第95話 職場見学⑧ ペンギン
自分はロナルド先生とカリーヌ先生をくっつけるサポートが終わり、残りの時間を水族館でコーデリアさんとシンシアさんの3人で見て回っていた。
水族館と呼ばれているから期待していたけど、半分は陸の動物だった。
何故なら水族館とは水の種族を集めた館って意味らしい。
前世のイメージで水族館って言ったらヤッパリ地球の水族館をイメージしてしまうじゃないかと思う。
ちなみに、水の種族の範囲は広く、水中に住む生物から水辺に住む生物まで含まれるので、自分のイメージならば動物園にいそうな生物までいたので、ここの水族館はかなりの広さがあった。
「へぇ、あそこにいるのはワニ……あっ、あそこにいるのはカバもいるのか……」
モロットやチェスガンには沼や水辺がほとんど無かったから、ワニやカバなど、他にも地球上にいた生物と似た生物が居ることにびっくりしていた。
いくらこの世界が地球と似たような環境を世界だからといっても、似たような生物がいることが不思議だなと思った……
まあ、魔犬や魔狼、魔猫や魔豚もいたので不思議だとは思っていたが、ファンタジー世界なので魔獣なら有りかな……と思うようにしていたが、ここまで似たような生物が別の進化をしているはずの異世界で……いや、深く考えては駄目なのかもしれないな。
「レイくんは水族館に来るのは初めてですよね? 何でそんなに詳しいんですか?」
「確かにそうだね……でも本で良く魚や動物の図鑑を見てるから知ってるんだよ。」
まあ、異世界で見たからとは言えないからな……
「どおりで名前とかに詳しいんですね。」
でもサイズは巨大だったりとか、形が違うけど。
「流石はレイくん……なんでも、詳しいです。」
「あはは。それにしても動物は良いとしても、魚は上からではなくて横からガラスごしに見たいよね……。」
水圧に耐えられるガラスを作る技術がないのか、魚は池を見ている様な状態だった。
建物に使われるガラスも透明度が低いから、技術不足っぽい。
「あとは動物や魚の名前や説明書もあると分かりやすいのにね。」
「そうですね。私達はレイくんに教えてもらってるから楽しくて良いですけどね!」
「レイさん、居れば、説明書は、いらないかな。」
「他の人は見るペースが早くて損してる感じだね。」
☆
遂に自分の人生最大クラスの楽しみにしていた場所に来ていた。
「うぉぉ~!!」
「えっ?」
「っ!?」
「生ペンギンでけぇ~!」
前世からペンギンは好きだったから、生ペンギンを見るのがとても楽しみだったのだ。
そして目の前には、見た目はアデリーペンギンだけど、全長5メートル位の巨大ペンギンが10匹も居た。
前世でのアデリーペンギンは1メートルも無い大きさだったのに……それに比べたらかなりデカいな!
ヤバい……魔法を見たときよりも驚きと感動がある……。
「レイくん、どうしました?」
「レイさん、なにか、ありましたか?」
「いや、驚かしてごめんね。あそこにいるペンギンを見て驚いちゃってね!」
「ペンギンってあのデカい動物ですよね?」
「以前、レイさんが、湖で着ていた、ダイバースーツのやつ?」
「そう、あのときのやつね!」
「あのペンギンの歩き方がヨタヨタしていて可愛いですね。」
「陸でのあの可愛い歩きに、水中での格好いい泳ぎ、やはり素晴らしい!」
「……なんかペンギンの話になると、レイくんは人格が変わる?」
「それは、私も、思いました……。」
「いや、かなり感情を抑えてるよ……?」
「「これで?」」
「仮にペンギン達と人類が戦争したら、ペンギン達に加勢してしまうかもしれない位には好きかもしれない。」
「(シンシア、私達の一番のライバルは、あのペンギン達かもしれません……。)」
「(うん……それ位、ペンギンへの、狂気を、含んでいる、気がしてきた。)」
「(打開策が全く思いつきません……。)」
「(共存?)」
「(………。)」
「2人で急にひそひそ話になってどうしたの?」
「「なんでも無いです!」」
そんな感じで水族館の自由時間が終わったのでした。
☆
【レオン視点】
俺は《ガスデール》にて、久しぶりレイに会えて良かったなと思いながら護衛任務についていた。
「噂のレイくんに初めて会ったけど、レオンを子供にしたみたいで可愛かったわね。」
「そうだろう? 流石は俺の息子だ。」
ローズはよく分かっているな。
「でもレオンみたいに強そうな感じはしなかったわね?」
「レイは俺と違って身体能力が高くないからな。だが、あれでも一年間でかなり成長したけどな……まあ、」
一年前の学園に入学する前は身体能力が全く無かったが、この一年間で毎日クラスメイトに教わったトレーニングしているらしく、随分とまともになってきたなと思う。
俺なりに実家にいるレイに身体を鍛えるコツなどを教えはしたが、やり方が合わなかったのか努力はしていたが、レイの身体能力はあまり上がらなかった。
「なるほどね、でも子供を一流の冒険者にしたがっていたレオンとソフィアとしては、ちょっと残念だったんじゃない?」
「いや、レイは一流の冒険者になれる才能はあるはずだ。」
「そうかしら? 身体能力を強化するスキルが苦手な私が言うのもなんだけど、一流になるにはヤッパリ身体能力は必須じゃないかしら?」
「それは……」
俺がローズに勘違いしていると言おうとしたら、1人の気配が現れる。
「ローズさん、レイくんを舐めない方が良いと思いますよ?」
「ひっ!? ちょ、ちょっとヒュース! いきなり現れないでっていつも言ってるでしょ!?」
「それはすいませんね。でもこれは癖みたいなものだし、長い付き合いなんだから、そろそろ慣れて欲しいかなと思うんですが」
そう、俺達が話している中、ヒュースが気配なく話しかけてきたのだ。
俺は何とかヒュースが現れる一秒位前には気配を察知出来るから、そこまでびっくりはしないが、あまり気配感知が得意ではないローズにしてみたら、びっくりし過ぎて心臓に悪いらしい。
「それよりもレイくんを舐めない方が良いって、どういうこと?」
「レオンさんは気が付いているみたいだけど……多分、今のレイくんの実力でも条件付きならばローズさんとも良い勝負が出来るレベルの実力はありますよ?」
「えっ……嘘よね?」
「レイくんは完全にローズさんと同じ遠距離が得意なタイプでしょうからね。多分、遠距離火力だけならばローズさん並だと思いますよ」
「あの歳で私並に強いって、結構ヤバいわよ?」
「本人にはその自覚は無いみたいですけどね」
俺もレイが何かを隠しているのは分からないが、ヒュースが言うのだから、相当な実力があるのは間違いないだろう……
俺としてはレイの将来が楽しみだなと思った。
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