第108話 文化祭⑦ 闘技の部 中

 文化祭の闘技の部は今日1日で各学年のブロックを終わらせて、明日は決勝トーナメントだけという初日がハードなスケジュールだった。


なので、2戦目は連戦に近い形になるので、如何にして1戦目をスムーズに勝ち残るかが勝負になってくるみたいだ。


「ブラットやアランは1戦目が余裕だったから、かなり有利だよね」


「そうにゃね~、ブルーノやカルメーラはかなり疲れてるんじゃないかにゃ?」


「まあ、ブラットは体力バカだから、仮に連戦でも余裕かもしれないけどね」


「そもそも、ブラットは鍛え方が他の生徒とは別次元にゃしね」


そうなんだよな。


ブラットはほとんどの時間を修練に費やしているから、たぶん他の生徒の10倍以上は身体を動かしている筈なのに、身体はほとんど壊さないんだよな。


自分も他の生徒より数倍はトレーニングに時間を費やしてはいるが、半分以上は【魔導操作】関連だからな……



「あ、そろそろ第2戦目が始まるね」


 第2戦


 ブラット【グラディエーター】

 vs

 ブルーノ【ホワイトナイト】


 カルメーラ【魔剣士】

 vs

 アラン【ブレイカー】


 ヒルダ【ダークソルジャー】(シード)

 vs

 ルイーザ【槍術士】(シード)


 の予定になっている。



 まずはブラットとブルーノの試合から始まろうとしていた。


「2人とも修練所で良く模擬戦してるから、お互い

に手の内がバレてるからやりずらいのかな?」


「ブルーノは分からないにゃけど、ブラットはスキルをまだ隠してるはずにゃ。ブラットは基本的に私にしか本気のスキルを出さないにゃからね。」


「えっ! 僕の時も手を抜かれてるの?」


「レイの場合はトリッキーな感じで戦うから、ブラットも本気を出す前に勝っても負けても勝負がついてしまうにゃ。」


「確かに僕の作戦がはまれば勝てるし、失敗したら負けてるな……。」


「だから、レイと戦う場合は、スキルを多様するよりも、物理攻撃を中心に攻めた方が良いってのが、私とブラットの認識にゃね」


「そうだったのか……」


 ブラットとブルーノの戦いが始まり、まずはブルーノが魔力防御スキルを展開してるのが見えた。


 たぶん、ブルーノはブラットの【浸透打】を警戒して魔力防御スキルにしているのかもしれない。


 しかし、ブラットはブルーノの考えが解っているのかどうか知らないが、ブルーノの守りを気にしていない感じでブルーノへ正面から突っ込んで行く。




 ブルーノが盾を構えている上から横薙きして大剣を叩きつける。


 ドガーン!


 ブルーノの身体が3メートル位浮きながら飛んだがブルーノは上手く着地している。


「うわ。ブラットは相変わらずのバカ力だな……しかし、ブルーノの体重とあの装備とか、全部入れたら結構な重量になるでしょ。」


ブルーノの装備している鎧は、皮と金属で作られたものだけど、盾などは完全なる金属製だ。


それを浮かせるほどの衝撃を剣で発生させている時点で、かなりの力だろう。


ってか、子供の出せる力を遥かに超えてるな……


「それは【グラディエーター】の特性にゃね。騎士や剣士とかの前衛職と戦う時に、能力が劇的に向上するにゃ。」


「それは凄いな……その攻撃を防いでいるブルーノも凄いのかな?」


 僕は転生者としての知識や乳児から鍛えている【魔力操作】、【魔眼】や【魔導】を使えるから特別な感じだと思っていたけど、戦闘面においてはブラットやエレナもそうだが、ブルーノやアランもかなりぶっ飛んだ能力をしていると思う……。


 ブラットがひたすらガード上からブルーノを殴っているけど、ブルーノはブラットのスピードに慣れたのか、盾でブラットの攻撃を受け流すようになっていた。


ここからブルーノの反撃が始まるのかな?


ブルーノもブラットのスピードにさえ慣れれば、反撃の機会も十分にありそうな感じだな。


ただ、ブラットのことパターンが単調なのがきになった。


「たぶん、そろそろ勝負がつくにゃ。」


「えっ?」


 エレナがそんな事を言って少しした後、ブラットがブルーノに駆け寄りがら、大剣をブルーノに投げた。


おいおい……いきなり武器を投げて何をするんだ?


 ブルーノもびっくりして盾で防がずに、大きく横に回避した。


 その隙をついてブラットはブルーノの背後に回り、ブルーノを投げた後に首を絞めだした。

 あれはチョークスリーパーだったかな? 


「うわ、ああいう技を使う人は初めて見たよ。」


そもそも、この剣や魔法のようなものがあるファンタジー世界で締め技みたいなものを決められるには、かなりの実力差が無いと出来ない気がする。


「【グラディエーター】は闘技全般が出来るから、投げや関節技とかにも補正がかかるにゃから出来る芸当にゃね。」


「なるほど……そう言われると、【グラディエーター】ってかなり凄い【職種】じゃない?」


「戦闘職としてはかなり上位に入るんじゃないかにゃ? ……あれはブルーノも無防備だったから完全に絞まってるにゃね。」


「あっ、ブルーノが落ちた。」


 ブルーノとグッタリしたところでブラットの勝利になった。


「結局、ブラットは2試合とも、一度も攻撃されてないな……。」


「まだブラットには余裕があるからにゃね……。」





 次はカルメーラさんとアランの試合だったが……。


「この試合はほぼアランが勝つにゃよ……。」


エレナは解説者としても優秀な上に、戦いが始まる前に勝敗予想まで出来るのか。


エレナは未来でも見てきたのか?と思ってしまうほどだ。


「そんなに2人には実力差がある?」


確かにアランは強いけど、カルメーラさんにかなり強かった気がする。


もしかしたら、カルメーラさんは1戦目で疲労してるからか?


「見たら分かるにゃ。」


 試合開始と同時にカルメーラさんは、前回の試合同様に火属性付与をした武器でアランを攻撃したのだが……アランは火属性付与した攻撃を剣で受け止めた瞬間、カルメーラさんの属性付与が霧散していた。


「は? 属性付与が消えた?」


カルメーラさんは属性付与が消えた事に衝撃を受けたのか、完全に動きが止まってしまった。


「戦闘中……それも、近距離で無防備で止まるのは致命的にゃね……」


 自分もエレナの感想には同意する。


 そして、アランがその無防備な隙を見逃すはずがなく、カミーユさん同様にカルメーラさんを武器の腹で叩きつけられ、カルメーラさんはもの凄い勢いで吹き飛び、壁に激突した。


「これで終わりかな……」


呆気ない試合ではあったが、あそこまで激しく全身を壁に打ち付けられれば、流石に立ち上がることは出来ないだろう。


「そうにゃね。」


そして、予想通りカルメーラさんは立ち上がれず試合は終了になった。


「それにしても、何でカルメーラさんの属性付与は消えたの? アランのスキルなのは分かるけど……」


「あれがアランのスキルで【エレメンタルブレイク】にゃ。アランが属性付与攻撃を受け止めれば、自動的にその受け止めた属性付与は破壊されるにゃ。」


「……マジか、属性付与が得意な人には天敵みたいなスキルだな。」


「そうにゃけど、弱点というか欠点もあるにゃから、アランがそれを克服しないと天敵にはなれないにゃよ」


「欠点……」


「属性破壊が成立されるには、属性付与攻撃を受け止めないとダメにゃよ。」


「ああ、受け止められない威力で攻撃するか……数を増やせば良いのか。」


「そうにゃ。レイの場合は攻撃数が凄いから、全てを受け止めるにゃら、ブルーノ位に硬くないとダメにゃ。」


「しかし、アランは余裕があるなら相手が女性なんだから別の倒し方にすれば良いのに。」


「その辺が気が利かないにゃね」




 次はシード枠同士の【ダークソルジャー】のヒルダさんと【槍術士】のルイーザくんの試合だ。


「この2人は話したことが無いからあまり分からないにゃ。」


「ヒルダさんは魔人族の女性で、ルイーザくんは狼獣人族の男だね。」



 ヒルダさんとルイーザくんの戦いが開始するとヒルダさんから半径2メートル位に闇属性の半円ドームが展開された。

 初めて見るタイプのスキルだったので、普段はあまり使わない【鑑定】を使用してみる。


「なるほど、ヒルダさんが展開しているあの半円ドームは、【ダークテリトリー】っていう、他者が入るとステータスが減衰するタイプのスキルみたいだね。」


「レイの魔眼もスキルを見ただけで効果が解るのはかなり反則にゃ……。」



 ルイーザくんはヒルダさんのスキルを知っているみたいで、【ダークテリトリー】を警戒しながら、【ダークテリトリー】に入らないように槍で牽制しながら攻めようとした時、先にヒルダさんが動いた。


「うわっ、あの【ダークテリトリー】はヒルダさんが動くと一緒に動くのか……やり辛そう。」


「確かに急にステータスが増減したりするとやりずらいにゃね。」


 ヒルダさんは女性にしては珍しい片手斧を両手に持ちルイーザくんを攻め立てる。しかしルイーザくんも負けずに間合いには入れさせないように反撃する。


 ルイーザくんがステータス減衰に慣れたらヒルダさんが少し離れ、また近づいて攻めるという戦いを続けていた。


 ヒルダさんの攻撃に耐えきれず、ルイーザくんは片手斧の間合いに入られ撃沈する。


「ルイーザくんも強かったけど、ヒルダさんはかなり強かったね。」


2人とも強さ的には互角といって良いほど強かった。


「確かに強かったにゃ。」






【マーティナ視点】


「あれ……私はいったい……?」


私は目覚めると真っ白な部屋で、ベット以外は何もない不思議な部屋に寝かされていた。


「ふむ、やっと目覚めたのう……」


!?


私は誰もいないと思っていた真っ白な部屋で、突然話しかけられ、びっくりしてベットから飛び起きる。


部屋から気配は一切しないのに、目の前には怪しげな服装に金色の仮面を被った怪しい老人が椅子に座っていた……


「だ、誰ですか?」


目の前に、老人がいるのに……気配は未だに感じられない……どういうこと?


「ワシか? ワシは……そうじゃな、とりあえずは、ジャスティスマンとでも名乗っておくかのう」


「ジャスティスマン……」


見た目も怪しければ、名前も怪しい……


そもそも、ここはどこなんだろう?


確か、闘技の部でブルーノくんと戦って……負けたのかな?


そしたら、ここは保健室……には見えない。


「ここは生者と死者の狭間じゃよ……そして、お主は人造不死者として生まれ変わることに成功したのじゃ。流石は才能を認められるだけはありそうじゃな」


私の考えが読めているかのように、老人は私の疑問に答える。


「人造不死者?」


「そうじゃ、不死者はmgtpjがdgjした存在……ふむ、ここでは禁忌に触れるか……すまぬが、ここでは人造不死者の説明は出来ぬみたいじゃな……まあ、お主は知る必要は無いのかもしれんのう、どうせ……」


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