第71話 2年生

 冬休みも終わり、今日から学園の2年生がスタートする。


 担任は一年生から変わらずのロナルド先生だった。

 不祥事や辞めたりしない限りロナルド先生が4年間を同じクラスの担当をするらしい。


 新入生も入学して人数はうちらと同じ位の32人らしいが……まあ、新入生と関わり合いは、ほとんど無いだろう。

 現に自分は上級生と関わりが無いしな……。



 クラスメイトは皆、無事に学園に戻って来ていた。


「みんな無事に戻って来たな、今年も1年間よろしくたのむぞ。2年生からはやることが1つ増えてクラブ活動をしてもらう。種類はいろんなのがあり、どれか1つに入ってもらうからな。」


「先生! それは上級生と一緒にやる活動ですか?」


「そうだ、多くの生徒と交流してもらい専門の事を学んでもらうのが目的だ。」


 いきなり上級生の絡みがあるんだな……。



 クラブは戦闘系、文化系、研究系、その他とあるが数は多くない。全校生徒が140人位だから仕方ない話だが……。



 クラブ活動は授業中のみで週2時間だけだから割と少ない。


 闘技クラブ

 長距離走クラブ

 狩人クラブ

 魔法研究クラブ

 回復研究クラブ

 魔獣研究クラブ

 絵画研究クラブ

 魔道具クラブ



 クラブ活動リストのプリントが渡された。


(……何にするか迷うなぁ。)


 どこに入るか迷っていると、コーデリアさんとシンシアさんが話かけてくる。


「レイさんはどんなクラブに入るんですか?」


「まだ迷っているんだよね。ちなみに2人は決まってるの?」


「私は回復研究クラブです!」


「私は、魔法研究、クラブに入ろうかと、思ってます。」


「みんな職種関係に行くのかな?」


「ほとんどがそうかもしれないですね。レイくんは【魔導剣士】だから魔法研究クラブか闘技クラブですか?」


(そっか、みんなには【魔導技師】の職種を知らせてないから魔法か剣士系だと思ってるのか。自分の中では剣士の感覚は無くて、戦う生産職なんだよな~。)


「魔法研究クラブと闘技クラブはないかな……。」


「そうですか……。」


 シンシアさんが何故かガッカリしてる……。


 申し訳ないが魔導は魔法と違うから微妙なんだよね。


「今のところの候補は魔獣研究クラブか絵画研究クラブかな?」


「その候補は予想外ですね。」


「絵画は好きでね。魔獣は単純に興味があるんだよね。1週間考えられるから悩んでみるよ。」




 それから悩んだ末に魔獣研究クラブに入る事にした。

 絵は子供レベルの授業ならば受けなくとも良いだろうという結論になり、それならば全く知識がない魔獣研究クラブにしようと考えたのだ。



 ☆



 自宅地下にて。


 自分は【魔導工房】にて【魔導細胞生成】と【魔導科学】を使ってセシリアの肉体を造る実験を少しずつ繰り返していた。


『セシリア、腕は動くか?』


『すいません、うごきません。』


『【魔眼】で見ると【虹結晶】から流れる魔素の範囲が短いな……【魔素通話】が出来るのにな。』


 現在、セシリアをメインコアとして【魔導工房】で成人女性サイズの金属骨格を組み上げて、【魔導細胞生成】と【魔導科学】で人工筋肉を作り、金属骨格に貼り付けていく作業をしていた。

 人体模型の筋肉バージョンみたいでちょっとグロい。

金属骨格にメインコアを配置して、そこから全身を筋肉で覆い操作してもらおうかなと考えていたのだけど、メインコアである【虹結晶】から筋肉各種に【魔素】が全く流れていかず、筋肉を操作することが出来ないでいた。


これは予想外だな。


『セシリア、【虹結晶】から手や足に魔素を送る事が出来ないのか?』


『とちゅうでまそがぶんさんしてしまうのです。』


『魔素が分散するのか……魔素の固定化が出来ないって事は魔素の操作が出来ないのか?』


自分たちも【魔力】や【魔導】を固定化するには、やはり【魔力操作】や【魔導操作】が必要になる。


『できないです。ますたー。』


そもそも【魔素】を操作して擬似的な筋肉を操ること自体が間違っている、もしくは難しいことなのか?


自分の【魔導操作】ならば可能かなと思って考えていたけど……


『【魔力操作】の代わりを作れば良いのか? 魔素を流すラインが出来れば良いな……それなら、魔素を血液と考えたら……そうか、血管を作れば魔素を固定化せずに流せるかも?』


 【魔導細胞生成】で魔素を閉じ込める事の出来る特殊な人工血管を作り人体構造を真似て筋肉と血管を配置する。


 本当に見た目がぐろい……。


 最終的に皮膚を付けないとな。


『どうだ?』


 指が動く。


『ますたー。ちゃんとうごかせます!』


『ちょっと動きがぎこちないけど、そこは慣れかな。』


『がんばります!』


『容姿は……。』


(自分が思う理想の女性にするか。)




 そして【魔導細胞生成】で皮膚や顔、髪を作った。

 このスキルは回復には使いづらいがこういう人形作りみたいな事にはとても向いていた。


本来なら髪や顔、身体などのパーツを精密に生産しなくてはいけないところだが、この【魔導細胞生成】のスキルはイメージさえしっかりと出来れば、あとはスキルが女性の身体や顔を作成してくれた。


まあ、実際にはイメージがしっかりと出来ていない場所が結構あったので、その都度詳細にイメージをやり直ししていた。


何度もの修正を繰り返し、やっとセシリアの身体は完成した。


 完成したセシリアの身体は、身長が160位の色白肌でサラサラの艶がある長い黒髪、少し茶色の入った黒い瞳、和服姿が似合いそうな日本人の容姿にした。

 やはり心のどこかでファンタジー容姿の美人より日本人の女性が恋しくなるのだろう。


セシリアの顔は自分が理想とする女性のイメージで造ったので、自分的には究極の美ではないかと自画自賛してしまう。


『(そこまで褒められると照れますね……)』


『ん? セシリア何か言った?』


『なんのことですか? わたしはなにもはなしていません』


『あれ? おかしいな……女性の声が微かに聞こえた気がするんだけど……気のせいか?』


よく考えると、セシリアとは声が似ている気はしても違う気がした。


というか幻聴が聞こえるとか、疲れてるのかな?


『ますたー、もう外に出れるのですか?』


『ん? ああ、もう身体は完成したから……ってまだダメだった!』


 身体が完成したことで重大な問題が発生した……セシリアが裸な事だ……。

 

 女性用の服を買わないといけないが……どうしよう?


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