第120話 ロナルド①
【ロナルド視点】
文化祭の数日前。
俺は2年生の職場見学から帰っている途中に、付き合い始めたばかりのカリーヌ先生と楽しく話をしていた。
カリーヌ先生のことはかなり前から好きで、まさか付き合える様になるとは思っていなかったから、今が人生のなかで一番幸せだと思っている。
ただ、ちょっと最近のストレスは、学園の行事や会議、授業やテスト、教師はいろいろとやらないといけないことが多すぎる事だろうか……。
まあ、そこは俺の要領の良さで、省いても問題はなさそうな無駄な仕事は、やらずにカリーヌ先生と遊ぶ時間を捻出していた。
「ロナルド先生、次の学園行事は文化祭があって大変ですね。まあ、今年の私のクラスは準備が忙しいだけで、当日はそこまで忙しくないもので良かったです」
「そうですか? 俺達、教師は見守ってる事ばかりだからそんな忙しくはならないはずですけどね。」
最近、カリーヌ先生が疲れているのは、文化祭が理由だったのか。
しかし、俺は文化祭でやった事なんて、何をやるかのアドバイスと、レイ達が暴走しないようにたまに見て回る位だったから、準備が忙しいって印象にはならなかった。
「そうでしたっけ? 私はなんか日々が追われる様に忙しい印象ですけど……先生によって忙しさが違うんですかね?」
「そうかもしれませんね」
あっ、もしかして、俺が効率的に行動しているから、忙しくないだけで、普通の人は忙しいってことか?
しかし、それをカリーヌ先生に話してしまうと、嫌みになってしまうので、黙っておこう。
「それでしたら文化祭の当日に余裕あれば、一緒に展示物を見に行きましょうよ~!」
「おお! 是非行きたいですね!」
俺も当日は暇だろうし、カリーヌ先生と一緒に見て回るのはナイスアイデアだと思う。
☆
俺のクラスはメイドカフェ?に決まっているのは知っていたが、どうするかをうっかり聞いていなかったので、もうすぐ文化祭だが、最終確認ということで聞くことにした。
本来は料理を作る場合は先生である俺の仕事なんだが、話を聞く限りは、レイとエレナが主体になり料理は温めるだけになったみたいだ。
温めるだけにならば、俺は参加しなくても大丈夫かな?と思いながら途中の進み具合をチラッと見たが予想以上の完成度を見せていた……。
あいつらはやはりいつも担当するような低学年ではないなと実感する。
それなら自主性に任せようと思った。
俺もカリーヌ先生と展示物を見て廻れるからな。
決してサボりたいわけではない。
☆
「ロナルド先生のクラスも担任は自由になれそうですか?」
「ああ、俺のクラスは大丈夫そうだな。」
「私のクラスも簡単な展示にしたので大丈夫です。 途中で少し様子を見る位です。ロナルド先生のクラスは優秀な生徒が多くて羨ましいです!」
「問題も多いけどな……。」
「それはどこも一緒ですよ~。今度、生徒に勉強を教えるコツでも教えてくださいね。」
「そ、そうか? 俺ならいつでも空いてるぞ。」
☆
文化祭初日。
「よし、お前達は低学年の中では一番頑張ったと俺は思っているが、なんでも予定通りに行かない時がある。」
「そんな時はレイに相談しろ!」
(俺は最初から見ていたが、最後まで生徒だけで乗り切るのも勉強だ。)
「いや、ロナルド先生……そこは先生にじゃないんですか?」
(相変わらず、レイは厳しい指摘をする……。)
「俺はカリー、いや……警備の見回りで忙しいから、まずはレイに相談して、それでもダメなら俺に言えって言おうとしたんだ……。」
(おっと、本音の半分が洩れてしまいそうだったな。)
☆
文化祭が終わってみたらブラット、エレナ、レイの3名が競技で優勝していた。
特にディアナとアメリアに勝つのは予想外だった。
本来ならクラスでお祝いしたいところだが……しかし、俺は今、ピンチになっていた。
「ロナルド先生! 飲食の展示の場合は、先生であるロナルド先生が調理をする決まりでしょう! 情報元は言えませんが、当日は全く関与しなかったみたいですね?」
「いや、料理は温めるだけのものだけだったから……。」
「あのルールは、衛生で問題が起きた時の責任を生徒ではなく、先生が被る為のものでしょう! 何か事故があったら生徒の人生が狂うかもしれないんですよ!」
「い、いや、うちの生徒に優秀なのがいて、つい……。」
「ロナルド先生の生徒は7歳でしょう! 競技で優秀なのは解りますが、衛生の知識なんか勉強してないのだから足りないでしょう!」
「俺より衛生に詳しい生徒が……」
「それは、ロナルド先生の知識不足だからではないんですか?」
「……。」
何を言ってもダメな気がしてきたな。
「あと、2年生Aクラスの魔技の部に関して、物言いが入ってます。」
「え?」
「ロナルド先生のレイくんが出した得点が機械不良だったんじゃないかと言われています。」
「いや、レイなら……。」
「魔法の天才と言われる4年生のアメリアですら2520点なんですよ? なんですか、20250点って! ほぼ10倍ですよ!」
(それに関しては、俺に言われてもわからないよ……。)
そう思っていると、別の先生が手を挙げた。
「発言しても良いですか?」
「クレストン先生どうぞ。」
「まず、機械不良は無いです。 そしてあの点数も間違いないはずです。 魔技の担任だった先生達なら解るはずです。」
そして、クレストン先生は担任教師達を見ると皆頷いていた。
「失礼かもしれないが、生徒のアメリアさんと比べる次元に、彼は居ない! それほどまでに彼の【魔力操作】は神懸かっている。」
「そんなになんですか?」
「あなたは、1つの的へ1秒以内に5発の【ボール】を当てられますか? しかも1発50ダメージです。」
「いや、それが出来ないから機械不良だと……。」
「彼の使った的は半分が消し飛んでいます。 あの的を吹き飛ばすには200ダメージが必要だと業者から説明されています。 後で的の残骸を提出しましょう。」
「クレストン先生がそこまで生徒を褒めるなんて珍しいですね?」
「彼は既に私を超えている。」
「……。」
その発言に皆が黙ってしまった。
教師達の中で一番【魔力操作】に優れているクレストン先生を超えているという事は、学園で一番凄いことになる。
「彼の実力に関しては隠蔽すべきです。 魔技の問い合わせもずっと調査中と言えば、いつか諦めるはずだ。」
そして、最終的には俺の問題だけが残り、減給された……。
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