第73話 魔獣研究クラブ

 今日は初のクラブ活動授業なので、自分が選択した魔獣研究クラブに来ていた。


 教室に入ってみると自分を含めても生徒は6人しか居なかった……。


 あれ、思っていたより人数が少なくないか?


 休んでいるのかな?


 いや、魔獣研究なんて名前は微妙だから、不人気のクラブだったのか……?


 それにしても、みんな小さな生き物を可愛がっていた。


 犬っぽいちょっと大きめの生き物から、リスみたいな小さな生き物ものまで、6人とも別々の生き物を可愛がっている。


あれはペットなのだろうか?


この世界というか、王国ではペットを飼っている人はほとんど見たことがないし、ペットを散歩している人は更に見たことがない。


流石は魔獣研究を選ぶ子供たちだけはある……というか、あれはもしかして魔獣なのか?


いや、魔獣なんてそもそも飼えるのか?


自分の中での魔獣というと魔犬と魔狼、魔兎位なのでどれも理性はなく、近くに敵がいれば襲いかかってくる生き物というイメージである。


魔獣研究クラブの6人を見てみると、女の子2名に男子が4名で男女比率で言えば男子が2倍であった。



 しばらく待っていると、授業の開始時間になり先生が入ってきた。


「はーい! みんな久しぶり? 今年もよろしくね?」


 入って来た先生はたぶん兎獣人族だろう。


 黒いウサ耳と黒い尻尾、茶色の髪と瞳。


 身長160位……


 そこまでは良いのだが……服装はなぜかバニーガール。


 先生としてそんな服装で良いのか?とも思ったが、話したことは無いが他にも先生っぽくない先生は何人かいたので、個性派ということで許されているのかもしれない。


 しかし、この学園の先生は服装以外にも、たまに変な人が居るな……先生になれる基準が知りたいときがある。


「今日から新しくクラブに入った子が居るんだよ、名前はレイくんだね? 自己紹介よろしく?」


「レイです。よろしくお願いします。魔獣に興味があってここに入りました。」


「魔獣に興味があるのはよいことだね? それでレイくんの使役している魔獣は何かな? 今日は連れてきていないのかな?」


「はい? 使役している魔獣ですか?」


「そうだよ? レイくんにも使役している魔獣がいるでしょ?」


「いや、いませんよ?」


「ああ~なるほど、なるほど、これから使役するんだね?」


先生は自分が魔獣を使役していると決めつけたような感じで話を進めていく。


なんだろう?


嫌な予感したしないのだが……


「……えっと、僕は【魔獣使い】ではないので魔獣は使役しませんよ?」


「「えっ!!」」


 自分の発言に教室の全員がビックリしている。


 なぜだ?


「みんなは【魔獣使い】なんですか?」


「そうだよ? 魔獣使い地位向上研究クラブを略して魔獣研究クラブだからね?」


「……えぇ? そんなこと書いてありましたか?」


「ロナルドが変わったやつが入るって言っていたのは、こういう事なんだね?」


「あー、そう言うことか。」


 ロナルド先生は自分が魔獣研究クラブに行くと言ったとき、闘技クラブや魔法クラブに行かなかったから、職種に関係の無いところへ行くと思ったのか。


「それにしても何で紛らわしい略し方をしてるんですか?」


「クラブ活動の紹介では略してないはずよ? もしかしてロナルドが口で説明しただけなんじゃないの? 普通はクラブ活動の詳細が書いてあるプリントを配るんだよ?」


「クラブ活動の名前だけ書いてあるプリントは渡されましたよ。」


「それは先生用で生徒用は別にあるんだよ? ふむふむ……これはロナルドのやつはあとで説教かな? いや、説教で済ましてはいけない気がするな? ちなみにレイくんは今からならクラブを変更してもよいけど、どうする?」


「ちなみに魔獣使い研究クラブは魔獣の説明もするんですよね?」


「うん、うん、それはもちろんするよ? 魔獣の特性や好み性格などの説明をするかな?」


「それなら大丈夫です。僕は魔獣の事が知りたくて入ったので……それに【魔獣使い】の事を学ぶのも悪くないと思っていますから」


もしかしたら【ジョブホッパー】の転職で【魔獣使い】みたいな【職種】が選択肢に出るかもしれないし、憶えておいても無駄にはならないかもしれない。


「レイくんは良い生徒だね? これはますますロナルドのやつは許せないね? これはどうしてやろうかな?」




 授業後、ロナルド先生はかなり怒られたらしい。



 ☆


 授業後、自宅地下にてセシリアの最終仕上げを終わらせて完成させていた。


 外見はほとんど人類と同じに作っているから見た目では解らないかもしれない。しかし作られた顔は完全に左右対称で人によっては違和感をもつかもしれない。


 あと、傷ついても血が出たりするのはまだ再現が出来なかったのでまだまだ改良しなくてはいけないなと思う。


 舌や口、胃までは作ったが、基本的にセシリアは物を食べる必要は無くて、食べたものは魔素として吸収されるだけなのだ。


 だから、胃などは作ったが食べなくても問題ない作りになっている。


 そして顔の筋肉を微調整するのが結構大変だった。ちょっと筋肉の配置がズレるだけで変な笑顔になったりしたからだ。


 あとの問題はセシリアに痛覚や恥じらいや喋る為の口や舌の動かし方を学ばせないといけないのが大変だ。


特に痛覚はどうしようかな?


今のところは痛覚などは分からなくても問題無いが、普通の人が感じるものが分からないとなると、かなり悪目立ちするのは間違いないだろう。


 もちろんだが、セシリアを学園寮に連れていく事は出来ないから、しばらくの間は自宅内での掃除をしてもらい、身体の動かし方に慣れてもらう事にした。


 最終的にセシリアには店舗部で働いてもらうつもりだが……。


 オーナー マカロン(レイが変身)

 お菓子販売 セシリア

 雑貨販売 未定(人を雇うか迷っている。)

 配送部門 未定(人員と馬車をどうするか迷う。)


 最初の予定としてはお菓子販売だけさせて、慣れてきたらオーナーもセシリアにしよう。


 土地を購入したり物を作るのは得意だが、人を雇ったり、指導するのは苦手で精神的に難しいから人を雇うか迷ってしまう。


「セシリアみたいに他の【虹結晶】にも自我が目覚めればセシリアみたいな感じで量産出来たら良いんだけどな。セシリアと何が違うのかな?」


「わかりません、ますたー。まだわたしの【虹結晶】ほどおおきくないからかもしれません。」


「セシリアの身体がまともに動かせない今の状態を他人に見せるわけにもいかないから、夏頃の予定だったオープンは少し延期かな……とりあえずセーラさんの食堂には自分が帰省した時にまとめて渡すかな? お菓子保存限定の箱型【ストレージ】作って貸しちゃおうかな。」


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