第111話 闘技の部 その後

2日間による闘技の部が終わった。


 フタを開けてみれば決勝戦はブラットとディアナ先輩との戦いの末、ブラットが勝ってしまった。


「まさか、あんな強そうなディアナ先輩にブラットが勝つなんてね……かなり予測外だったよ。」


ディアナ先輩の戦いを初めて見たとき、明らかにブラットよりも強そうに見えたんだけど、実際にブラットとディアナ先輩が戦った時には、ブラットの動きがいつも以上に凄くてびっくりした。


今までがそこまで手加減をしていたとも思えないから、ブラットの【グラディエーター】の【職種】効果なのだろう。


「私はブラットが勝つのは予想通りにゃ。」


「そうなんだ……しかし、ブラットが最後に使用した地面から武器がいっぱい生えてくるスキルはえげつない感じだったね。まさか、ブラットがあんな隠し玉を持っているとはね……」


最初あのスキルを見た時はびっくりしたけど、あのスキルは【魔力】の流れが特徴的過ぎるから、自分と戦うときには何かしらの対策は出来そうな気がした。


「あれはブラットが生まれつき持っていたスキルだから、レイも知ってるにゃ。」


「え? ブラットが使ってたかな? 僕は知らないんじゃないかな。」


あんな凶悪なスキルを一度でも見たら、憶えていそうだけどな……


でも一時期の記憶が曖昧なところがあるから、ちょっと記憶力に自信は無いかもしれない。


「あのスキルは【武器生成】にゃよ。昔はあれでレイやブラットとよく遊んだにゃ?」


「あ~、そう言われると【武器生成】って確か昔に見たな……みんなで土の武器を出して貰って戦闘の真似事をして遊んだやつだね。だけど、あの時のは作るのに凄い時間がかかる上に刃が付けられないっていう、使い道が微妙なスキルだった気がするんだけど……?」


「そうにゃ、あのスキルはブラットが手にしたことのある武器なら、素材から簡単に武器を作成出来る便利なスキルにゃよ。まあ、いくつかの制約はあるにゃけど、そこは秘密にゃ」


「その一つは、ブラットが常に【魔力】を流していないと、武器の形を維持できない点かな……あとは武器の強度は素材次第って感じかな?」


「よくわかったにゃね……」


「まあ、【魔力】の広がり方が特徴的だったからね。僕みたいに【魔力】が見える人や勘の鋭い人には不意打ちは難しいかも?」


「一瞬の【魔力】を察知して回避出来る人は熟練の強者位にゃよ」


「熟練の強者か……」


自分が言った勘の鋭い人ってのはエレナのことだったんだけどな……ある意味エレナも熟練の強者レベルってことなのか?


今回の闘技の部もエレナが出ていれば、優勝は確実にエレナだっただろう。


 しかし、【武器生成】は単なる鍛冶の簡易スキルかと思っていたけど、あんな使い方もあるのか……それなら自分の生産系スキルでも似たような戦い方も出来るのかな?





「あ、そうだ、ガーランさん……後でお話があるので指定のお店に1人だけで来て貰えませんか?」


ガーランさんに話さなければいけないことがあったのを思い出す。


「私、1人だけで良いんですか?」


「はい、出来れば1人が助かります。」


「いえ、こちらもレイくんとは1対1で話したかったので、その方が助かるので1人で行きましょう。」


「(……後で、ここのお店に来てください。 ガーランさんの状態を治せるかもしれない人を紹介しますが、他の人には知られたくないです。)」


「(……!? わかりました。)」


みんなに聞こえないように場所を指定する。


そしてブラットには賞賛の言葉を贈り、みんなと別れた。




闘技の部が終わり、みんなと別れて自宅地下に来ていた。


「セシリア、今日の夜に【聖霊眼】の継承者に会うんだけど、セシリアが変装状態で会ってもらうよ。」


「わかりました。ガーランさんですね……私は会って何をすれば良いですか?」


セシリアは自分の視界経由で大体の事情は理解しているみたいだ。


やっぱり、視界を共有しているのは便利だな。


「僕の見た感じ、ガーランさんの片眼は、完全に結晶化していて治せないだろうけど、もう片方の不完全な眼の中と、体全体の血管の内に血栓の様な小さい結晶があったのが見えてね……それをセシリアの【魔素圧縮吸収】と【魔素操作】、それと【魔導スライム】の【魔石分解珠】を使い、結晶を分解しながら吸収して欲しいんだ。このままだとガーランさんは近い内に脳梗塞などで亡くなってしまう可能性が高いと思うんだよね。」


前世の自分は医学に明るいわけではないから、確定的なことはわからないけど、このままでは血管が詰まってしまうのは間違いないだろう。


もしかしたら、既に痛みなどは出ているかもしれない……


「わかりました。しかし魔石を分解するのは出来ても、結晶を分解出来るかは解らないです。」


「確かにそうだな……今からだと【魔石分解珠】を改良している時間が無いしな……くそ、結晶化の可能性があったなら対策をしておけば良かったな。」


可能性で言えば、マティアスを見た時に想像出来たかもしれないのに……実際にガーランさんを見るまでは、血管内に結晶が作られて悪さをするとは考えていなかった。


「流石にそこまで働いてはマスターが倒れますよ。」


「ふっ、社畜は止まると死んじゃうんだよ……。」


「……。」


「いや、冗談だよ? しっかり休むから信じてよ。」



「いつもそんな事を言って休まないじゃないですか。」


「……すいません。」


セシリアに1日5時間は寝るという約束をさせられてしまった……


実は最近、あまり眠らなくても平気になって来たんだよな……まあ、セシリアに言ったら怒られそうだから、言わないけど……






【マーティナ視点】



私は不思議な夢から目覚めると、学園の保健室で寝ていた。


最近、急に調子が悪くなるので、保健室の常連になっていた。


調子が悪い原因は分かっていて、【バベル】製の薬による副作用なんだけど、【バベル】との約束により、誰にも話すことは出来ないから、原因は分からないというしか無かった……。


それにしても、変な夢を見たなぁ。


真っ白な部屋で……あれ?


誰と話していたんだっけ?


そもそも、真っ白な部屋だった?


思い出そうと考えると、どんどん曖昧な感じになっていった……


何だか重要な話をした夢だったんだけど……まあ、夢だから気にしなくても平気かな?


ズキッ……


「いたっ!」


急に胸の辺りが何かに刺されたような激痛を感じた。


私は嫌な予感がしたので、保健室にある大きな鏡の前で、上着を脱いで胸の辺りを見る。


「えっ……なに、これ……?」


私の胸には、紫色のインクで描かれたかの様な不思議な模様があった……

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