第126話 チェスガン襲撃①

 チェスガンへの同行が許可された自分は、お父さんと一緒に食堂へ向かいながらセシリアと連絡を取っていた。


『マスター、リリ様、ネル様の避難は完了しました。私はその後はどうしましょうか?』


『わかった、ありがとう。本当は女子寮に行ってコーデリアさんとシンシアさんの様子を見て欲しいけど、まずは先にセシリアの使える全ての武装の使用を許可するから、自宅地下にある試作武器も含めた全ての武器を使用可能状態にして欲しい。あとは敵の正確な規模も知りたいから調べておいて。あと、その時に魔獣の姿も確認したいから、視界を共有してね』


コーデリアさんとシンシアさんの正確な退避場所などを知りたいけど、緊急事態時はチェスガン学園に避難するのではと予想するが、もしかしたら学園以外にも避難場所が存在するかもしれないからな……こんなことなら事前に避難場所を調べておくんだった。


あと、マーティナさんは治療施設からはまだ退院していないから、治療施設で保護されるとして、ブルーノは騎士団か、チェスガン学園かのどちらかだな。


『わかりました。試作武器等は数回の使用で壊れると思いますが、壊れた試作武器の残骸は持ち帰りますか?』


『いや、武器が壊れたら内部の【虹結晶】だけ回収して、あとは簡単に隠しておいてくれればいいよ。 全てが終わった後に回収をする余裕があればお願いね。』


『分かりました。優先で使用する試作武器は【魔導散弾銃】と【魔導砲】とかで良いでしょうか?』


『そうだね。どちらも【魔導スライム】内の【虹結晶】に蓄えてる力を使うから回数には気を付けてね。あとは近接用の【魔導具】と……封印している【魔導具】も用意しておいて、それとセシリアの場合は強化ポーションや食事等の強化が影響しないからアクセサリーで強化しておいて。』


試作武器は自分のアイデアの赴くままに作った超高火力のロマン武器が多く、ほとんどが数回もしくは1回の使用で武器が耐えきれずに崩壊してしまう可能性のあるもので、現状では実用性はない威力だったから、試作武器を作った段階で封印もしくは、保留状態で放置していた。


まあ、使い道の無いロマン武器は作りたい衝動には駆られるが、一度作れば満足するので、他に実用性のある【魔導具】を作った方が良いと考えていたけど、まさか使うかもしれない場面があるとは……


『わかりました、マスター。また連絡をします。』




 ☆



 自分とお父さんが食堂前に到着すると夜なのに馬車の準備が既にされており、いつでも出れる状態になっていた。


「夜なのに馬車の準備が出来てるなんて凄いね。」


「ある程度のレベルの冒険者になれば、緊急で呼ばれることもかなりあるからすぐに出れるように用意してもらっているんだよ。」


「そんなもんなんだ……あれ? なんでエレナとブラットがここにいるの?」


 食堂の中からエレナとブラットが出てきた。


しかも、2人の服装は学園では見たことないほどの重装備で、ブラットはお父さんみたいに何本もの剣を持っていた。


「おう、俺もちょうどオフクロの店で食べてたんだよ。レイのことだから、チェスガンに行くんだろ?」


「えっ、確かに行くけど……」


「私達もレイについて行く事にしたんにゃよ。」


「よくエリーさんとガインさんが行くのを許したね」


「ん? ああ、俺のところはレイの家みたいにその辺は厳しくないからな、レイがチェスガンに行くかもしれないって言ったら、アッサリとオッケーしてくれたぜ」


「私のところも似たような感じかにゃ」


「ああ、そうだ。オヤジが念のためレイにも武器を渡しておけって言われて、魔剣を預かってるぞ」


自分はブラットから、黒い鞘に入った黄金の剣を受け取る。


鑑定してみるてと【光雷の魔剣】と出ていた。


「ほう、【光雷の魔剣】か……レイ、その魔剣は雷属性に特化した魔剣なんだが、間違っても雷属性付与はするなよ?」


「……雷属性付与をしたら?」


「さっきの雷属性付与を見た限りだと、不安定な雷属性がレイにも反動として跳ね返るかもしれない。最悪、死ぬからな」


「……了解。雷属性付与はしないようにするよ」


「あと、お母さんがモロットはガインさんと一緒に守るから安心しろって言っていたにゃ」


「もしモロットが襲われてもエリーさんとガインさんが町を守ってくれるから安心だな。」


「そうね、2人がいれば安心してフローラを残していけるわ」


 お母さんの話ではエリーさんとガインさんは、お父さん達よりも強いらしく、周辺国の中では魔王様を除けば最強に近いらしい……。


「お兄様! どうかご無事で!」


 フローラが心配そうな表情で抱きついてきたので、頭を優しく撫でる。


「ありがとう、フローラ。ちゃんと無事にに戻ってくるよ。」



 ☆



 自分たちは馬車で移動しながら、セシリアからの追加情報も含めてみんなに話していた。


 敵の数はざっと600匹位で、二足歩行する新種の魔獣で犬っぽい顔らしい。


 セシリアからの視界で自分が見たら、前世のゲームや小説などに出てくるコボルトみたいなやつだった。


 この世界にはゴブリンやオークなどは居ないはずだったんだが、何でチェスガン周辺にいるんだ……?。


 そして魔獣全員が何かしらの武装をしているらしい。武装と言っても石槍みたいな手作りから、鉄製の武器までバラバラみたいだった。


 その情報にみんなが驚いた。


 普通、魔獣は武器を使わない。

 だから魔獣の爪や牙より硬い防具で防げば魔獣の対処は楽だが、戦争の無いこの世界では武器を装備したもの同士の集団戦は騎士団では訓練していないので、どこまで実践で対応出来るかは不明だった。


「話を聞く限りは新種の魔獣はヤバいな……チェスガンの騎士団が全部で何人位か分からないが、いても50名だろう。街に入られなければ良いが、一度でも街に侵入されたら厳しいな。」


「学園には先生達もいるよ?」


「教師になると戦わなくなるから前衛職はあまり戦力にならない。魔法師は強いかもしれないが、集団戦には慣れていないだろうし、厳しいだろうな。」


「……ちなみにお父さんたちが到着したら勝てる?」


「魔獣を見ないと解らないが、街の外なら数分で殲滅出来ると思うぞ。しかし、街に入られると討伐するのにそれなりに時間がかかるから人数がもっと欲しいな。」


「レオンは広範囲殲滅が得意だけど、拡散している敵を殲滅するには不向きなのよね。」


「お母さんは?」


「私は回復魔法師よ?」


 これ以上聞いてはいけないオーラが出ているが、お母さんの荷物に2本のゴツいメイスがあるのを知っている……。




 そして残念な事にセシリアから、自分達が到着する前に魔獣達が攻めてきたという報告を受けた。

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