第123話 冬休み 2年生 帰省

 アメリア先輩の決闘騒ぎから数日が経過……



 自分はセシリアの強化案や【虹結晶】の量産、新しい武器の開発、セシリアショップに卸すお菓子の作成に、学園での勉強、【魔導操作】と身体能力向上のトレーニングなどをやっていた。


「あとはアレをやりたいな……」


「マスター?」


「ああ、分かっているよ。これ以上はやることを増やさないから」


 元社畜的にはまだ働ける気はするけど、子供の身体には働き過ぎかな?と思うのと、セシリアから休んで欲しいと頼まれたので、素直に休む事にしている。


「一般的な学生というか、働いている大人と比較してもマスターは働き過ぎなんですからね?」


「それは分かっているんだけど、何故かあまり疲労感も無いし、眠くもならないんだよね」


精神的に疲れることはあっても、筋肉痛になるほどのハードなトレーニングをすれば別にすれば、何故か肉体的な疲労感はあまり感じなくなってきていた。


この社畜仕様の肉体を前世で欲しがった……いや、いらないか。


今、いろんなことをやっているのは、自分の趣味の延長線上のことだから良いけど、仕事となると睡眠を削ってまで働きたいとは思えなかった。





「みんな大人気だね……」


「そうですね……」


「……」


ちょっと疲れ気味のコーデリアさんと無言のシンシアさんがクラスメイトの現状を物語っていた。


 うちのクラスで何があったかと言うと……文化祭が終わってから、2年Aクラスが学園内で話題の中心になり、休み時間や下校時間になると、クラス前では学園生により、かなり騒がれた。


 騒がれている原因は文化祭のメイドカフェでブルーちゃんを探す人が半分位で……あとは闘技、魔技、軽技で自分達2年生なのにやり過ぎたからだった……。


ブラットやエレナ、コーデリアさんやシンシアさんには、毎日ラブレターを持ってくる学生が沢山来ていたのだが、4人とも告白を受ける気は全く無いらしいので、毎回断りを伝えるので精神的に疲れているみたいだった。


 あと、ブラットとエレナには学園の外で大人の人達が待ちかまえていて、チェスガン学園を卒業後にうちの学校に入学しないかとか、成人後の就職先にどうですか?みたいな感じで勧誘が多数来ていた。


 それはとても良い事なのだが……。



 何故か自分には一件も勧誘やラブレターが無かった……。



 ラブレターを大量に欲しいとか、就職先を選びたいとか、贅沢は言わない……せめて一件の勧誘、一通のラブレターを願っても良いはずだ。


 ちなみに自分の顔はイケメンではないが、イケメンなお父さん似と言われたりするので、決して見た目は悪くはないはずだ……。


 もしかしたら自分の知らない所で自分の活躍を阻む闇の権力が……なんて事はないと思うけど、謎だ。


 魔技の部ではやらかしてしまった位には成績が良かったはずだし。


 理由が何故か知りたくなったから、エレナに聞いてみた。


 なんか最近、エレナは何でも知っている様な気がする……。


「ねえ、エレナに聞きたいんだけど……」


「レイは知らない方がいいにゃ。」


「え? まだ質問すらしてないよ?」


「言いたいことはわかるにゃ、多分しばらくしたら解るかもしれないにゃけど、今は知らなくて良いにゃよ。」


「……。」


 エレナは占い師とかか?


 エレナにそう言われてしまうと、なんかこれ以上聞いてはいけない気がしてきたので話題を変えた。


「エレナは就職先とか考えてるの?」


「まだ決めてないにゃ。レイはどうするにゃ?」


「僕もまだ決めてないんだよね。でも世界を見て廻りたいし、いろいろな物作るのも捨てがたいね。」


「13歳までに決めればいいにゃ。」


「確かにそうだね。」


 高学年を卒業するのが13歳なので、それまでに何をするのかを決めれば良いのだ。


出来ればエレナとブラットとはずっと一緒に、このままの関係が続いたら楽しいだろうなとは考えているから、そうなると冒険者だろうか?


 そうしたら、高学年の進路も冒険者育成に力を入れている学校が良いのだろうか?





 文化祭が終わってから2週間が経過したのだが、クラスメイトのマーティナさんが未だに授業に復帰出来ないでいた。


自分もお見舞いに行きたいなと思ったけど、マーティナさんはチェスガンにある大きめな治療施設に移動しており、そこでは家族以外の面会は禁止されていた。


「マーティナさんってそんなに酷い状態なのかな?」


闘技の部で、ブルーノと戦ったのが原因だろうけど、あの時は怪我をしたというよりは、マーティナさんの体調が崩れたのがきっかけだったから、すぐに復帰出来ると思っていたのだが……


「無事らしいにゃよ。ただ、いろいろと調べないといけないらしいにゃ」


「そうなんだ。それならとりあえずは安心なのかな?」


「学園に復帰するのは当分先になるかもしれないらしいにゃ」



 ☆



 今年もいろいろな事があったが、無事に2年生の授業が終わり、自分、ブラット、エレナは冬休みに入ったので実家に戻る馬車に乗っていた。


 Aクラスで今回帰らないのは、コーデリアさん、シンシアさん、それとブルーノとマーティナさんだ。


コーデリアさんとシンシアさんが帰らないのはいつものことだが、ブルーノが姉と共に王都へ帰らないでチェスガンに残るのは珍しかったが、多分、マーティナさんが未だに治療施設に入院しているのが理由だと思われた。


ブルーノは文化祭以降、マーティナさんの件に責任を感じているからかは分からないけど、学園が終わると直ぐに女性騎士団の元に行き、騎士団員と一緒にハードな訓練をしているらしい。


自分はほとんど修練所には行かなくなっていたからブルーノが戦っているところは見ていないが、ブラットの話ではかなり強くなっているらしい。



 あとセシリアは当然の様に別行動で、セシリアショップの運営を任せていた。


 クラスメイトにもそうだが、未だにセシリアの正体は誰にも話していないので、セシリア本人に自分の護衛も含めて、一緒に行動したがっていたけど、いきなり両親に女性型アンドロイドを作りましたとは言えなかった。


 しかも、セシリアは大人の女性型であるから、さらに紹介し辛かった……あと妹のフローラに軽蔑されないかも不安材料のひとつだった。

 やっぱり妹には嫌われたくないからな。



「そう言えば、ブラットは今年の成績表は良かったの?」


今回はヤバそうな雰囲気を出していないのが不思議だったから、成績表について聞いてみた。


「ああ、今年はギリギリ怒られないと思うぜ。」


「それでもギリギリなんだね……。」


自分的にはギリギリでもブラットは怒られそうな気がしたが、今更言っても仕方ないので、言わないことにした。


「レイはどうだったんだ?」


「ああ、それなんだけど……。」


「また担任のコメント欄に何か悪いことが書かれていたのか……?」


「いや、学力の成績はもちろん、運動の成績もまずまず良かったし、担任のコメント欄も悪くなかったよ……うーん、悪くないけどさ。担任のコメント欄が『よくやっています。』しか書かれてないのが気になってね……。」


「なんだ、俺と同じ事を書かれてるじゃないか。『よくやっています』の何が気になるんだ?」


「ちなみにクライブ、コーデリアさん、シンシアさん、ブルーノ、バリー、クライブにも聞いたけど、みんな書かれている内容は同じだった。」


ブラットとアランに聞かなかったのは……何となくである。


「……最近のロナルド先生のやる気の無さは大丈夫か?」


「そうなんだよね、特に文化祭以降のロナルド先生って、目に見えてやる気が無くなってるよね」


よくあれでクビにならないものだなと思ってしまうが、よく考えたら自分達が学園側に言わない限りはロナルド先生のやる気は分からないんだよな。


「文化祭の時、カリーヌ先生とデートしていたのが職員会議で問題になったから、立場が悪くなってヤバいらしいにゃ。」


「あの2人を付き合わせたのは失敗だったかもね。 あそこまでロナルド先生が駄目な人になるのは想定外だよ。」


「確かにな。」


 ロナルド先生とカリーヌ先生の将来がとても不安だった……。




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