第110話 文化祭⑨ 闘技の部 決勝
ブラットとヒルダさんの戦いが終わったところでコーデリアさんとシンシアさんがこちらに来た。
「ああ! やっぱり2年生のブロックは終わっちゃったんですね。」
「1年がもっと早く、終わっていれば……。」
「2人共、お疲れ様。こっちはブラットが勝ち残ったよ。」
「こちらはマティアスが最後まで勝ち残りましたね。」
「やっぱりマティアスくんは強いんだね。」
「コーデリア、すまないが私にも彼らを紹介して貰えないかな?」
コーデリアさんとかと一緒にこちらに来た、ちょっと背の低いお兄さん?が話しかけてきた。
「すいませんでした。こちらはマティアスのお父さんでガーランさんです。」
やっぱりマティアスくんのお父さんか、両眼が【聖霊眼】になってるから、もしかしてとは思ったけど。
「初めまして、僕はコーデリアさんやシンシアさんの同級生でレイです。」
「初めまして、同じく同級生のエレナだにゃ。」
「よろしく、ガーランです。 君が噂のレイ君か……。」
「噂の?」
「ああ、コーデリアとシンシアが親に送っている手紙に、凄い魔眼使いが居ると賞賛しているらしくてね。我が部族以外でも噂になっているんだよ。私としても是非とも会ってみたかったのだよ」
「2人共……。」
まあ、親にクラスメイトのことを伝えるのは、自分もやっているから、気にしないけど、コーデリアさんとシンシアさんは自分のことを過大評価することがよくあるから、ちょっと心配ではあるかな……
「すいません、レイくんが目立ちたく無いのはわかっていたのですが……ついレイくんのことを書き始めたら止まらなくなって……。」
「同じく……。」
「君は我々の【聖霊眼】にも詳しいと聞いたのでね、後で少し話を聞きたかったのだ。」
「それは構いませんよ。」
ガーランさんの結晶化がかなり酷かったので話を聞く事にした。
☆
そして、次の日になり、闘技の部、決勝戦の日になった。
学年別の各ブロックで勝ち残ったのは。
1年生 マティアス【魔拳士】
vs
2年生 ブラット【グラディエーター】
3年生 ヤーヒム【棒術士】
vs
4年生 ディアナ【ドラグナー】
この4名だ。
まずは【魔拳士】のマティアスくんとブラットの戦いだった。
マティアスくんの【魔拳士】は身体に風属性を付与して戦うタイプの拳士で、【魔剣士】みたいな感じらしい。
マティアスくんは、【魔拳士】と【聖霊眼】との相性も良いらしいが、まだ使いこなせてないらしい。
「マティアスがブラットくんに勝つのは不可能でしょうが、どこまで粘れるかは興味ありますね」
「マティアスくんが負けるのは確定なんだね……」
どうやらコーデリアさんの中では、マティアスくんがブラットに勝てる可能性はないらしい……自分もブラットが年下に負けるのは見たくないかもしれない。
「戦いの素人でも分かるレベルの差がありますよ」
「そんなになの?」
一応はマティアスくんも1年生のトップなんだし、健闘はするんじゃないかな?と思ったのだが……
「あ、ブラットは最初から武器を使わないみたいだね」
「ブラットくんは武器を使わなくても強いのですか?」
「うん、二年生の部ではほとんど武器を使わなかったよ」
そして、試合が開始されると共にマティアスくんは一気にブラットへ向かって走り出し、ブラットの顔面めがけて右ストレートを繰り出したのだが、ブラットはその右ストレートに合わせてカウンターをマティアスくんのアゴに繰り出す。
クロスカウンターをモロに食らい、マティアスくんは大の字に倒れてしまう。
「「あっ!」」
そして、マティアスくんはピクリともせず、結果を見ればブラットの圧勝だった。
「やっぱりブラットの基礎スペックは低学年にしては反則級だよね。」
「同年代だとそうかもしれないにゃ。」
「まさか、マティアスが1分保たないとは……。」
ガーランさんはマティアスくんがあっさりと負けたことにびっくりしていた。
「マティアスくんのメンタルが心配ですね……。」
「いや、マティアスにはちょうど良かったかもしれない。1年生のブロックを見ていたが、少し調子に乗っていたからな。一度は負けた方が伸びるはずだ。」
「確かに1年生のブロックはみんな普通の強さでしたね。」
「コーデリアは、レイさん達を、見慣れすぎている、から……。」
「2年生のレベルはそんなヤバいのか……。」
☆
続いて、3年生【棒術士】のヤーヒム先輩と4年生【ドラグナー】のディアナ先輩の試合が開始された。
ディアナ先輩は両手で使うような大きさのハルバートを2本持った二刀流が特徴的の先輩だった。
対してヤーヒム先輩は身長位の長い金属棒を持っていて、端から見ると2本のハルバート対金属棒って違和感がある……
試合開始と共にヤーヒム先輩とディアナ先輩はお互い似たような間合いで最初は打ち合っていたが、どんどんヤーヒム先輩が打ち負けていった。
ヤーヒム先輩は虎獣人族の男で力が強いはずなのに、女性のディアナ先輩が完全に力で勝っていた。
両手で棒を扱うヤーヒム先輩と片手でハルバートを扱うディアナ先輩の打ち合いですらディアナ先輩は勝っている理由は、ディアナ先輩の種族が関係していた。
ディアナ先輩の種族はとても珍しい竜人族で、チェスガン内でも竜人族はディアナ先輩しか見たことがないくらい珍しい種族だった。
竜人族はパワーが圧倒的に強く、成人すると翼を生やして飛べる、チート種族だ。
「竜人族は初めて見たけど、パワーがすごいね。」
「職種の【ドラグナー】は竜人族専用の戦闘職で、あまりいないけど、最強クラスの【職種】にゃ、ディアナ先輩はこの学園では無敗の絶対王者にゃ。」
「なるほど」
試合の方はディアナ先輩の攻撃が凄い勢いでヤーヒム先輩の棒にヒットしていき、最終的には金属棒が折られた事で降参した。
金属棒が叩き折られるって、どんだけ馬鹿力なんだろう。
「流石にブラットも負けそうだね。」
「正面から戦うなら厳しいはずにゃ。」
☆
【ブラット視点】
1時間の休憩を挟み、最終戦が始まった。
相手は学園最強と呼ばれるディアナ先輩だった。
以前、修練所でディアナ先輩の戦いを見たとき、本気を出したレイやエレナを除いて、学園最強と思われるのはディアナ先輩だけだと思う。
だから、レイやエレナを超えるには、ディアナ先輩に負ける訳にはいかなかった。
「ディアナ先輩の力を見せて貰うぜ!」
「ふふ、強気な子ですね。私に勝てるように頑張って下さいね。」
「ああ、遠慮なく勝たせて貰うぜ。」
俺は【グラディエーター】のアクティブスキル【闘技場の覇者】を発動させる。
【闘技場の覇者】は1対1の戦いの時は、俺のステータスが増加して、相手の能力制限をするものだ。
そして相手が前衛職の場合も俺のステータスが増加する。
今の職種練度だと増加率は1.5倍近くになる。
「いくぜ!」
俺はまず、正面から攻めて、ディアナ先輩の力を見てみたいと思う。
勝ち負けとは別にディアナ先輩の竜人族と力勝負をしたいと考えていた。
真っ直ぐディアナ先輩に向っていき大剣を上段から振り下ろす。
ガギッーン。
片手のハルバートには打ち勝ち、もう1度振り下ろすと2本のハルバートをクロスしてガードされる。
ガッ
そして、俺はどんどん回転数を上げて攻撃していく。
「ガードし続けられるならしてもらうぜ。」
俺はガードの上から、お構いなしにどんどん攻撃していく。
ディアナ先輩も最初は余裕そうな表情が、今ではかなり厳しい表情になっていた。
ガン、ガッ、ガン!
「かなりのパワーですね。年下なのに凄いわ……まさか、私がパワー負けするなんて。」
「それはありがとな!」
ピキッ……
やべえ、ちょっと調子に乗りすぎたかな……そろそろ俺の大剣が折れそうな気がするな……。
騙し討ちみたいで余り好きではないけど、あのスキルを使うか……。
数回打ち合う事で、俺の予想通り大剣が折れ、吹き飛ばされた振りをする。
ゴキン!
ディアナ先輩はそこで勝利を確信したのか、油断した表情をしていた。
「ふふ、まだまだ2年生ってところね、自分の武器位は管理しないとね」
「(【武器生成】!)」
俺は地面に手をつきながらスキルを使う。
すると、ディアナ先輩の地面から20本のいろいろの種類の武器が生成されながら飛び出した。
この【武器生成】スキルは、俺が持ったことのある武器を生成することが出来るスキルだが、欠点として俺が何か素材に触れてないといけないというのと、武器の強度や性能は元にしている素材に影響されるから、出来ればみんなには知られたくないなと思っていた。
「なっ!」
そして、油断していたディアナ先輩は、俺の【武器生成】に全く反応出来ず、両脚に何本も武器が刺さり、立っているのがやっとの状態になる。
一応、危険な部分は避けるように攻撃したから、あとで回復してもらえば大丈夫だろう。
「先輩は油断しすぎだぜ! 急所は外したから大怪我にはならないはずだ。」
「……まさかこんなスキルを使えるとは油断したわ。」
「負け無しだったから油断したんだろうな。」
「……最初からそのスキルを使われたら、すぐに終わったかもしれないわね。」
「スキルの発動スピードがまだ遅いから、隙が無いと回避されるさ。」
「ブラットか、負けたわ……。」
「先輩も強かったぜ!」
ディアナ先輩と握手をしたところで先輩は気を失い、数人の先生が駆けつけて必死に回復魔法を使っていた。
そして俺は闘技の部で優勝した。
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