第82話 勇者(笑)②
【マリア視点】
【聖女】の職種を授かった事で、幼なじみのアーサーと共に中央の聖教会に来てから1年が経った。
一緒に来たアーサーとは、あれから一度も会えてはいないが、相変わらず、解らないことを話す病気は治っていないみたいで……。
「異世界通訳がないなんて聞いてないぞ!」
「俺はこんな低レベルな勉強はする必要がない!」
「俺の言うとおりにすれば国は大きくなるぞ!」
「早く、PLでダンジョンに連れて行けよ!」
「魔王を倒してやるから、美人な王女と婚約させろ!」
聖人様が言うには邪神の影響を受けているかもしれないと言っていた。
念の為、現在は豪華な部屋で軟禁状態になっているらしい。
そして、わたしはこの一年間、聖教会の【聖人】のお手伝いやお祈り、勉強をして過ごしていた。
「マリア、【聖都】パディウムの生活には慣れましたか?」
「はい、……様。パディウムの生活には戸惑いしかありませんが、何とか生活しています」
この【聖都】は私が今まで生活していた村とは別世界の様な場所で、現在わたしが生活している部屋も42階にある一室で、窓ガラスと呼ばれる透明な板からは【聖都】の不思議な風景を一望することが出来た。
一番最初に【聖都】を見たときは、あまりの異質さに恐怖したけど、人は恐怖に慣れるのか……最初に見た恐怖感は無くなっていた。
それでも、食べ物や着る服、勉強道具など、私が知っているものとは全く違っていたので、一年経っても戸惑いは消えない。
「そうでしょうね。この【聖都】は数千年前から存在する超古代文明の遺産が丸ごと残った唯一の場所ですからね。」
「……様、わたしはこれだけの文明が【聖都】に有りながら、何故わたしの住んでいた村には普及しなかったのでしょうか?」
わたしはこれだけ凄い文明が残っているのなら、わたしの村ももっと住みやすくなっていてもおかしくはないと一年間ずっと考えていた。
「そうですか……マリアはそこまで考えて……ではそろそろ【ディープラーニング】を使う時期でしょうか」
「【ディープラーニング】とはなんですか?」
「マリアにも分かり易く説明すると、簡単にいろいろな知識が増える学習道具です」
「そんなものが……?」
そんなものがあるなら一年間勉強せずとも良かったのでは?と思ったけど……
「最初から【ディープラーニング】を使わせてくれれば苦労しなかったのにという表情ですね?」
「そ、それは……」
「別に責めている訳ではありませんよ。マリアの考えは当然のことです。ですが【ディープラーニング】には調整が出来ないと言いますか……【聖都】建国の1人、科学者・麻藤玲奈以外は調整が出来ないので知らなくても良い知識まで学習してしまう欠点があるのです。ですから一般人には使用出来ないのです」
「そうだったんですね」
「明日から【ディープラーニング】を開始しますので、今日はゆっくり眠りなさい」
「分かりました」
☆
【アーサー視点】
俺は転生してから何年も部屋に軟禁され、全く思い通りにならずにイライラしていた。
「おいメイド! 早くこの部屋から出せよ!」
「アーサー、何度も言いますが私はメイドではないですよ?」
「メイド服を着ているんだからメイドだろ!」
この俺を監視している女は、メイドカフェに居そうなメイド服を来た黒髪の女なのだが……
最初は超古代美人メイドと仲良くなるチャンスかと思ったが、この女は機械の様に感情が感じられない冷酷女だったのだ。
「ただアーサーの面倒を見ているだけです。」
「くそっ。お前なんかより獣人奴隷とかに世話をして欲しいんだよ!」
この女はいつもこれだ。
お前みたいな奴より猫耳獣人メイドに世話してほしい。
「はぁ~。アーサーがよく言う内容の奴隷なんてものはありません。犯罪者でも非人道的な扱いは許されていません。償えない程の罪の場合は、苦しまずに魂の浄化がなされます。」
「獣人奴隷を育ててハーレムパーティーに入れるとかテンプレだろ!」
「アーサーは何故、そんなに外へ行きたいのですか?」
「何故? そんなの魔王を倒すために早い内からレベル上げしたいからだよ。」
「……前から言っていますが、魔王は悪い人達ではありませんよ?」
「俺は知ってるぞ、魔王はみんな【大罪】のスキルがあるって。そんなスキルを持っていたら悪者だろ!」
「【大罪】スキルは相手に罪を自覚させ、己の罪で死を誘うスキルです。しかも発動させるのは邪神に洗脳された罪人にのみです。どちらにしろ当分は外に出れませんよ。」
「お前等こそ騙されてるんだよ!」
☆
『アーサー、お久しぶりですね。』
『おお! その声は女神だな? ては現れるのが遅くないか?』
『随分と苦労しているみたいで申し訳ないですね。』
『本当だよ。俺の言うこと聞いてくれないし、どうなってるんだよ、この世界は。』
『実は現在、この世界は元々私達、女神が支配していたのですが……悪い神に騙され支配権を乗っ取られているのです、ですから女神である私はこの世界にあまり干渉することが出来ません。ですがアーサーには頑張って溜めた私の力の一部を貸し与えるので、この世界を救って欲しいのです。』
『やっぱりそうなのか!』
『まずはここから出る為に【聖人】の結界を抜けなくてはいけません。1回だけですが【聖剣召喚】を使用出来る力を与えます。』
『封印中だった【聖剣召喚】だな!』
『あと逃げた後、あなたには仲間が必要になると思います。本来なら人類が良いのですが、悪い神に洗脳されている可能性が高いです。』
『確かに、ここの【聖人】すら洗脳されてるみたいだしな。』
『そこで魔獣なら神の干渉外なので、魔獣を従えるスキルを与えます。このスキルは魔獣を成長させ、人類のように人型に進化させられるものです。』
『あと、貴方には私の加護も与えましょう。 それにより他の神から干渉出来なくなります。』
【魔獣従属進化を取得しました。】
【女神の加護を取得しました。】
『これだよ。これ! 獣人ハーレム! 女神はわかってるな。』
『ありがとうございます。次に干渉出来るのは数年後位ですが頑張ってください。』
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名前・アーサー
状態・良好
属性・光
職種・勇者
種族・人族
アクティブ・剣術、盾術
パッシブ・神託、魔獣従属進化(思考誘導は非表示中)
女神の加護
固有能力・(聖剣召喚は隠蔽封印中)
野生の勘
ーーーーーーーーーーーーーー
名前・マリア
状態・良好
属性・光
職種・聖女
種族・人族
アクティブ・祈り、聖域化、回復
パッシブ・信仰
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