第124話 冬休み 2年生 妹の祝福

 今年の冬休みは妹であるフローラが誕生祝いで祝福を貰う年なので家族全員が準備で忙しかった。


 そして、自分の担当はひとりで集会所の飾り付けをすることになっていた。


 自分の町では誕生祝いの準備をするのは基本的にお祝いされる家族がやる事になっており、今年は2つの家族だけが誕生祝いの年なので、自分の家族ともうひとつの家族だけで、準備をしなくてはいけないので、割と大変だった……。


まあ、飾り付けや提供する料理、その他の細かい演出や準備のクオリティはお祝いされる家族次第なので、家族が演出などにこだわらなければ忙しくないし、こだわればそれだけ忙しくなるのだ。


 ちなみに、提供する料理は、お母さんに料理など任せられないので論外だし、自分が作ってもいろいろとクオリティが高過ぎで問題が起こりそうなので、料理はシーラさんの食堂に依頼した。


 今年にお祝いされる、もう1つの家族は今回の準備で顔は知っていたが初めて話をしていた。


 小さい町だが、それでも話したこと無い人はかなり居るのだ。


 集会所に使う飾りは、自分が気合いを入れて準備をしたものであり、ひとりで飾り付けしている。


この飾り付け担当はかなり前からフローラの為に、自分がやりたいと志願していて、チェスガンの自宅にてかなり前から作成していた。


 その演出とは、色とりどりのチューリップ型【魔導具】でフローラの魔力に反応するとつぼみが開き、花が咲く演出をしている。

 これは実際の花ではなく魔素を花型に固定するもので、クズ魔石が切れたら消える。


 この演出はエレナやコーデリアさん、シンシアさんに、祝われるならどんな演出が良い?と聞いたら、いろいろ願望や意見を教えてくれたので、それを総合して作ったので、かなりの自信作であった。


 ちなみに祝福を受ける順番はフローラが先になるので、後から祝福を受ける子には開花した後の光っているだけのチューリップ群を見て貰う事になるのだが、もう1人の祝福を受ける子は、人族のあまりそういう演出には興味の無いグロスくんという名の男の子らしい。


これがフローラと同じ女の子ならば差別してはいけないので、演出方法を変えなくてはいけないが、その心配は無いみたいなので、安心している。


 それにしても、もう1人の子はフローラと同じ歳なので、一緒にいる機会は多かったとフローラは言っているが、あまり自分の記憶に無い子なんだよな。



 ☆



 誕生祝い当日の朝、実家の居間にて……


 家族でフローラを祝福していた。


「「フローラ、おめでとう!」」


「ありがとう。私も遂にお兄様と一緒の職種持ちになれます……。」


「僕と一緒というか、みんなと一緒だね」


「いえ! お兄様と一緒なのが重要なのです!」


「……そ、そうなんだ」


 最近、フローラのブラコンがひどい気がするが、何でだ……?


「フローラならどんな職でも活躍出来そうだよね。」


「ありがとうございます。お兄様の役に立てるように頑張ります!」


「いや、僕の役にとか考えなくて良いからね?」


「そんな! お兄様は私が嫌いになったのですか!?」


「嫌いな訳ないじゃないか。フローラは大切な妹だよ?」


 それを聞いたフローラは満面の笑顔になる。


「ありがとうございます!」


 フローラは何だか自分に依存し過ぎている気がするけど、大丈夫かな?


 この世界は妹との結婚が可能と聞いてから、フローラと結婚する気は全く無い自分としてはいろいろと不安で仕方ない。


 両親に助けて欲しいアピールの視線をチラッと向けると、両親はソッと視線を逸らされた。


(フローラの件に関して両親は助けてくれなそうだな……。)


「……フローラが何の職種になるか楽しみだね。」


「はい! ありがとうございます、お兄様!」



 ☆


 自分達は集会所内でフローラとグロスくんを待っていた。


 そして、先にフローラが集会所に入室してきた。


 よし、今が【魔導具】を起動させるタイミングだな……自分は設置してある全【魔導具】に【魔導】を流し込む。


【魔導具】を起動させるとフローラの周りから、色とりどりのチューリップがウェーブをしながら咲き誇っていった。


 フローラは感動の余りか、泣き出した。


 フローラの様子を見て、成功を確信してニヤリとすると横からお父さんに頭を軽く叩かれる。


「お父さん、痛いよ……」


お父さんの身体能力は激しく高いので、軽く叩いてもクラスメイトのげんこつ並に痛い。


「お前は何でもやりすぎだ……」


「やり過ぎって、誰にも迷惑はかけてないよ?」


 この【魔導具】は一切害の無い、光を発光させるだけの奴だから、お父さんに叩かれる様な事は無いはず……だよな?


「いや、悪いことはしてないが……お前が将来、フローラから逃げられなくても知らないぞ?」


「えっ……。」


逃げられないって……


「今でもフローラはお前に過剰な……」


 フローラは泣きながら認証の指輪を貰ってから自分に抱きついてきた。


「お兄様! ありがとうございます! 最高の思い出になりました!」


「う、うん。おめでとう、フローラ」


 ……やり過ぎなのか?



 続いてグロスくんも指輪を貰っていた。


 グロスくんは虎獣人族でフサフサした茶色い髪と濃いめの茶色い瞳をしていて、なんか一言で言うと生意気な感じがする……。


 幼なじみなのに、フローラが余り好きでないのが分かるな。




 ☆



フローラの祝福が終わり、自分達が片付けを終えて帰ると、先に帰っていたフローラが出迎えてくれた。


「お兄様! 私の職種は【歌姫】になりました!」


「へぇ~、歌関係の職種もあるんだね。初めて聞いたよ。フローラのイメージにぴったりな感じだね」


前世でフローラみたいな超美少女が歌手として、上手く歌を歌えたら、凄い人気になりそうな気がする。


というか、フローラの周りにキラキラと薄く光っているんだけど……これは【職種】効果なのか?


「【歌姫】という【職種】は聞いたこと無いけど、歌系の【職種】は支援職に入ることが多いかしらね。私の知っている歌系の【職種】は歌うことで、周りの人を回復したり、身体能力を向上させたり、魅力したり、対象を沈静化させるみたいに戦闘でも役に立つわ。」


 お母さんがフローラの頭を撫でながら説明してくれた。


「それは支援という意味では万能な感じするね。」


「これでお兄様のサポートが出来ますね!」


「ん? ああ、何かあった時はサポートを頼むね」


「はい!」


聞いている感じだと、音に【魔力】を乗せることにより、何かしらの効果を発揮するみたいだけど、他人の身体能力などを上げるスキルってあまり見ないから、結構レアなんじゃないだろうか?


「ただ、歌わないとダメだから長時間歌うのは難しいわ。」


「そっか、喉の管理が大切だね。」


 そしたら、夜にでもフローラ専用の、喉が自然治癒する様な【魔道具】を作ってプレゼントしようかな。



 そして次の日に、フローラへネックレスをプレゼントする。


【美声のネックレス】 喉の自然治癒効果、歌に魅了効果付与。



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