第80話 虹結晶
湖から帰って来てから数日が経過した。
結局、アルフレードさんの事に関しては全く思い出せないでいたので、エレナとブラットに湖でこんな事があったと話してみた。
「アルフレードって貴族? 俺は知らないな……そもそもレイが憶えてないのに俺が憶えているなんて事は無いだろ」
「そんな自信満々に記憶力の無さを宣言されても……エレナは?」
「私はレイが憶えていないのなら気にしなくても良いと思うにゃよ。それにそこそこの貴族の権力よりもレイの両親の方が頼りになるって意味ではかなりのものにゃ」
「そう言うものなのかな? って僕の両親って貴族より権力あるの?」
「権力じゃないにゃけど、そのうち分かって来ると思うにゃ……それよりも最近、またレイがいろいろな資材を買い込んでいるみたいにゃけど、今度は何をするつもりにゃ? 特に解体屋に変な注文をしたらしいにゃよね?」
「な、何故それをエレナが……?」
確かに自分は最近になり資材というかクズ魔石や魔獣の血……特に魔獣の血は多種多様な血が欲しいと注文したり、その他にも普通の人からしたらゴミみたいなものを格安もしくは無料で貰ったりしているが、基本的に変装してから買いに行っているので、身バレはしない筈なんだけど……何故バレた?
「それは秘密にゃ」
「エレナの調査能力が怖いんだけど?」
「まあ、そのうち秘密を教えてあげるにゃよ」
☆
自宅地下の研究部屋にて……
少し前から量産体制に入っていた【虹結晶】20個のなかにわずかだが自我らしきものを持ち始めたようだった。
とは言っても、セシリアみたいな高い知性を持った個体は無くて、良くて1歳児位の知性しかなく、しかも言葉すら話せず意志も微かに伝わってくるみたいレベルのものが13個で、残りの7個はまだ反応はない。
「この13個の【虹結晶】は、セシリアみたいに成長すると思う? どうも僕にはそうならない気がするんだけど……。」
感覚的なものになるのだが、セシリアみたいな感じになるとは思えないんだよな……
セシリアの【虹結晶】は最初から自我が芽生える仕様になっていたのかは分からないが、今ある【虹結晶】とセシリアの体内にある【虹結晶】が同じものには見えなかった。
「私もハッキリとはわかりませんが、私の様に【魔素圧縮吸収】などの能力を取得が出来ればわかりませんが分かりません。」
「ああ、そっか。もしかしたら【虹結晶】の取得した能力に自我があったみたいな感じなのかな?」
それならばセシリアの【虹結晶】は【魔導具】製作時の初回限定、超レアな当たりを引いたパターンかもしれないな。
その仮説が正しいなら、セシリアみたいな自我に目覚めるタイプは今後現れないけど……確定している訳ではないからな……引き続き試し続けようとは思う。
「【虹結晶】の付与されている能力自体が個体差により取得出来るものもバラバラですからね。あとこの【虹結晶】達は私と常に【同期】していたので私の知識が流れて、それがキッカケで自我に近いものに目覚めた感じですから、もしかしたら私のコピーに近い感じかもしれません。そうならば、これ以上の成長する可能性は低いかもしれません。」
「うーん。セシリアみたいに身体を造るのは全く問題ないのだけど、見た目を子供にしたとしても精神年齢がずっと1歳児レベルが続くとなると……世間へ出せなくなるのがな……。」
自我があるのならセシリアみたいに自分の意志で外へ出たり活動して欲しいと思うけど、ずっと幼児レベルでは家から出せないんだよな。
「それでしたらマスターに提案があります。」
「ほう、どんな案なの?」
「この【虹結晶】達を思い切って精霊の様な存在にすれば問題ないと思います。もしくはマスターがたまに言う人工知能とすれば宜しいのでは?」
「確かに、セシリアもアンドロイドみたいなものだけど、ほとんど人体と変わらないからバレないだろうけど……あとは聖教会の方で倫理的にどこまでがセーフなのか知りたいな。基本的に聖教会がダメなら別の案にするしかないしね。」
聖教会は電気などの前世の世界で普通に普及していたような科学的なものをほとんど禁忌指定していたりするが、どこまでがセーフなのかは明言していないので、はっきりと科学的な人工生物ですと言うのは怖いんだよな……
「そうですね、それでしたら人造魔獣とかにして、使役された魔獣にするのはどうですか?」
「精霊や魔獣かぁ……あまり良い形が思い浮かばないな。」
ペット的なものだと可愛い犬や猫しか思い浮かばない……
「【虹結晶】が13個ですから各属性の精霊という設定にしてはどうでしょうか?」
魔導伝説によれば全属性は14種類あり、【神】属性は実質存在しないとして、それ以外で存在する属性は【火】【水】【風】【土】【木】【闇】【時】
【雷】【氷】【熱】【空】【重】【光】の13種類らしい。
まあ【時】属性も本当に存在するかは疑わしいが……
「確かにそれもありかな……そしたら神属性以外の全属性に変化する可能性を秘めた【虹結晶】だけど、どうすれば各属性に特化した結晶になるかな……?」
「それですが、【虹結晶】を私が各属性になるように直接【同期】し、【虹結晶】に各属性だけを吸収するように操作すれば理論的には可能だと思います、ですが問題は【虹結晶】自体に吸収方法は無いので私みたいに改良しないと無理ですね。」
なるほど、セシリアのやろうとしている事は理解した。
「しかし【同期】でそんな遠隔操作みたいな事が出来るの?」
「はい。現在13個の【虹結晶】は自我が薄いので【同期】すれば意志を誘導したり出来ます」
そうなると【魔素圧縮吸収】機能の【魔導具】を作るか?
魔素圧縮なら出来るしな……。
あとは【魔導服】を応用すれば可能な気がしてきた……。
☆
13個の【虹結晶】に各属性特化型の人工精霊を造る為、自宅地下にて一週間にも及ぶ試行錯誤の実験をした結果、13体の擬似スライムがポヨポヨしている。
そして、完成した属性スライムは各属性に対応した色にうっすら光っている。
魔導スライムのサイズは15センチ位でもう少しデカくなる予定だ。
魔導スライムの内部には【虹結晶】【魔石分解珠】【魔素属性変換珠】【魔素固定珠】が搭載され、4つの珠がスライム内でふよふよしている。
スライムコアのイメージである。
食事は各属性の魔石になり、【魔石分解珠】で魔石を分解して【虹結晶】へエネルギーを送る。
スライムの外装?は【虹結晶】が外部の魔素を【魔素属性変換珠】と【魔素固定珠】で変換と固定をやっている。
当初は【虹結晶】にセシリア経由で精霊っぽいイメージを送り、精霊の形になって欲しかったが無理だった。
そして一番シンプルな球体になった。
知能は成長しなくても能力は上がるかもしれないと言っていたから、いつか精霊の形になってくれるかもしれない。
あと口は付けなかったからか言葉は話さず【魔素通話】と【魔素データ通信】で意思を伝えてくれるはずだが、上手くいかない。
とりあえず、庭に出しても大丈夫かな。
……討伐されないよね?
使い魔として登録とか出来るのかな?
このスライム達に個別の名前はつけず【魔導スライム】と呼ぶことにした。
「セシリア、【魔導スライム】達の管理は任せても良いかな? 基本的には迷惑にならなければ自由にさせて良いけどね。」
「わかりました。 私と【同期】しているので統率は取りやすいです。」
「助かるよ。資金面的にこれで【虹結晶】を作るのは一旦終了にしようと思う。他にも作りたいものがあるからね。」
本当はもっと大掛かりに続けたかったが、これ以上やるとなると大量生産して、当たりを引き当てるまでやり続ける資金が現状無いので、一旦は終了にすることにした。
「残りの7つの【虹結晶】はどうしますか?」
「ちょっと考えている事はあるんだけど、まだ成長させたいから機械の中で管理かな。」
「わかりました。」
【魔導スライム】達の面倒を見ることでセシリアの表情が豊かになった気がするのだった。
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名前・レイ(7歳)
状態・良好
属性・雷
職種・魔導技師3.7 魔導剣士4.6
種族・人族
パッシブ・人見知り、建築、土木、料理
素材の極み、鍛冶、パラレル思考
共感覚、魔導科学、特殊採取
アクティブ・魔導操作、鑑定、クリーン、ストレージ
武器強化、雷属性付与
魔導工房、魔導具作成、魔導弾
魔導手、魔導壁、魔導剣
圧縮魔導砲、魔導細胞生成
固有スキル・ジョブホッパー
鑑定の魔眼
装備・神木の小太刀
魔導圧縮銃
身代わりネックレス
重力カウンターの指輪
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名前・セシリア
種族・魔導生命体
固有能力・魔素通話、魔素データ通信、同期
魔素圧縮吸収、魔素操作
装備・魔導服(メイド服)
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