第102話 文化祭① 準備

 職場見学の休みも終わり、自分を含めたクラスメート達が学園の教室で1ヶ月後にある文化祭の出し物について話し合っていた。


 みんなが出し合った案は……。


 スライム迷路(自分案)

 ゴースト屋敷(自分案)

 メイドカフェ(コーデリア案)

 普通のカフェ(コーデリア案)

 焼きそば屋台(ブラット、アラン案)

 演劇(エレナ案)

 人形劇(ブルーノ案)

 展示物(シンシア、クライブ案)


 が一応候補にあがった。 


「おい、お前ら! 本当にスライム迷路はやめろな? 絶対に問題が起きるだろ。」


早速、ロナルド先生がスライム迷路はダメだと言ってきた。


個人的には自分の【魔導スライム】は単体ならば人畜無害なので、安全安心な上にインパクトもある完璧なアトラクションになると思うのだが……減給を恐れるロナルド先生には、嫌な予感しかしないらしい。


「ロナルド先生、なら何故ゴースト屋敷は良いんですか?」


そこで疑問に思ったのが、何故スライム迷路は駄目だけど、ゴースト屋敷は駄目と言わないのだろうか?ということだった。


スライムはダメでゴーストは良い理由が分からない。


「ゴースト屋敷のゴーストはお前達がゴースト役をやるんだろ? それならば他のクラスでもやるお化け屋敷と一緒だから問題は無いだろう。しかし、スライム迷路のスライムは野生のスライムを使うんだろ?」


「えっ? ゴーストも本物を使いますよ。それにスライムは野生ではなく使役されたスライムなので安全です」


「……ゴーストは捕まえられないのにどうやって? ってか、スライムは使役出来ないのは有名な話だから、俺でも知っているぞ?」


「えっと、まずゴーストに関しては、無害なゴーストを呼び寄せるだけの魔道具があって、それを使います。これは多少寒気や悪寒を感じますが無害なので大丈夫です。 あと、スライムに関しては自分がスライムを使役しているので大丈夫です」


「……ダメだ」


「何でですかっ!?」


「まず、レイの言う安全とか無害はあてにならない。それと、もっと子供らしいものをやれ! それに、ほとんどレイしか活躍しないだろ!」


「ぐっ、まず試してから考えてくださいよ! せっかく魔道具を用意したのに!」


「もう、用意したのか……。とりあえず、他ので考えろ!」


くっ、個人的には良いと思ったんだけどな……


しかし、自分の案が駄目になると、劇か飲食関係と展示か……


展示に関しては自分も手伝えるけど、内容がシンシアさんの超古代文明と遺跡の謎って言う、子供には楽しくないというか、理解できない中身だし、クライブのも、誰でも出来る資産運用という、子供がやる中身では無いので、多分実現しないだろう。


そうなると、劇か飲食だが……


劇は恥ずかしいから、裏方以外やりたくない……


ああ、そう言えば。


「ちなみに飲食系の場合、僕は作りませんからね?」


「えっ! レイくんが作ってくれないのですか!?」

「はぁ!? レイしか焼きそば作れる奴いないだろ!」


自分の作らない発言で、コーデリアさんとブラットから悲鳴のような返事が返ってきた。


別に意地悪で作らないと言っいるわけではない。


「僕が作ると騒ぎになるからダメですよ。食べ物に関してはお菓子みたいな出来上がっているものを買った方が良いですよ?」


「ええっ……私はカフェでメイド服が着たかったのに……」


「いや、食べ物は買えば良いんだって。」


「それだと微妙な感じで終わりそうだから……。」


 そこでロナルド先生が助言を出してくる。


「好きなのをやるのは良いことだが、準備期間が1ヶ月しかないのを考えろよ? 劇とかは内容によっては難しくて厳しいから、セットや服、台詞覚えが出来る範囲のものにしろ。まだ人形劇の方が人形さえあれば操作と台詞覚えとセットの準備だから楽だぞ。」



 いろいろ話し合って、結局はメイドカフェになった。


「服の準備はエレナに任せて良いのか?」


「良いにゃ。 しっかり4人分準備するにゃ。」


「裏方は男がやるとして、メニューはどうしようか?」


「やっぱり、レイくんはダメ?」


「流石にダメかな。」


セシリアショップと同じ人が作ってるってバレる可能性があるからな……。


バレなくても確実に騒ぎになる。


「ブラット、シーラさんに頼めないかにゃ?」


そこで何故かエレナはブラットに、ブラットのお母さんに頼めないか聞いてきた。


「どうしてそこでオフクロが出てくるんだ?」

 

自分もなんでシーラさんが出てくるんだろう?と疑問に思ったが、エレナが言うからには何かあるのだろう。


「頼めば分かるにゃ。」


「どういうことだ……?」



 ☆


 【ブラット視点】


 俺は帰省して直ぐに、いつもの様におふくろの食堂に来ていた。


「オフクロ。学園から帰って来たぜ。」


「ブラット、おかえりなさい。」


 学園に行く前からオフクロの食堂は、町に1軒しかなく、美味しいのもあって人気があり忙しい感じだったが、元々は仕事をしている人がお昼を食べたり、独身が夕方の仕事帰りに食べに来たりしていたが、最近は何故か女性の客が多く、バタバタしていた。


「最近、食堂は凄く人気だな? 相談は……オフクロに後で相談したいことがあるんだけど、いいか?」


「ブラットが相談なんて珍しいわね? お昼のピークが過ぎたら良いわよ」


「いや、忙しそうだから夜にするよ」


 あまりに忙しい感じだったから、夜でも良いかな?と思った。




 夜の実家にて。


「それでブラットの相談って何かしら?」


 夕食を食べ終わってから家族でダラダラしていたらオフクロが昼間の件を聞いて来た。


「今度、学園で文化祭ってのがあってさ、それでクラスの出し物がカフェになったんだけど、料理をどうするかで悩んでいてな。」


「あら? レイちゃんは作らないの?」


「レイは頑なに問題が起きるから作らないって言ってたよ。」


「……確かに問題は起きるわね。」


「そうなのか? それで何故かエレナがオフクロに相談すると良いって言ってな。」


「……エレナちゃんにもバレてるのかしら?  エレナちゃんは母親に似て勘の鋭い子だからバレたのかもしれないわね。」


「何の話だ?」


「こっちの話よ。料理の件はわかったから明日にでもレイちゃんに相談するわ。」


「そっか、ありがとう。難しい話はレイに頼むわ。」



 ☆



【レイ視点】


 レイの実家にて。


「レイちゃん、おはよう。」


「おはようございます、シーラさん。朝からここに来て食堂は大丈夫なんですか?」


「食堂が忙しいのはお昼前からだから、今は大丈夫よ。それでブラットからクラスの出し物でカフェをやるって聞いたから、協力する事を伝えに来たわ。」


「ありがとうございます。助かります。」


「お菓子の件で無茶なお願いしたからね。具体的にはどうするつもりとかあるのかしら?」


「シーラさんには数日前に冷凍可能なものや冷蔵で持ちそうなスィーツを作って貰い、カフェ内では温めと盛りつけだけにしたいんです。保存に適した冷蔵や冷凍庫はこちらで用意するのでお願いします。」


あのあと、疑問に思った自分は、エレナに確認しに行ったら、こうしたらどうかにゃ?と言われたのだ。


確かにコレならば手間は増えるが、問題にはならない気がしたので、エレナ案を採用する事にした。


「それなら食堂で出しているメニューを使えそうだから、大丈夫よ。」


「それではお願いします。」


「わかったわ。」


 これで料理問題は解決なはず……。

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