せて、魔獣の周りを凍らせていく……
「なら俺も追加で【死氷血】」
俺は魔剣【冷凍剣】の覚醒2段階スキル、【死氷血】を発動させる。
これにより体内の血液を凍らせて死に至らせるスキルなんだが……これでも死なないか。
「ブラット、ナイスにゃ! あとは拘束が解ける前に雑魚魔獣を殲滅するにゃ! 私は右側、ブラットは左側を任せるにゃ!」
「了解!」
俺は左手に持つ魔剣【疾風の速剣】で移動速度を上げながら、右手に持つ【死霊の糸霊剣】を使い、糸状に変化した糸霊剣で魔獣を切り裂いていく。
本来なら糸状の武器は扱いが難しく、今の俺では扱えないが、この魔剣は俺の意思に合わせて動いてくれるので広範囲殲滅が可能になっていた。
チラッとエレナの方を確認すると、無数の氷の矢が魔獣の頭部を的確に貫いているのを見て、流石だなと思ってしまう。
エレナはエリーさんから、理由は知らないが許可なく魔法スキルを人前で使うのは禁止されているから、なかなかエレナの魔法スキルを見ることは無いが……あれは相変わらず反則だよな。
俺も1年前の魔狼に苦戦した屈辱から死ぬほどの訓練をして、何でもアリならばエレナに勝てる希望は極僅かなら有りそうだが、未だに魔法スキルありのエレナには勝てる気が一切しなかった。
☆
何とか巨漢の魔獣の拘束が解ける前に雑魚魔獣を全て殲滅することに成功していた。
「何とか間に合ったな……」
俺達の目の前には氷付けにされた魔獣がいて、弱っているみたいだけど、未だに死んではいない……
しかも、氷にはヒビが入っているから、もう少ししたら氷を砕いて出てくるだろう。
「そうにゃね。この魔獣も結構弱ってるにゃから、私達2人でも倒せる筈にゃ」
「むしろ氷付けにされてるのに生きてる時点で化け物だけどな……ちなみに俺の持ってる魔剣は、あと1本しかないしな……あ、そう言えば魔剣をもう1本持って来ていたのを忘れていたな。」
俺は短剣サイズの魔剣を服の中にしまっていたのを思い出し、手に取ってみる。
「でも、この魔剣はレイでも鑑定不能って出たらしいから、名前すら分からないんだよな……」
しかも、普通の魔剣ならば、俺が持てば何となく使い方が分かるんだが、この魔剣は使い方すら全く分からないから、実戦では怖くて使えないだろう……
「にゃ!?」
「ん? エレナはこの魔剣を知ってるのか?」
なんだ……?
エレナが珍しく尻尾を立てながらビックリした表情をしてるな……これって不味い魔剣なのか?
「それは魔剣じゃなくて、ミルヴァヒガンにゃ!! 何でガインさんがそんなものをブラットに持たせたにゃ!?」
「あ……悪い。これは俺がオヤジの魔剣庫から勝手に持って来たんだ……これって、やっぱりオヤジに怒られるか?」
「ちなみに、どうやって魔剣庫に入ったにゃ? あそこって厳重に封印されていた筈にゃよね?」
「それは……レイと遊びがてら挑戦したら、レイが簡単に扉を開けたんだよな」
「にゃ……レイも共犯にゃか……これは予想外にゃ。それは危険にゃから……話しは後にゃ!」
「ああ、まずはこの魔獣を何とかしないとな」
魔獣を拘束していた氷に無数のヒビが入り、今にも氷を破壊して魔獣が出てきそうな雰囲気だったので、俺は最後の魔剣、【閻魔剣】を右手に構える。
この【閻魔剣】は他の魔剣とはレベルがちがい、今の俺では覚醒スキルは使えないので、硬くて切れ味だけが良い剣といった感じだが、ほとんど魔力が切れている俺にとってはちょうど良かった。
「オマエタチ、フタリハ、ゼタイニコロス!」
魔獣はものすごい怒っているな……まあ、いきなり氷付けにされたら怒るよな……
ガゴンッ!
魔獣が巨大な斧を俺に向かって振り下ろされたのを【閻魔剣】を両手に持って受け止める。
くっ……
凄いパワーだな……
一回攻撃を受けただけで、【閻魔剣】を持っていた手が痺れてしまう。
これは攻撃を受けずに、回避しないとダメだな……。
魔獣が俺に集中している瞬間の隙をついて、エレナは背後から2本の短剣を使いたい、魔獣の首を切り落としにかかる。
よし、これで魔獣の首は落ちただろう……
ドスッ……
「にゃ!?」
「な、なんだと……」
エレナの短剣がしっかりと魔獣の首を切り裂いたと思ったら、エレナの短剣は魔獣の首皮一枚すら切り裂けないでいた。
エレナの攻撃は、見た目以上に切れ味が鋭い筈なのに、全く切れていないという現実は非常にヤバかった。
「キサマラ!」
魔獣のターゲットが俺からエレナへと、完全に移っていた。
魔獣の動きは速いが、エレナのスピードは更に速く、魔獣の攻撃をことごとく回避していた。
「ガアア!」
そして、エレナは回避を続けながら、俺にサインを出して来る。
俺が決めろってことか……
確かにエレナの攻撃で全く傷付かなかったからな。
その点、俺は【グラディエーター】の【職種】効果で魔獣との能力差がかなり埋まっているから、俺ならばダメージを与えられるかもしれない。
そうなると、俺が今出せる全力の攻撃、【閻魔剣】による火属性付与をしたものを首、もしくは心臓に一発で決めないと厳しいだろう……
普通の鉄剣ならば火属性付与もギリギリ出来るが、この【閻魔剣】でやろうとすると、かなり危険な作業になるかもしれない。
オヤジからは、同属性の魔剣に属性付与すると、威力が格段に上がる代わりに、魔剣からの反発もしくは侵食があるから、気をつけろって何回も言われていたが、今はこの魔獣を倒せなければ俺達は終わってしまう。
エレナはこいつを中ボスと言っていた……ならば、ここでこんなやつに負けるわけにはいかない。
俺は魔獣から見えない位置に移動したあと、俺が出せる最強技を出すために集中する……
俺はエレナやレイみたいに【魔力操作】が得意ではないため、激しく動きながら細かい【魔力操作】は上手く出来ないが、今みたいにエレナが敵の意識を逸らしてくれていれば何とか実戦に耐えられる属性付与が出来る。
……【閻魔剣】、お前からしたらオヤジじゃなく、俺みたいなレベルの低いやつに使われるのは嫌だろうが、今だけでも力を貸してくれ。
俺のイメージするは……この世の果てにあるとされる獄炎……
腕から手にかけて魔力を貯め、その魔力を一気にイメージする火に変換し、イメージを固定……
くそっ、相変わらず難しいな。
俺にはこの強いイメージをより世界に固定するための作業が苦手なんだよな。
だが、イメージは小さいときからオヤジに嫌と言うほと聞かされてきたんだ……あとはそのイメージをどれだけ俺が再現出来るかだ!
きっと、こんなことも出来ないようでは……将来努力しか能のない凡人の俺が、天才であるエレナと無限の可能性があるレイのふたりと肩を並べて一緒に戦うなど無理な話だろ!
……
……よし!
俺は必死に獄炎のイメージを右手に固定し、そのイメージを一気に【閻魔剣】へと流していく。
このとき、俺の右手に流れる魔力と【閻魔剣】に流れる魔力を一体化しないと、正しく属性付与は成功しないのだが……普通の鉄剣ならば問題ないが、【閻魔剣】みたいな魔剣は、それ自体が独特な魔力を内包していて、魔剣に属性付与をするには魔剣の魔力を俺の魔力で塗り替えなくてはいけない……
「キサマ……ナニカスルキダナ……」
後少しで属性付与が終わりそうってところで、今まで一切こちらには気を止めているそぶりをしていなかった魔獣が、突然振り替えって、手にしていた巨大な斧を俺に向かって投げてきた。
「ブラット! 避けるにゃ!」
エレナは斧を避けろと叫ぶが、今属性付与を止めて回避に専念してしまえば、【閻魔剣】に流していた魔力が暴走し、その暴走した魔力は俺にそのまま返ってきてしまう。
そしたら、もう俺はこの戦闘で2回目の属性付与が出来るような身体ではなくなってしまう。
ならば……属性付与は継続しながら……最小限の動作で回避をする。
巨大な斧は回転しながら、俺の上半身を狙って飛んできている。
無傷は無理だが、属性付与をした攻撃が出来る位のダメージなら仕方無いだろう……
俺は上半身を少しひねる。
そして巨大な斧は左肩をえぐるように切り裂いていく。
ザシュ!
「ブラット!」
ぐっ……いてぇ……
しかし、何とか……?
な、なんだ……視界がグラグラするぞ……?
「ゲハッ……」
俺はあまりの気持ち悪さに吐いてしまう。
もしかして、これは毒か?
しかも、数秒でこれはヤバイ……
くっ、意識が……
俺が意識が朦朧としていると、胸辺りが突然光だした。
なんだ?
『勇敢なる戦士、貴方が私を目覚めさせてくれたのですか?』
脳に直接語りかけてくる少女の声は、意識が朦朧としているはずの俺でもしっかりと聞こえた。
『俺がなにをやったのかは分からないから、あんたを目覚めさせたか知らないな』
『短剣内で眠っていた私を、破壊し、貴方の血と勝ちへの渇望により目覚めさせたのではないですか?』
短剣?
ああ、ミルヴァヒガンを服の中にしまっていた位置がちょうど斧により破壊されたのか?
そして、肩を抉られた血がミルヴァヒガンにかかった?
あと、確かに勝ちへの渇望はあるな……
『俺が目覚めさせちまったみたいだな……ってそんな話をしている場合じゃない!』
『安心して下さい。この会話は意識拡張により現実では刹那です。』
言っている意味は分からなかったが、何となく言いたいことが伝わってきた。
『て言うと、話している間は時間がほとんど経過しないってことか?』
『はい、そうです。しかし、貴方は現実に戻った直後に死んでしまうかもしれません』
『ああ、かなりヤバい状況だったな……』
冷静に考えると、これは詰んだんじゃないか?
『そこで私と契約をしましょう』
『契約?』
『はい、貴方が私の願いを叶えてくれるのなら、貴方の危機的状況を打破する力を貸しましょう……それで私の願いは』
『よし、契約するぜ』
『えっ? 私の条件をまだ伝えて無いのですが?』
『今の状況を打破してくれんなら、大抵の願いは聞いてやるよ……ああ、だけど幼なじみふたりと敵対する様な願いはダメだな……』
『うふふ、私は貴方を気に入りました。あと私の願いが貴方の幼なじみふたりと敵対することにはならないので安心して下さい。』
『そっか、それを聞いて安心したぜ。しかし、現実の絶望的な状況をどうやってひっくり返すんだ? 俺は猛毒で死にそうだし、あの身体ではあの魔獣を倒せるほどの力が出せるとは思えないんだが……』
『猛毒に関しては、粉々になったミルヴァヒガンが貴方の体内に血管を通して流れるので、多少は痛いでしょうが解毒されるので大丈夫です。』
『そうなのか……』
話が難しすぎてよく分からないが、大丈夫なら良いか……
『それに貴方が【閻魔】にアクセスしていたタイミングで私と契約したのは運命なのかもしれません。』
『どういうことだ?』
『貴方は数秒だけですが、ほんの一端ですが【閻魔】の力を使えるってことです。』
『【閻魔】のちから……ああ、なるほど』
何故か分からないが、【閻魔】の力という意味が分かった。
そして、その力を使うリスクも理解した。
『うふふ、もう理解出来たのなら、相性が良いのかもしれませんね。詳しい話しは戦闘が終わってからにしましょう』
『そう言えば、あんたの名前は? 俺はなんて呼べば良いんだ?』
『私はミルヴァリン・バロックスよ。長いからミルって呼んでくれれば良いわよ』
『ああ、分かったよ、ミル』
そこで俺の意識は現実に戻ってきた。
ぐっ……
身体中がすげえ痛いじゃないかよ……なんだよ、多少は痛いって……!
しかし……その数秒後には痛みが嘘のように無くなった。
そして、俺は猛毒により倒れていたらしく、魔獣は俺への脅威は無くなったと思ったのか、またエレナに向けて攻撃を再開していた。
俺は身体に意識を向ける。
抉られた肩は未だに血は出ているが、治り始めている気がする。
あと、持っていた【閻魔剣】は無くなっていた。
さてと、サクッと魔獣を倒して終わらせるか。
俺は身体を確認しながら立ち上がる。
俺が立ち上がると共に、エレナと魔獣は同時に俺が立ち上がったことに気がついた。
「ブラット! 大丈夫だったにゃ!?」
「アノドクデナンデ……」
「ああ、心配かけたけど大丈夫だ。詳しくは後で話すが……先にこいつをなんとかしよう」
俺は魔獣を倒すため、【閻魔】から代償を払い力を借りる。
俺が【閻魔】から力を借りた途端、エレナを無視して俺に襲いかかってくる。
やっぱりこの魔獣は脅威度みたいなのが分かるのかもしれないな。
だから、俺が属性付与を始めた途端、こっちに反応したんだな。
「ガアアアア!」
「縛」
俺は【閻魔】の力で強化された身体で、魔獣の引っ掻き攻撃を受け止め、そのまま魔獣の腕を掴み、拘束する。
「ガァ!?」
この縛は、相手に直接触れなくてはいけなかったり、実力差がありすぎないや、人族を殺した経験があるなどと、他にもいろいろ制約はあるが……
「死ね」
縛が発動さえしてしまえば、もう魔獣を確実に倒すことが出来き、俺は魔獣に死を宣告する。
「グギャ」
そして魔獣は魂を潰され、あっさりと死んだ。
「ふぅ……」
「お疲れ様にゃ、ブラット。いろいろ聞きたいことはあるにゃけど、とりあえず目的の撃破には成功したにゃね」
「ああ……本当にギリギリだったが、何とか第1の目標は……達成出来たな……悪い、ちょっと起きてるは限界みたいだ……」
「分かったにゃ、安心して寝ると良いにゃ」
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