第72話 セシリアの服

 セシリアの身体が完成したのは良かったが、服を用意するのを完全に失念していたので、セシリアの服を買いに服屋へ来ていた。


自分で理想の女性を造ったけど、セシリアの身体を見ても全く興奮などはせず、前世で理想のフィギュアを造ろうと頑張っていた時の感覚に似ていた。


だからだろうか……セシリアが裸だというのに大した違和感を感じなかったのだ。


それにしても、再度セシリアを見たとき、感動と共に懐かしい感じがしたのは何故だろう?


前世では大した出会いも無かったはずだし、セシリア見たいな美人の知り合いがいれば忘れることはまず無いだろう。


何だかモヤモヤするな……


まあ、分からないものは仕方ない。


 それよりも今はセシリアの服を買いに来たのだ……


ちなみに、ここのお店は以前エレナに連れられて来たおしゃれな洋服店だ。


 エレナの事を学園でしか知らないクラスメイトには意外だろうが、山に行かない日や修練をしない日のエレナが着ている服は、かなりオシャレな格好をしている。


 店内に入るとたくさんの種類の服があった。


 着やすそうな部屋着から、セクシーな下着、魔法師用のカッコいいローブ、剣士用のインナー、レンジャー用の服、メイド服、お洒落着など……ほんとうにいろいろあるな。


『ますたー。いっぱいありますね!』


『ああ、ありすぎて選べないよ。とりあえず買うのは部屋着数着と下着を10日分くらいか? ああ、女性下着を買うのはハードルが高いな……こんな事なら女性に変身してくれば良かったな。』


またしてもセシリアの服を数着買えばよいかなと思って服屋に来たけど、視界に下着が見えた事で下着も買わなくてはいけないことを失念していた。


……どうしよう。


『ますたー。あそこにきゅうじようってかいてあります。』


下着をどうしようか悩んでいたら、セシリアは給仕用と書かれたメイド服が気になるみたいだった。


給仕用と書かれたメイド服はガチメイド服が数種類置かれており、隣にはファッション給仕服と書かれたアキバなどに売っているメイド服が数種類あった。


『あれはメイド服だよ。しかしセシリアはメイドではないから、別の服にしようか。』


セシリアには普通の部屋着を買ってあげたいなと思っているのでメイド服は無しの方向でいこう。


『ますたーにおつかえするのであれがいいです!』


しかし、セシリアは自分に仕えるのだからとメイド服を推してきた。


『いや、僕はセシリアを家族だと思ってるから、家の中位は自由にして欲しいんだ。』


『わかりました。それではあそこにある、ふぁっしょんきゅうじふく2がいいです。』


 そこにはメイドカフェでよく見るような露出の高いメイド服があった。


『……これはもうメイドコスプレじゃないか? まあ、セシリアが欲しいなら買うか。本当にこれで良いの?』


『はい!』


『それじゃあメイド服を一着買って……他の部屋着を……』


『すべてきゅうじふくにしてください!』


『えっ……』


それから数分間セシリアを説得してみたが、セシリアの意志は堅そうなので、自分はセシリアにファッションメイド服を数着買うことにしようかな。


「店員さん、この服などを……」


自分はファッションメイド服を5着、似たようなデザインだが少し違うメイド服を棚から取り、買うために店員さんのいる方に持っていく。


「あれ? 何でレイくんがここにいるの?」


「えっ……?」


振り向くと、そこにはクラスメイトのマーティナさんと見たことのない年上のお姉さんがいた。


マーティナさんもお姉さんと一緒に買い物にきたのかな……ってヤバいな。


自分はとっさに手に持っていたメイド服などを背中に隠す。


「マーティナさんもお姉さんと一緒に買い物?」


「うん……ってレイくん、あからさまに背中に何かを隠したよね?」


「そ、そんな、コトハナイヨ……」


動揺し過ぎて声がうわずってしまう。


「マーティナちゃん~? そろそろ私にも彼を紹介してくれないかな~?」


「あっ、すいません。えっと、レイくん。こちらの方は女性騎士団に所属している騎士の方で、ブルーノくんのお姉さんでもある、アリエルさんです!」


「えっ、マーティナさんのお姉さんじゃなくて、ブルーノのお姉さん? そう言えば髪色も一緒だし、美形という意味では似ているか」


「あはは、初対面の子に美形って言われたのは初めてだよ~。君が噂のレイくんなんだね~」


「噂……?」


騎士団で何か変な噂でもされているのかな?


露店の件……?


いや、【虹結晶】の件か?


いろいろ候補がありすぎて分からないな……


「あっ、良い方の噂だから気にしないで良いよ~!」


「そうなんですか?」


「うん、うちの弟のブルーノがレイくんが居なかったら死んでいたって言ってたから~会ってお礼を言いたかったんだよ~」


「ああ、そういうことですか」


騎士団は全く関係なかった。


「あっ、レイくん……そんなにファッション給仕服を買ってどうするの?」


マーティナさんが後ろから自分が買おうとしていたファッションメイド服を覗き込んでいた。


「えっ……あ」


アリエルさんとの会話に集中し過ぎて、マーティナさんが後ろに回ったのに気が付かなかった。


「レイくんってそういう趣味があるの? もしかして、エレナやコーデリア、シンシアに着せるとか?」


「へ~、マーティナちゃんと同じ歳なのにレイくんはなかなかのセンスをしているんだね~」


なかなかのセンスってなんですか……


というか、早急に言い訳をしなくては。


「ち、違うんですよ。これは親戚の人に頼まれて買っているもので、僕の趣味しゃないです……」


「そうなの~? それにしてもファッション給仕服って、しっかり見るのは初めてだけど、面白いデザインよね~」


アリエルさんはニヤニヤしながらメイド服を見ながらマーティナさんをチラチラ見ていた。


「えっ、何ですかアリエルさん?」


アリエルさんのニヤニヤした表情に、嫌な予感を感じるマーティナさん……


「マーティナちゃんに合う服があったら買ってあげるわよ~、だから、それを着てうちに遊びに来てよ」


「ええっ!?」


「マーティナちゃん、嫌?」


「……分かりました。サイズがあればお願いします。」


マーティナさんは諦めた表情になり、マーティナさんに似合うメイド服が合ったので、購入して先に帰って行った。


 そのあと、下着に関しては店員さんには親戚のお使いで来たと説明し、怪訝な表情をされたがそれは我慢して店員さんに下着を選んでもらった。




 ☆


 自宅地下に戻って、セシリアの顔以外の細部を再度調整しながら造り変えていく。


顔に関してはほぼ完成してはいるが、最終的には動かしてみながら人工筋肉など変更していくつもりだ。


とは言っても本当の筋肉配置ではないので、動かした時に違和感は必ず出るだろうなとは思っている。


ちなみに、筋肉について学園の図書館で調べようとしたが、簡単な内容の本しか無かった。


学園以外の図書館にいけば、もっと詳しい図書館があるのかな?


 そう言えば、セシリアを外に出す時はどういう設定にするかな。姉とか家族にすると同級生と遭遇した時が後々面倒だしな……どうしようかな。


 結論が出ないから問題はまた後回しにした……。



 それにしてもよく考えたら【魔導細胞生成】は便利だな。咄嗟には使いこなせないけど、部屋みたいな落ち着いたところでイメージをしっかりすれば、容姿とかイメージ通りに作れるからな。整形手術もビックリの技術だな。他人をいじる場合は本人の同意が無いとスキルがハジかれるけどそれは当然か。


『セシリア、容姿などの微調整も可能だけど、希望はある?』


『ようしなどのびちょうせいはますたーにおまかせします。』


『それじゃあこのままでいこうか』


 試しに自分にもこのスキルが使えれば美形になれるんだが、顔の微調整はハジかれてしまった。

 この世界のスキルはチート性能かと思うと、変なデメリットがあるよな。




 ☆


 学園にて、休憩時間にブラットが話しかけてきた。


「最近、レイは授業終わったらすぐに帰るけど、何してるんだ?」


「一応、スキルの実験かな?」


「まあ、お前のスキルは変わってるからな。 それより少しは身体が鍛えられてきたみたいだけど、どうだ? 動きは良くなってきたか?」


「……まあまあだね。朝トレーニングを始めてから、身体のキレは良くなった気はするけど……ブラットに比べるとまだまだかな、それにしてもブラットは7歳に見えないよ……?」


 既に150センチはある。

 自分は126センチ。


「人族の11か12歳位あるよね。」


「まあ、俺はドワーフ族の血が入った人族だからな。」


「アランとブルーノは130位で僕より少し高いんだよね。バリー、クライブが似た身長か。」


「エレナ、マーティナさんもお前と同じ位だな。」


「正確にはわからないけど、それ位かな? コーデリアさんとシンシアさんは相変わらず90センチ位だな。妹のフローラの方が100センチ位だから、フローラは僕よりも成長は早いな……。」


「確かにエルフは小さいな……。」


「成人したエルフって見たこと無いんだけど、どうなんだろうね。」


「そう言えば、俺も見たこと無いな。」


「やっぱり小さいのかな……。」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る