第114話 文化祭 最終日①
今日で長かった文化祭も最終日になる。
文化祭って準備には時間がかかるけど、開催期間はあっと言う間に過ぎていくイメージだったけど、チェスガン学園の文化祭は、開催期間の方が濃密な気がした。
そして、最終日の今日……開催されるのは魔技の部と軽技の部の同時開催である。
魔技の部の内容は放出攻撃系スキルによる威力と命中率を競うもので、射撃の的が下から10枚ランダムで出現し、その的に放出攻撃系スキルを当てるだけというシンプルな内容だけど、点数の算出方法で複雑になっていた。
的にダメージセンサーが付いており、ダメージ総量×当てた的の数の総合点で競い合う。
的が出現している時間はたったの5秒だけで、放出攻撃系スキルが苦手な人には、スキルを発動させるだけでも5秒以上はかかってしまうし、的を見てからスキル発動の準備をして、的に標準を定めてからスキル発動、的に当てるの作業を5秒以内にやらなくてはいけないというかなり忙しい競技である。
その上、ダメージも上げないといけない。
ぶっちゃけ、この世界の子供は成長が早いとは言え、7歳の子供がやる内容の競技ではない。
ちなみに、10のダメージを的5枚に当てると(10ダメージ×5)×5枚=250点になる。
放出攻撃系スキルのほとんどは、威力や速度を上げると命中率が下がる。
これは魔法のイメージを固定する時、魔力を込めるのに集中力が必要としていて、なので小さな的を狙うにも集中力がいるのである。
威力、速度、命中率を全て上げるのは、右手と左手で別のことをする位の難易度なので、両立が難しい上に、的がモグラ叩きみたいだから、当てるのも大変なのだ。
実際、この競技は大人がやるものらしくて、それなりの高い能力が求められるので、なんで低学年の自分達にやらせてるかよくわからない。
子供の平均ダメージは20らしく。威力に集中したら40~50出れば良いらしい。
50ダメージでも1枚なら50点
10ダメージで3枚当てれば90点になる。
だからみんな命中率重視でいくらしい。
競技の詳細を聞いて思ったことは、自分にすごく有利だと言う事だ。
なにせ、自分は産まれた時から【魔力操作】の訓練をしているから、命中率には自信があるからだ。
そして、軽技の部は疑似迷宮の1層を進むもので、魔獣は出ないがトラップの回避や宝箱を探しながらゴールするものだ。
最初の持ち点が100点で5分経過毎に-10点になり、トラップの種類で減点が変わり即死トラップならー100点、軽微ならー5点などさまざまである。
宝箱も罠タイプがあるので難しい。
宝箱の罠があるか見分ける技術が無ければ触らない方が良かったりする。
しかしトップを目指すなら宝箱は必須らしく、一番の当たりは300点で罠だと最大30分拘束(実質-60点)などがあるらしい。
時間の関係で同時開催になるから、自分は軽技の部は直接見れないが、セシリアに頼み、エレナの活躍時は視界を回して貰うことにしてある。
やはり、幼なじみの活躍は見ておきたいのである。
☆
今はコーデリアさん、シンシアさんと一緒に魔技の部、会場にきていた。
「そういえば最近、レイくんの攻撃スキルを見てない気がしますね。あまり朝トレーニングでもレイくんは私達の攻撃を受け止めてくれるだけで、攻撃スキルを使わないですよね?」
「確かに、レイくんは私達のサポートをしてくれるだけで、レイくん自身は身体能力のトレーニングだけだよね。」
「確かにそうだね、僕の場合は【魔力操作】はひとりで出来るから、場所を選ばないし、最近は【魔道具】作りとかもやってるから、体力作りも基礎訓練しかしてないかな。」
身体能力のトレーニングで、身体能力は徐々にだけど向上しているけど、何故かずっと【魔導剣士】の練度も上がらないんだよな……練度が上がればモチベーションも上がるんだけどね。
「今日は、レイさんに勝つつもりで、来ました!」
「私も最近になって覚えた攻撃系の【精霊魔法】を見て欲しいです。命中率は精霊がしてくれるので良い点が出そうです。」
「2人はそんなに自信があるのか……。僕は元々本気を出すつもりは無かったんだけど、ブラットが闘技の部で優勝したのを見て、本気で優勝を狙おうと考えているんだよね……エレナも本気出すなら軽技の部で優勝しそうな気がするし、幼なじみの中で僕だけが優勝出来ないとなるとちょっとね。」
まあ、エレナの本気というのがどのレベルかは、未だに分からないから、もしかしたら本気を出さなくても優勝してしまう可能性は高い。
「確かにエレナさんが負けるイメージが、出来ないです。」
「私もエレナが負けるところが想像出来ませんね。 きっとエレナさんが圧勝するんじゃないですか?」
「うん、だから僕も2人には負けない位の気合いで挑戦するから」
「でも、私達が優勝出来るかは、まだ分からないよ……圧倒的な優勝候補がいる」
「私もそれは聞きました……聞いた話によると魔技の部の優勝候補は4年生の方みたいですね。」
「僕もエレナから聞いたな、確か光属性の攻撃スキルが得意な女性の……アメリア先輩だっけ?」
「うん、光の天才魔法師と、呼ばれてるみたい。」
光属性の攻撃スキルが得意というのは凄いな……。
光属性も自分の雷属性まではいかないまでも、結構なレア属性で、雷属性と一緒で使いこなすにはかなり高い【魔力操作】とイメージセンスが必要らしい。
だから、それだけでアメリア先輩の凄さが分かる。
「闘技のディアナ先輩、魔技のアメリア先輩の2人の天才がチェスガン学園の圧倒的王者って有名だったらしいです。」
「その片方に2年生のブラットは勝ったのか……天才に勝ったブラットは天才かな?」
「「……ですね。」」
ちなみに、エレナ情報によれば、アメリア先輩の得意魔法は光収束魔法の【レーザーガン】を使うらしく、命中率はもちろん、威力も凄いらしい。
光属性は回復のイメージがあるが、光属性で回復スキルを持つ人は極稀で、アメリア先輩に関して言えば回復魔法は使えないみたいだ。
光属性の人はブルーノの守り特化やアメリア先輩の攻撃特化のどちらかになる極端な属性みたいだ。
ちなみに闇属性は搦め手などが多い。
今回の文化祭で改めて思ったが、エレナの情報量は凄すぎるなと思う。
しかし、圧倒的王者のアメリア先輩に勝つには、自分も封印していたあの技を使うしかないか……。
☆
【アメリア視点】
闘技の部が終わり、私は同じ高みを目指す仲間だったディアナが入院している、病院に来ていた。
「ディアナ、あなたはまだ2年生の子に負けたらしいわね。」
最初、闘技の部の優勝はどうせディアナで決まりだろうと思って見ていなかったけど、クラスメイトからディアナが負けたと言われ、今年一番の衝撃を受けた。
しかも、負けたのはまだ2年生だという……
「ええ、2年生に負けたわ……私達で4年間闘技と魔技の無敗記録を作ろうって約束を破ってしまったわね……」
「そんなに2年生の子は強かったの?」
私は今でもディアナが負けたという事実が信じられなかった。
だって、ディアナの強さは近接戦闘においては圧倒的で、元々高い身体能力があるにも関わらず、常に努力しする、欠点らしきものがない人一倍努力をする天才なのだ。
先生もディアナの強さは、既に初級冒険者レベルに達していると言っていたし、低学年では負けないと思っていた。
「そうね、あの子は天才……いえ、ブラットくんも私と同じ努力をして手に入れた実力なのかしら……私が身体能力で同世代に負けたのは初めてだわ」
「え、ディアナが身体能力で負けた? その子も竜人族?」
「違うわ。多分、人族とドワーフ族のハーフかしら……結局は私よりも強い学生なんていないっていうおごりね……まだ1から鍛え直すわ」
「そう……」
「アメリアには不要かもしれないけど、アメリアは魔技の部を優勝してね」
「ええ、私はあなたの分まで圧倒的な点数差で優勝してみせるわ!」
私の去年の得点は1400点で、私の点数は学園の教師の誰よりも高かった。
今年は更に点数に伸ばして圧倒的な勝利をしてみせるわ。
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