第106話 文化祭⑤ 出店廻り 後半
ブラットの当初からの希望で、みんなで輪投げと射的のゲームをする事になった。
ブラットは昔からモノを投げるのは得意だったからな……
「レイ、勝負しようぜ。お前も投げるの得意だろ?」
「いや、あれは魔法だからコントロールが出来るだけで、物理的なのは無理だよ。どちらかというとエレナの方が得意でしょ。それに遊びの屋台で魔法はダメじゃない?」
確かに【魔導手】などを使ってモノを遠隔操作するのは、得意だけど……流石にそれは反則だろう。
「エレナはガチで強過ぎるから勝負にならないだろ。」
ブラットの発言を聞いて輪投げと射的の生徒がギョッとする。
「ブラット、その発言は店から離れたところでした方が良かったね。学生店員に凄い警戒されてるよ……。」
「ああ、悪い……。」
結局、輪投げは勝負ではなく、欲しいものだけを狙うことにした。
勝負したらほとんどの景品が無くなりそうな予感がしたからだ。
その話を聞いて生徒達も笑顔になる。
「シンシアさん、何か欲しいものはある?」
「それじゃあ、あのウサギのぬいぐるみが欲しいです。」
「頑張ってみるよ!」
「ウサギの場合は首まで輪が通過したら貰えますから、頑張ってください!」
学生店員が注意点を教えてくれる。
「とりゃ!」 「うりゃ!」 「この!」
輪がウサギに当たったり、耳に引っかかったりはするがなかなか首を通過しない……。
あの広がっているウサギの耳が邪魔だな……。
「おりゃ!」
何度やってもダメっぽい。
「エレナ先生、お願い出来ませんか?」
「シンシアが欲しいものは、レイが担当だから頑張るにゃ。」
「仕方ない……。」
ちょっとズルいけど……まあまあ、おの金使ったから許してね。
【魔導手】を使い、広がっているウサギの耳を一瞬握り、ウサギの耳を立たせ、その瞬間に輪を投げる。
「うりゃ!」 「えい!」
やっとウサギの首に輪が入った。
「おめでとうございます! ウサギゲットですね。」
ウサギのぬいぐるみを学生店員から受け取り、シンシアさんに渡す。
「はい、シンシアさん。やっと取れたよ。」
「ありがとう、ございます。 レイさん、お金を使わせて、しまいましたね。」
「僕も楽しかったから、大丈夫だよ。」
「大切にしますね!」
「私もレイくんに取って欲しかったな……。」
「タイミングの良いときにシンシアが居たから仕方ないにゃ。」
「タイミング……」
☆
その後、みんなで射的もしたが、エレナは全弾命中していた。
ちなみに射的はゴム弾の猟銃みたいなやつで、距離は10mもあった。
景品は倒れなくても当たれば貰えるのだが、距離がありすぎてエレナ以外は当たらない。
この射的も基本的には景品を渡す気がない難易度な気がする。
「やっぱりエレナの射的は反則級の精度だな……。」
ブラットもエレナの腕に降参する。
確かにこれだけ射的の精度が高ければ、勝負したくない気持ちもよく分かるな。
「ブラットもまあまあスジが良いにゃ。」
「なんでそんな全部が当たるの?」
自分も射的をやったが、この射的の銃自体がしっかりと作られていなくて、同じ様に撃っても全く違う方向に球が飛んでいくので、エレナが何であんなに当たるのかが疑問になった。
「私は30m以内の動かないものなら、何を投げても【必中】するパッシブスキルがあるんだにゃ。」
「なっ、スキルなんてズルい!」
それって、チートスキル過ぎるだろ……
「パッシブスキルだから、私には仕方ないにゃよ。」
「確かに、そうだが……それは、なんか納得いかないぜ。」
「エレナにそんなスキルがあったのにびっくりだよ……。」
☆
一通り遊んだら、お腹が空いたので屋台でいろいろ買って食べることにした。
「屋台の料理は先生達が作ってるんですね。」
いろいろな屋台を廻ってみたが、食べ物関係は必ず先生が作っているのに疑問を感じたので、焼き鳥を焼いている先生に聞いてみた。
「そうだよ。肉とかの調理は生焼けだと危ないしね、文化祭では先生が必ず調理や盛り付けをして、学生は販売をするだけって決まりなんだよ。」
「えっ? 僕のクラスは室内でメイドカフェをやって、料理も多少はやりましたけど。先生は何もしなかったですよ?」
基本的な調理は自分の作ったものをシーラさん経由で仕入れたものだから、生徒が調理したとは言えないけど、盛り付けは確実に厨房グループがやっていたから、この先生の言っていることが正しいなら、うちのクラスはアウトな気がする。
「え? それは本当に?」
先生はもの凄くびっくりしている。
「はい、間違いないです。」
「……えっと、君たち、担任の名前を教えてくれるかな?」
「ロナルド先生です。」
「ロナルドの野郎か……!」
さっきまで、やさしい感じだった男の先生が、いきなり怒り出した。
「えっ……?」
「くそっ……最近、あいつはカリーヌと付き合いだしたからって浮かれやがって……文化祭での飲食は絶対に生徒にやらせるなって学園長がアレだけ言っていたのに……後で職員会議の議題に上げるか。」
そこでエレナが袖を引っ張り、小声で話しかけてきた。
「(レイ、話過ぎにゃ。これは確実に、ロナルド先生が減給になっちゃうパターンにゃ……。)」
「(あっ! それは流石に可哀想かも。)」
「先生、ロナルド先生はたまに見に来ましたよ。」
「学生が先生を庇うなんて君は優しい子だね……。でも、今回の件は庇える範囲を超えているんだよ? 例えば、君たちの……メイドカフェで食中毒がおきたとして、食べた生徒が死んでしまったら、どうする? 責任はアイツが取るかもしれないが、死んだ生徒は戻って来ないし、君たちだって一生残る心の傷を負うかもしれないんだよ……」
そう言いながら、頭をポンポンする。
「……。」
そこまで言われたら、自分には何も言えなかった。
もうロナルド先生の未来は確定したらしい。
ならば、もうロナルド先生のことは一旦忘れ、文化祭を楽しむ方にシフトすることにした。
「みんな、過去は忘れて屋台を楽しもう。あっ、先生、焼き鳥を30本ください。」
「おう。まいど。」
☆
「あそこの机で、買ったものを並べて食べよう。」
「「はーい。」」
焼き鳥 30本
焼きそば 3個
ベビーカステラ 40個分
カレーライス 3個
まあまあ買ったけど、ブラットがいれば食えるだろう。
みんなでワイワイ食べていたら、隣の席から前日のメイドカフェの話が聞こえた。
「昨日やっていた2年生のメイドカフェで働いていたブルーちゃんをミスコンにエントリーしたかったらしいけど、2年生に聞いてもブルーちゃんなんて居ないと話題になってるんだって。」
「ああ、俺もブルーちゃんファンクラブが出来るかもって聞いたぞ。」
「あ~。 ファンクラブ出来たら、俺も入りたいや。」
……。
「(昨日はブルーノが人気だったのは聞いたけど、ファンクラブが出来るレベルなの?)」
「(圧倒的にブルーちゃんが人気だったにゃ……。)」
「(ブルーちゃんが可愛すぎてマーティナのダメージが一番大きかったです。)」
「(確かにブルーちゃんは俺にも女性にしか見えなかったぜ。)」
「(将来、もっと美人に、なりそうです。)」
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