第86話 風の魔装

 昨日コーデリアさんから聞いた【聖霊眼】の検証がしたくてセシリアショップに来ていた。


「こんにちは、リリさん、ネルさん。お店には慣れましたか?」


ちなみにあまり店舗に自分が出向いても仕事の邪魔になるだろうから、様子を見に来るのはトラブルが無い限りは週に1回程度にしている。


「お疲れ様です!」

「お疲れ様ぽん」


「お店には慣れました、でもやっぱり食堂に比べるとピークが凄く短い代わりに修羅場になりますね」


「私も慣れたぽん。だけどお客さんからは限定30個をやめて欲しいって要望が多くて販売してるより説明してる方が大変だぽん。」


「あ~。それは諦めて貰うしかないかな、これ以上増やすと僕がずっとお菓子作りする事になりそうだしね。」


「お菓子の飾り付けやデコレーションだけでも私達が代わりにやるのでもダメですかね?」


「……イートインではなくなりそうだし、忙しくなるけど試しにやってみる?」


「はい! やってみます。」


「それなら、パンケーキってのをやろうと思っているけど、前もって焼いといて、出すときにセシリアに温めてもらい、リリさんとネルさんが用意しておくクリームとフルーツで飾り付けてみてくれる?」


「温めるのも私達でやりますよ?」


「いや、特殊な【魔道具】を使うから2階のセシリアにやってもらおう。」


 流石に焼き立てが出て来たら時間停止している【ストレージ】を使えるのがバレそうだから、セシリアに温めてもらう振りをして偽装しよう。


「これなら割と準備は簡単で種類はトッピング次第でかなり増えるかな。季節ごとにフルーツとソースを変えたりね。」


「凄く美味しそうぽん!」


「1日10食から始めて、様子見で20食まで増やそうか。」


「わかりました! 出来ればもっと欲しいですけどね。」


「それは……個別注文も3件でストップして貰ってるしね。」


 貴族?と騎士団?の他に劇団員?が追加された。

 この3件は露店の時からいろいろと買って貰ったから、特別対応していた。




 ☆


 セシリアショップの話な終わった後、セシリアと一緒に街外れの平野に来ていた。


「昨日のコーデリアさんとの会話は聞いていたよね?」


「はい、聞いておりました。マスター。」


「今日は【聖霊眼】を擬似的に再現出来ないか試したいんだよね。たぶんだけど【巨大結晶】の縮小版である【魔導スライム】なら【聖霊眼】の劣化性能でも良ければ再現出来ると思ってね。」


「マスターなら【魔導スライム】を使わなくても魔導でそのうち再現出来ませんか?」


「ああ、今回試すのはセシリアなんだよ。護身術的な感じでね。それに僕はまだ属性付与が雷しか出来ないから無理かな。」


「私がですか?」


「うん、それに【魔導スライム】と直接【同期】してるのはセシリアだからね。僕はセシリア経由で【魔導スライム】と【同期】はしている様なものではあるけど、いまいち直接操っている感じにはなれないんだよね。だから試せるのはセシリアだけなんだよ。」


「そういう事ならば私が試してみます。」


「うん、やり方は風の【魔導スライム】に【同期】して力をセシリアに付与する感じのイメージで試してみて。危なそうなら僕がすぐに止めるから。」


「やってみます。」



 ☆



【ブルーノ視点】


僕は最近になって、心配事があったので普段は会いに行かないお姉ちゃんの職場である女性騎士団に来ていた。


「あの、姉……アリエルに会いたいのですが……」


僕は騎士団の入口で見張り番をしている女性に話しかける。


見張り番の筈なのに圧倒的威圧感があり、僕では逆立ちしても勝てないだろうとすぐに分かるほどに強そうだった。


もしかしたら、お姉ちゃんより強くないか?


「おっ、お前はアリエルの弟じゃないか!」


「あ、僕を知ってるんですか?」


見張り番をしている女性は僕のことを知っているみたいだった。


騎士団には数回しか来てない筈なんだけど……?


「そりゃあ部下の家族構成位は把握しているよ」


「部下?」


「ああ、今は見張り番をしているが、私はこの騎士団の副団長だ。よろしくな! ハッハッハ」


バシバシっ……


見張り番の女性かと思ったら、副団長って……


そりゃあ強そうなのも納得した。


というか、力が強いからか……防御力には自信のある僕ですら、副団長が軽く肩を叩くだけでもかなりの痛みがあった。


これって本気で叩かれたら、鎖骨とか簡単に折れそうだな……


「よし、アリエルのところには私が案内してやろう!」


「ありがとうございます」


「ふむ、可愛い上にアリエルとは違って礼儀正しいな……アリエルの話ではお前は騎士団への入団希望しているだろう?」


僕と副団長は廊下を歩きながら話し始める。


僕が入団希望なのはお姉ちゃんから聞いたのだろう。


「はい」


「だが、騎士団に入るには学園を卒業後、最低でも三年間は王都の騎士学校に通わなくてはいけないだろう?」


「そうですね」


今は学生寮暮らしで一人暮らしみたいではあるけど、お姉ちゃんが近くに暮らしているという安心感があったが……騎士学校に通うなら完全にひとりになるので、その不安は凄い。


「ふむ、お前は女装したら、うちでも働けそうだな……」


「えっ、女装?」


「いや、何でもない」


いやいや、今女装って言いましたよね?


そんな疑問の残るタイミングで騎士団員が訓練中の広場に到着した。


「アリエル! お前の弟が来ているぞ!」


「えっ~? ブルーノ? どうしたの、ここに来るなんて珍しい~!」


「お姉ちゃんに相談したいことがあってね」


「なるほど……さてはマーティナちゃんの件だな~?」


「えっ、何で話してもいないのに分かったの?」


「マーティナちゃんは定期的にここで私達と一緒に訓練しているんだけど、ちょっと心配になっていてね~」


「心配?」


僕と同じことをお姉ちゃん達も感じているのか……


「うん、急に才能が開花したみたいに強くなったのは素晴らしいのだけど、何というかたまに苦しそうな表情をするんだよね~ 私達がいくら聞いても大丈夫ですってしか言わないし~ ブルーノも同じ相談じゃない?」


「うん、僕の相談もその件なんだ。」



 ☆



【レイ視点】


 セシリアが擬似的に【聖霊眼】の能力を再現し始めてから1週間後……セシリアから魔素通話がきた。


『マスター、以前言っていた【聖霊眼】の再現ですが、【風の衣】を取得しました。』


『お~。思ったより早くに取得する事が出来たね。』


自分が想定していたよりもだいぶ早いなと思った。


実際に再現出来たらラッキーレベルだったから、上手くいっても数ヶ月はかかると思っていたけど、まさか一週間とは……でも、その後のセシリアからの報告は更に予想外だった。


『ですか、取得したのは私ではなくて風属性の【魔導スライム】がです……。』


なんと、能力を取得したのはセシリアではなく、【魔導スライム】の方だったのだ……


【魔導スライム】って能力を取得出来るんだな!と思った。


『……そっちが取得するパターンなんだね。』


『はい、私は【魔導スライム】を介して【風の衣】を使うことは可能です』


『それなら僕も【魔導スライム】を介してなら【風の衣】を使えるのかな?』


『申し訳ありません、マスター。【魔導スライム】が取得した場合は、私にしか【同期】によるスキル付与は出来ないみたいです。』


『なるほど、直接【同期】してないとダメなのか……でも、それなら当初の目的は達成だね。それで【風の衣】の性能は?』


『防御力ははっきりしませんが、今のところは身体の周囲に風の膜を張り、攻撃の軌道をずらす程度だと思います。使用時間は1日2時間位の発動が出来ますが、その後は【魔導スライム】が疲れて眠りにつきますね。』


『練度があるかもしれないから暇なときにでも練習しておいてね。』


『わかりました。マスター。』




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 名前・レイ(7歳)

 状態・良好

 属性・雷

 職種・魔導技師3.7 魔導剣士4.6

 種族・人族


 パッシブ・人見知り、建築、土木、料理

      素材の極み、鍛冶、パラレル思考

      共感覚、魔導科学、特殊採取


 アクティブ・魔導操作、鑑定、クリーン

       ストレージ、武器強化、雷属性付与

       魔導工房、魔導具作成、魔導弾

       魔導手、魔導壁、魔導剣

       圧縮魔導砲、魔導細胞生成


 固有スキル・ジョブホッパー

       鑑定の魔眼


 装備・神木の小太刀

    魔導圧縮銃

    身代わりネックレス

    重力カウンターの指輪


 ーーーーーーーーーーーーーーー


名前・セシリア

職種・魔導姫

種族・魔導生命体


固有能力・魔素通話、魔素データ通信、同期

     魔素圧縮吸収、魔素操作、指揮


装備・魔導服(メイド服)


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