第115話 文化祭 最終日②

 文化祭の最終日、魔技の部が開始された。


 魔技の測定する機械や教師陣の数的に、学年別に同時開催は不可能らしく、まずは1年生から始まるみたいだ。

 なので、自分はコーデリアさん、シンシアさんと1年生を見ながら観戦していた。

 順番の5人前位に、魔技の競技スペースに向かえば良いので、のんびり一年生の部を観戦していた。


 1年生が半分位終わった段階で自分はあることを思った……。


「なんか僕達が1年生だった時のレベルよりアレだね……想像よりもレベルが低いのかな?」


 参加していたほとんどの1年生はやっと属性付与が出来た【ボール】を撃ち出せる程度で、ほとんどが的にすら当たらないので、計測不能になっていたのだ。自分達が1年生の時はもっとレベルが高くなかったかな?


何ならマティアスの方が高い【魔力操作】技術を持っていた気がする。


もしかして、エレナみたいに実力者は闘技の部や軽技の部に参加してるのかな?


 そして、1年生の半分が終わった時点の最高得点が15点だった。


う~ん、競技的に的に当たらないのは……


「レイくん、普通の6歳は本来あれ位のレベルなんですよ? 私達というか、レイくんを含めた一部の生徒が突出した才能を持っていたんですよ。」


「そう、先生の話だと、今年の2年生は異常なレベルでオカシイらしいです。」


「先生のそのオカシイって表現もどうかと思うけど、レベル的にはそうだったんだね。」


「それにシンシアや他のクラスメイトもそうですが、レイくんがいたから、みんな高い【魔力操作】を会得してるのもありますよ」


「ん? 僕がシンシアさん以外に何かした?」


確かにシンシアさんのサポートはしたけど、他のクラスメイトには何か教えたかな?


「いつもレイくんが遊び感覚でやっている様々なゲームは、クラスメイトの刺激になっているんですよ」


「ああ、僕が考案したゲームとかか……」


昼休みの休憩時間は、微妙な空き時間があるので、前世で覚えている外遊びを【魔力】を使ってアレンジしたゲームをたまに開催していたけど、確かにあれで【魔力操作】が多少は向上するかもしれないな。


「今の4年生の時もディアナ先輩とアメリア先輩だけが突出した才能だったらしくて。良い年でも凄い人が1人か2人らしいです。」


「それに比べて私達の学年は、Aクラスの大半や、他のクラスでもヒルダさんみたいなひともいるから。」


「そう考えると、幼なじみ以外もヤバかったんだね。」


 そう話していると歓声が湧く。


「どうしたんだろ?」


「あの子は1年生のエースみたいですよ。えっと、名前はグレンですね……。」


 見ると褐色色の肌に、癖っ毛のある紫色の髪をした魔人族の男の子がいた。

 身長は120位で、何故か表情は自信に満ちていた。


「紫色の髪って事は、あの一年生はレアな重力属性持ちなんだね。」


何か、重力属性ってイメージ的に強そうなんだけど、どうなんだろう?


自分も重力属性の【魔導】が使えれば、試したいことがいくつもあるんだけど、何度かチャレンジしたけど、やっぱりダメだった。

自分が雷属性以外を使うには、セシリアの【魔結晶】みたいな何かが必要なのだろうか?


「確かに余り見かけませんね。」


「おお、あの子【ボール】を10個待機状態にするなんて、凄いね。」


学園に来てから無属性の【ボール】をあそこまで自在に操る人を見たのは初めてだった。


「私達には無属性は見えませんから分かりませんが、エレナからレイくんがいつも30個以上待機状態にしてるのを聞いてるから驚きが薄いですね。」


「僕の場合は魔眼があるから出来るけど、普通の人がグレンくんみたいなことをするのは難しいよ……。」


もっと言うと、自分の場合は【魔眼】と【魔導】があるから可能であって、【魔眼】だけでは難しいかもしれない。


「スタートしたね……おお、凄いな……だけど」


【ボール】を待機状態にしているのものをどんどん的に当てていった。


「そうですね、今までの1年生に比べると圧倒的ですね」


「……でも、威力が微妙かな?」


 属性付与されていないからという理由なのか、分からないけど、威力は微妙だった。


何か勿体ない気がするけど……


 そして、グレンくんは的に6枚も当てられたのだが、点数はやはり威力が弱いからか、ダメージ平均は13の合計468点だった。


「一年生の中ではダントツのトップだね……しかし、これは凄いのかな?」


個人的な感想として、一年生の中では凄いのだけど、自分達2年生の1年生時と比較しても微妙な感じがした。


「的に当てる数が点数に響きますからね。」


「私も、頑張る。」


「次は僕達の出番か。」


 自分ならもっと高威力で全て命中させる自信はあるのだけど……もしかして、本気を出したらまたやり過ぎだと怒られるダメなパターンなのかな?


 移動し始めた時に軽技の部にいるセシリアから連絡が入った。


『マスター、そろそろエレナ様の出番です。』


『ありがとう。タイミングが被らなくて良かったよ。』


『では、視界を送ります。』


【パラレル思考】のおかげで、最近は視界を2つ同時に処理できるようになった。


 見たら丁度エレナがスタートしたところだったが、見えてきたエレナの映像は異様な感じがした……。 


 なんだあのエレナのスピードは……。


 確か、罠とかある筈だよな?


 しかも壁や天井を普通に走ってるし、めちゃくちゃだな。


 あれも全部【野生の勘】で片付く話ではないよな。


 そもそも、身体能力と【野生の勘】は関係ない筈だから、純粋な身体能力か自分の知らないスキルか何かの効果なのか?


『セシリア、エレナのスピードって他の生徒より速いよね?』


『他の方は歩く程度で慎重でしたので、5倍は速いかと思います。』


『5倍か……。』


 エレナは赤い人を余裕で超えるんだな……。


 そして当たりの宝箱だけを開けていき、ゴールしていた。


 点数は480点。

 タイムロス10分で-20点。


 宝箱2個の300点と100点。


『ちなみに今までの点数平均はざっくりと、どのくらい?』


『平均は20点位ですね、1人だけ100点宝箱を開けて運の良かった生徒が110点をとれた人が居ましたが、それ以外は……。』


『……なるほど、幼なじみ達は自重を知らないのか?』


『……それをマスターが言うのですか? きっとお二人はマスターには言われたくないと言うと思いますよ。』


『なんで?』


『いえ、流石マスターです。』


あ、自分達のそろそろ出番だな。


『じゃあ視界終わるよ、ありがとう。』


『マスター、やり過ぎないように』


『え?』


『いえ、頑張って下さい』 


『ありがとう』


 あの感じだとエレナは間違いなく優勝するだろう。


 4年生でも9歳だ……そんな年で普通、エレナみたいなあんなスピードで罠の中を進めないと思う。


「やっぱり2人には負けたくないな……。」


 ふと、エレナの強さを見てそう思った。


「えっ? 突然どうしたんですか?」


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