第92話 職場見学⑤ パン工場

 職業紹介所の見学も無事?に終わり、パン工場に向かっていた。


「俺はパン工場に来るの楽しみだったんだよな。」


「ああ、ブラットは昔から菓子パンが好きだよね。」


「菓子パンはおふくろが忙しい時しか食えなかったし、今は寮のご飯だしな。 お昼にパンが出るみたいだから楽しみなんだよ。」


「普通、こういう工場に出るお昼に菓子パンは無いんじゃないかな……。」


「マジか……。 楽しみにしていたのに。」


「出るか出ないかは、まだわからないけどね。」



 ☆


 パン工場に着いて最初に思った事が……。


「工場内が暑いよ……。」


「レイの感想はそこかよ。 普通はでけーとかだろ?。」


「確かにデカいよ……?。 しかしそれ以上に工場内が暑いよ。 ブラット以外はみんな暑そうだよ?」


「……本当だな。 俺は鍛冶場で暑いのに慣れてるからか?」


「それはあるかもね。」




 パン工場の見学が始まったが、案内のおじさんがまず驚いたのはブラットを見てだった。


「この暑さで大丈夫な子供が居るのは凄いですね~。 火属性の人はパン工場に欲しい人材ですからね。」


「俺、パン屋も良いかもしれないな……。」


「ブラット、戦闘系に就職ならまだ良いけど、鍛冶屋にならないでパン屋になったら、おやじさんがショックを受けちゃうよ……。」


 ブラットは本気で悩んでいそうだな……


「まあ、工場の説明をしましょう。ここは部門事に役割が違います。 販売部、開発部、営業部、そして製造部。」


(工場内に営業部もあるのか……)


「製造部は食事パン、菓子パン、デザートに別れていて、食事パンに関しては 《ガスデール》で消費される9割を作っています。 菓子パンは開発部が日々考えるものを試作したりしています。 もちろん人気商品の製造もしています。 帰るときにお土産でお渡ししますね。」


「おお、楽しみだ~。」


「デザートは工場近くにあるカフェに出すものを製造しています。 こちらは特殊で開発兼製造をしています。 販売部は出来立てを販売したり、提携してるところに販売しににいきます。 営業は新しいお客様を探したり、契約、クレーム対応なので一番つらい仕事ですが、慣れたら楽しいと思います。 それでは見学していきましょう。」




 ☆



 食事パンは前世でのフランスパンやバターロール、食パンなどだった。


 これだけデカい工場だから製造ラインで流れ作業かと思ったが、職人が担当の同じパンをひたすら焼いていた……。


 もっと効率的に出来そうだけどなぁと思った。


 見学が終わったらカフェに行き、お昼ご飯が出された。パンとシチュー、サラダが出たので美味しく頂いた。



 そしてお土産の菓子パンは多種多様で総菜、クリーム、揚げ物いろいろだった。


「ではこちらの菓子パンは味などは変わらないけど、見た目や焼き色などで売れないものなので、好きに持っていって良いですよ。」


 かなりの量の菓子パンだったが、山になっているのを見てブラットは珍しくハシャいでパンを探していた。


「こんなに売れない商品が出るのですか?」


「火加減など安定しない時は多くなりますね。 でも働いている人が持って帰るので余らないですけどね。」


(コンロとかは火力が安定してるのに大型化すると安定しないのかな?)


「火属性の魔石が安定して供給されてないとか?」


「よくわかりましたね。 最近、魔獣は増えてるらしいですが、魔獣討伐に火属性の魔石は人気ですからね。 供給が足りてないみたいですよ。」



「おー! チョコパンをゲットだぜ!」


 ブラットの大好きなチョコパンを無事ゲット出来たらしい。



 ☆


 最後のデザート開発している場所に訪れたら、なぜか修羅場になっていた。


「こんなパンケーキではなかった!」

「な、なぜ再現出来ない……。」

「くそっ、こんな出来ではカフェに出せない!」

「俺達は一度食べれば再現出来ると自惚れていたのか!」



 予想外な雰囲気に案内のおじさんが困りながら話しかけた。


「みなさん、どうしたのですか? 今日は職場見学の日なので和やかな感じでいてくださいよ!」


「ん? ああ、すまない……。」

「申し訳ない。少し取り乱したな……。」


「なにがあったのですか?」


「最近、 《チェスガン》にお菓子作りの神がいるのは知っていますか?」


「……神? いえ、わかりません。」


(それって……。)


「そこのお菓子は地元か一部の人しか買えないらしくて、代わりにパンケーキを食べさせて貰ったのですが、今まで最高のパンを作っているプライドが馬鹿らしくなる位の美味しさで、その味を再現したくて頑張っているのですが………。」


「自分達には……。」

「再現しようなんて、まだ現実が見えてなかったみたいだ。」


(……セシリアショップってそんなことになってるのか。)


「弟子入りもしたかったが、誰が作っているかも秘匿されていて出来なかったんだ……。」



 セシリアショップの件はますます秘密にしなくてはいけなくなった気がした。




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