第118話 文化祭(裏)② 女性騎士団
【クリエラ視点】
文化祭3日目 闘技の部 会場。
私は チェスガンに拠点がある女性騎士団の団長をしているのだが、今日は数年前に入団したアリエルの弟とその同級生が出場しているというから、見に来ていた。
アリエルはちょっとやる気がない様に見えて、実は影で騎士団、サポートしようと頑張っていて、団員の皆から好かれている。
そんなアリエルがどうしても、弟とその同級生を見て欲しいと言われたら、断るわけにはいかないなと思った。
「ブルーノを見るのも3日振りだから、ブルーノエネルギーをチャージしておかなくちゃ~」
「……ブルーノエネルギー?」
アリエルは有能なのだが……弱点というか、欠点は重度のブラコンということだった。
そして、たまに訳の分からないこと口走ることか……
「はい、私はブルーノエネルギーが枯渇しちゃうと倒れちゃうんですよ~」
「ほう、それは大変だな……」
「そうなんですよ~」
「今日は空いている時間が午前中までだから、4年の試合は見ていけないか……」
4年生のディアナくんも見たいけど、明日の決勝に出るだろうから、今日は2年生の観戦で良いだろう。
今日は午後から騎士団とチェスガンの管轄貴族達との魔獣対策会議があるから、チェスガン学園に居られるのは午前中までだった。
「最近、魔獣の活動範囲が変わってきたから、防衛計画の見直しをするっというアレですか~」
「ああ、そうだ。私はあまり会議みたいなのは好きではないのだがな……」
「会議が好きなのはナターシャさん位ですよ~」
うちの騎士団を事務面で支えているのはナターシャだからな……それ以外は、私も含めて身体を動かすしか能がない戦闘集団なのだ。
「そろそろ2年生の闘技が始まるな……」
1年生の試合は別会場らしく、両方を見ることは出来ないらしい。
「クリエラ様、私の弟のブルーノは2戦目です~。残念ながら同級生のマーティナちゃんとの試合です~。」
「マーティナもなかなか将来楽しみな人材だったな。」
ブルーノとマーティナはアリエルの紹介もあって、訓練に参加しているが、特にマーティナの成長が凄いと感心しているが、たまに身体を壊しているみたいだから、かなり無理をしているのではと、心配もしていた。
「そうですね~。そろそろ1戦目ですよ~。」
「ん? あの赤髪の子は2年生にしてはでかくないか? 体格が私よりシッカリしているぞ?」
あれで本当に7歳か?
アリエルが試合表を確認する。
「あの子はブラットくんですね、ブルーノ達のクラスメイトで、【職種】は【グラディエーター】ですね~。【グラディエーター】って、どこかで聞いたことのある【職種】ですけど、どこだったかなぁ~?」
「なっ! 【グラディエーター】だと……。」
まさか、こんな場所で【グラディエーター】の少年と出会うとは……
「凄いんですか~?」
「ああ、騎士や剣士など我々、前衛職の天敵の様な職種だな。コロシアムの現チャンピオンは【グラディエーター】で、コロシアム史上最強と言われる位だ。しかし、彼は体格的にドワーフ族だろう……種族的にスピードが出ないのが残念だかな……。」
「ブラットくんは人族とドワーフ族のハーフみたいですよ?」
「ハーフであの体格……かなり強いかもな。」
そう考えてる内に最初の試合があっという間に終わっていた……。
「なっ! 一撃だと……あれは【浸透打】か?」
「え! 【浸透打】は私でも12歳でやっと覚えたのに~。しかも、せっかく覚えたのに、使うには溜めが必要だったりで、実践向きじゃないって言われてるのに?」
「確かに、あの歳であそこまでスムーズに使えるのは驚異的だな……」
私ですら盾などで防御しながらでないと、実戦で当てられる気はしないのに、あの少年は天才という部類かもしれないな……
☆
次のブルーノとマーティナの戦いが始まったのだが、途中までは予想通り、ブルーノの鉄壁の防御に、マーティナは苦戦をしており、そろそろ終わりかなと思った辺りで、マーティナの動きが各段に上がっていた。
「あれはスキルなのか? もしや身体強化であそこまで?」
いや、身体強化が出来たとしても、マーティナの【魔力操作】では、あそこまでの劇的な変化にはならないはずだ……
理由は分からないが、凄いとしか言いようのないスピードだった。
流石にパワーまでは変化していないのか、ブルーノの防御を押し破るまでいけないのが非常に残念だが、あのスピードを鍛えれば……なっ!?
「何が起きたのだ? マーティナが突然倒れたぞ?」
ブルーノの攻撃により、マーティナが倒されたのか、スキルの反動かは分からないが、マーティナは突然倒れ、試合はそこでブルーノの勝ちになった。
「マーティナは大丈夫か心配だな……」
「私があとで様子を見てきて報告します~」
「ああ、よろしくな……しかし、やはりブルーノは守りに特化していて優秀だな、あの守りは騎士に向いているから、もしブルーノが将来、騎士団入りたいのなら、私が王都の騎士団に紹介状を書こう。」
「ありがとうございます~! 本人も喜ぶと思います~。」
☆
第2試合
ブラットとブルーノ。
「攻めと守りの戦いだな。どちらが勝つかな……。」
「ブラットって名前で思い出しましたけど、ブルーノが模擬戦で一度も勝てないクラスメイトの中に、ブラットって名前があったのを思い出しました~。」
「そうなのか? まあ1人位は勝てないのは居るだろう。」
「いえ、ブルーノは3人に負け越してるみたいです~。 もう1人が【魔法剣士】の男の子で一度会った事ありますけど見た目は後衛職みたいな感じでした、あとのもう1人は【ハンター】の子みたいです~。」
「あのブルーノが実力で勝てない子が3人もいるのか? しかも【魔法剣士】と【ハンター】?」
「そうみたいです~。しかも残りの2人には絶対に勝てないと言ってたので、ブラットくんよりも強いと思いますよ?」
【グラディエーター】の少年よりも強い【魔法剣士】と【ハンター】?
どういう戦いをするのか全く想像出来ないな……
「もしかして最近の7歳は、私の想像以上に強いのか?」
ブルーノも才能溢れる少年だと思っていたが、相手のブラットは確かに将来恐ろしく強くなるだろう数十年に1人クラスの天才だと感じたが、それ以上の天才があと2人もいるのか?
「そろそろ始まりますね~」
「ああ、今は2人の試合に集中しよう。」
もしかしたら、1戦目みたいにあっという間に終わってしまうかもしれないからな……
そしてブルーノとブラットとの試合が始まった。
「ブラットくんが開始と共に走り出したな」
開始早々、ブラットは走り出し、盾を構えているブルーノをお構いなしに剣で斬りかかる。
ここから反撃か……と思ったら、ブルーノが吹き飛んでいた。
剣を打ちつけただけで、武装し盾を構えた少年を吹き飛ばすとは、どんだけの力なのか……
ブラットは続いて起き上がったブルーノの盾上から、怒涛の攻めをしている。
「うわ~。私でもブルーノは吹き飛ばした事が無いのに。ブラットくんはパワーが凄いな~。」
「既に私以上にパワーがあるかもしれないな……。」
「だけど、ブラットくんは攻撃が単調だし、そろそろブルーノも目が慣れて来るから、これからはブルーノの反撃タイムかな~。」
「いや、ブラットは何か狙っているな……。」
ブラットが武器を投げて、防いだ隙にブルーノを絞めて落としてしまう。
「ああいう技に出るのは予想外だが、あれが【グラディエーター】の強さだな。適性の幅が広く、技が多彩過ぎて翻弄されてしまうのだ。」
「確かに予測が出来ないと普段以上に集中力を使うから厳しいですね~。」
☆
その後の戦いも終わり、アランとヒルダの試合も終わった。
最後まで女性が残ったのは嬉しい限りだ。
「アランとヒルダも強いな……。二人は騎士団向きではないのが残念だが、冒険者なら活躍するだろう。」
「ヒルダちゃんの、あのフィールドはやっかいそうですよね~。」
「そうだな。室内での護衛などで使えば強いかもしれない。」
「ブラットくんとヒルダちゃんはどっちが強いかな~?」
「たぶん、ブラットが勝つな、彼はまだ本気を出してないだろう。」
「え! あの強さで本気じゃないんですか?」
「動きをみる限り、そんな気がするな。」
☆
ブラットとヒルダの試合も一方的な展開だった。
まるで全ての攻撃を見切ったかの様に回避していた。
あの歳で何をしたらあんな見切りが出来るのか……。
「もう少し接戦になると思ったが、格上の戦いだったな。」
「あの頭突きは痛そうです~。」
「頭突き等は闘技の試合ならではだな。」
「たぶん、ブラットくんは私より強いかも~?。」
「うちの騎士団内でも油断すれば負けそうなのは結構いるぞ。」
「あれで7歳かぁ~。学園最強と呼ばれている、ディアナちゃんも強いんですか~?」
「ディアナの強さも別格だな。 しかも成人したらさらに強くなるはずだ。」
「職種の【ドラグナー】ですか~? 私はまだ成人した竜人族を見たことがないです~。」
「竜人族は生活圏が違うからな。 私もイーストエンドではほとんど見たこと無いぞ」
「団長は成人した竜人族と戦った事はあるのですか?」
「いや、私レベルでは話にならんよ……私が以前に見た成人した【ドラグナー】は空も飛ぶし、ブレスも吐いていたな。そして一部の者は更に半竜化するらしい。」
「それ、もう、ほとんど竜ですね~。」
☆
次の日、決勝は予想通り、ブラットとディアナが勝ち残った。
「ディアナは去年よりかなり強くなっていたな。 将来が恐ろしいよ。」
「流石にブラットくんも厳しいかな~?」
「将来は分からないが、今年はまだ難しいだろうな……成長期の年齢差は大きいからな。」
試合が始まり、ブラットとディアナが打ち合いを始める。
「あのハルバートを両手で扱うなんて恐ろしいパワーだな。しかも、あのブラットに打ち勝ってるな。」
「互角に見えますよ?」
「ディアナはハルバートによる【武器破壊】をやろうとしているな。流石にブラットもディアナ相手に素手では間合いが厳しいだろう。」
「ハルバートでそんな事出来るんですか? 普通、鉄槌などでやるんじゃ~?」
「去年やっていたからな、【武器破壊】と言うスキルがあるみたいだ。」
そしてブラットの武器が折れてしまった。
「残念だが、これで終わりだろうな……。」
「惜しかったですね~。」
そう思っていたらディアナの足下から多種多様な武器が出現して、ディアナの脚を貫いた。
「な、なんだと? あれは【武器召喚】か? いや、しかしあれは1種類の武器しか無理なはず……。」
「まさかの大逆転ですね~。」
「……あれは本当に7歳か? いくら何でも強過ぎるぞ?」
そしてクリエラは次の日、魔技の部を見て同じ事を思うのだった。
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