第101話 魔鋼材
自分は、目の前にある3Kgの【魔鋼材】を見ながら使い道をどうするか、悩んでいた。
「う~ん、どうしようかな……」
何故悩んでいるかと言うと……本来はもっと大量の【魔鋼材】が手に入れられる予定だったから、大量な【魔鋼材】の使用して何をしようかを考えていて、自分とセシリアの武器と防具など、様々な事を計画していた……。
防具ならば【魔導服】の急所部分を金属化して、防御力を向上させたり、武器ならば鍛冶屋に専用武器を2本分依頼したかった。
最近、周りで魔獣が増えているって話をよく聞くから、自衛手段を整えたいと考えているのになぁ。
去年の魔狼みたいな事になっても、何とか自分とセシリアだけで対処出来る様にしたい……。
あの時はブルーノが助かったが、あれは本人の運が良かったのと職種のおかげであって、一歩間違えばブルーノは死んでいたと思う。
自分も全くの無力という訳でもないし、いざという時には周りの仲間くらいは助けられるように準備をしておきたいと考えており、仲間が死ぬくらいなら隠しているスキルがバレても良いから助けるつもりでいた。
「よし……セシリア、鍛冶屋に行って、この【魔鋼材】の量で剣が2本分作れるか聞いてもらっても良いかな? 剣の大きさは女性の使うサイズで頼むよ。」
現状、自分には剣術を才能は無いが、無いからといって近接戦闘を無視する事は出来ないので、属性付与出来る武器が欲しいなと思った。
守りは【魔導壁】があるからまだ良いけど、攻撃【魔導】で【魔導剣】は作れるけど、何故か【魔導壁】に比べると強度が弱い気がするんだよね……理論上は原理が一緒だから、強度は一緒な筈なんだけど、何でだろう?
「わかりました、マスター。」
☆
【セシリア視点】
私はマスターに頼まれ、マスターが《チェスガン》に来たばかりの時に見た鍛冶屋に来ています。
マスターが情報収集した感じでは、この鍛冶屋が一番人気との事みたいです。
「すいませんが武器作成の見積もりをお願いしたいのですが宜しいですか?」
「なんだ? 珍しいメイド服を着たお嬢さんだな……俺が知らないって事は、この辺の貴族のお使いでもないよな?」
「そうですね、貴族は関係ないです。」
「まあ、いいか。武器なら展示してるのに値段が書いてあるから勝手に見てくれ。」
「いえ、この【魔鋼材】から女性用の剣を2本作れるかをお聞きしたかったのです。」
鍛冶屋のおじさんの前に【魔鋼材】を置く。
「なるほどな、材料持ち込みの剣作成依頼か。しかし、この量の【魔鋼材】だと剣1本分にしかならないぜ?」
おじさんが【魔鋼材】を手に取り、見始める。
剣、1本分ですか……マスターは2本作れないのなら、私の分の剣を優先するようにと言っていましたから、仕方ないですが私の分だけ……
「ん? なんだこの【魔鋼材】は……お嬢さん、ちょっとこれを詳しく調べて良いか? 作成依頼の返答も調べてからにしたいんだが」
「……少々、お待ちください」
「ん? ああ、待つのは構わないが……?」
『マスター、宜しいですか?』
完成まで時間がかかるのでは、と思い私は念の為、マスターに確認を取る事にした。
『ん? どうしたの?』
私はマスターに事情を説明する。
『マスター、大丈夫ですか?』
『ああ、見てもらってからでも良いよ。完成は早い方が良いけど、無理して他の微妙な鍛冶屋に頼む気も無いからさ』
『わかりました。』
「はい、調べて大丈夫です。」
「おう、じゃあ明日にでも来てくれないか?」
「明日ですね……わかりました。」
☆
次の日、約束通り鍛冶屋に来ていた。
そして鍛冶屋に入るなり、店主は私に駆け寄ってきた。
なんでしょう?
表情がちょっと怖いです……
「お嬢さん! これをどこで手に入れた?」
「入手先は言えませんが、何か問題でもありましたか?」
マスターがスキルで造ったとは言えませんからね。
「問題はないが……いや、いろいろ問題があると言えばあるんだが、こんな伝導率の【魔鋼材】は見たこと無いんだ! ちょっと違和感を感じたから、あれから伝導率を測定する魔道具で調べたら、伝導率100と出たんだ!」
「……普通の伝導率はいくつなのですか?」
何の話なんでしょうか?
普通では無さそうなのは分かりましたが……
「俺が知っている中の話では伝導率60までしか聞いたこと無い。こんな不純物が0になるなんて、通常は有り得ないんだ!」
『……なるほどね。今更ながら【魔導炉】の凄さを理解したよ。ってか、相変わらず【鑑定】の説明が分かりにくいんだよな……』
そこで、私達の会話を聞いていたマスターが、話を理解したようです。
『マスター。どういう事でしょう?』
『通常、この世界の金属って技術的な関係で不純物が結構入っているんだけど、僕の【魔導炉】は不純物を完全に取り除くって説明にあったから、不純物を完全に除去したから伝導率も高いし、混ざりものがない分、仕上がりの量も少なかったんだよ。』
『なるほど。いつものやらかしたわけですね?』
『僕のスキルはいつも極端なんだよな……まあ、【魔鋼材】はそのまま持って帰って来てよ。』
『わかりました。』
「すいません。やはりこの話は無かったことにしてください。」
私はそう言って【魔鋼材】を掴み、すぐに鍛冶屋を出ていった。
「は? ちょ、待ってくれ!」
店主が後ろから叫ぶ声が響いていたが、マスターが持って帰って来いというのだから、店主と話すことはもう無いと判断し、無視して帰宅した。
☆
【レイ視点】
自宅地下にて。
おっ、セシリアが鍛冶屋から帰ってきた。
「セシリア、お疲れ様。」
「【魔鋼材】はどうしますか?」
「う~ん、このパターンは【虹魔石】と同じ気がするから、基本的には外部に出さず、僕が加工するだけにしようかなと思ってるよ」
多分、無いだろうが【魔導炉】で精製した【魔鋼材】が、この世界ではオーバーテクノロジーなので、もしかしたら禁忌指定される可能性が少しでもあったら困るなと思ったのだ。
【虹魔石】の時はお金に困っていたし、ちょっと位は良いかなと思ったが、結局は国宝級を扱いになってしまったし、今回もどうなるのか予想が出来ない。
「それではマスターが武器を作るのですか?」
「いや、武器に関しては僕が【鍛冶】で武器を作れるまで保留かな……今度、別の鍛冶屋で良さそうな剣を2本買おう。それでこの【魔鋼材】はセシリアの【魔導服】を補強するのに使うことにするよ。」
「私としてはマスターの防具を先に整えて欲しいのですが……。」
「僕は子供の内に目立ちたくないから、全力を出しても問題無いセシリアを先に強化する事にするよ。」
セシリアが自分を優先するのは分かるが、個人的にはセシリアの強化を優先したいと思っていた。
「わかりました、マスター。」
「それにピンチな時はセシリアに守って貰うから、よろしくね。」
セシリアは自分とは違い、身体能力は初期から高いので、何かあればセシリアが前衛として戦い、自分がサポート役として動いた方が効率的かなと思った。
「そのときは全力でお守りします。」
「うん、頼んだよ」
まあ、ピンチになるような事は起きないで貰いたいけどね……
☆
「ふぅ……やべえ、また世に出せないモノを作ってしまった……」
【鍛冶】スキルが無いと鎧みたいな防具は作れないけど、補強する為の装飾品ならば【魔導工房】にて高性能なモノは作れた。
いまいち、防具と装飾品の境目が分からないが、アクセサリーに分類する規模なら装飾品と判断されるのではないだろうか?
ちなみに【魔鋼材】を加工して【神具】という、明らかにやってしまった名前の装飾品が完成した。
【神具】の色はダークブルーで統一されており、全てはメイド服に装置出来るようになっている。
そして、腹部には腰をぐるりと保護する様になっており、頭部はカチューシャ、肩と腕には某クロスの様な形状のものが付き、足にブーツ状のモノを装置する。
それで、セシリアのメイド服型【魔導服】に5つの【神具】を取り付けた段階で【魔導服】の名前が変化していた……
【神装魔導服】
・【魔導服】に【神具】を取り付けたもの。
装着者の属性付与効果を3倍にする。
戦闘時、身体強化を自動展開。
普段は指輪状態で戦闘時に自動装着。
「ふむ……神装、神の装備と来たか。このままセシリアを強化していけば、セシリアは神になれるんじゃないのか?」
「私が神になったら、創造主のマスターは何になるんでしょう?」
「あはは、なんだろうね?」
まあ、そんな簡単に神になれたら苦労は無いだろう。
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名前・レイ(7歳)
状態・良好
属性・雷
職種・魔導技師4.1 魔導剣士4.6
種族・人族
パッシブ・人見知り、建築、土木、料理
素材の極み、鍛冶、パラレル思考
共感覚、魔導科学、特殊採取
アクティブ・魔導操作、鑑定、クリーン
ストレージ、武器強化、雷属性付与
魔導工房、魔導具作成、魔導弾
魔導手、魔導壁、魔導剣
圧縮魔導砲、魔導細胞生成
魔導工房内・作業室、金属加工室、合成室、魔導炉
固有スキル・ジョブホッパー
鑑定の魔眼
装備・神木の小太刀
魔導圧縮銃
身代わりネックレス
重力カウンターの指輪
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名前・セシリア
職種・魔導姫
種族・魔導生命体
固有能力・魔素通話、魔素データ通信、同期
魔素圧縮吸収、魔素操作、指揮
装備・神装魔導服(メイド服)
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