第70話 冬休み④
間もなく冬休みも終わりに近づいたので、明日には学園に向けて出発する事にしていた。
「にぃさま~。またいっちゃうの?」
フローラは悲しそうな表情で自分を見上げてくる……毎回このやりとりがあるのだけど、何故かフローラを置いていくことに罪悪感があるんだよな……
「そうだねフローラ。でも週末にまた帰ってくるから良い子にしてるんだよ。」
「レイが学園に行くと、また家の中が寂しくなるわ。」
お母さんも自分が学園に行くのが寂しいみたいだ。
「確かにこの家の大きさで2人は広いよね……。」
お父さんは月に3日位しか戻って来ないし、そりゃ暇にもなるかなと思った。
「あと2年したらフローラも学園に行くから、私1人になっちゃうわ……いっそのことフローラの入学と共に引っ越そうかしら?」
「それはありかもしれないね。そしたらお父さんも帰ってくるのが楽だろうし」
【モロット】は王国の最南端に位置しているので、お父さんが働いている場所は【チェスガン】の方が近かったりする。
「今度レオンが帰って来たら相談してみるわね」
お母さんは割と本気で引っ越そうと考えているみたいだった。
「そう言えば、来年にはフローラの誕生祝いだね。 どんな職種になるか楽しみだよ。」
「にぃさまといっしょがいい!」
「……それは難しいかもしれないけど、一緒の職種なら良いね。」
(魔導系の職種の人を見たことがないな……)
「ちがうよ、にぃさまのおよめさんになる!」
「……そっちの一緒? 兄妹だからそれは無理だよ?」
「あら、兄妹でも結婚は出来るわよ?」
「え? そうなの?」
「種族によって考えが違うから、国の方針次第だけど王国では異性なら誰とでも結婚出来るわ。 ほとんど居ないけど親子で結婚する人もたまにいるわね。養えるなら人数制限も無いわよ。」
「マジか……。」
まさかのこの異世界常識だった……。
王国はハーレムを推奨の国か?
だが、自分としては前世の日本人としての倫理観があるので、妹は妹にしか見られないし、親子で結婚だなんて論外だろう。
そこはいくらフローラが可愛くても変わらないだろう。
「フローラは僕よりも良い人を見つけないとダメだからね?」
「にぃさまとけっこんできないの?」
「うん、僕としてはフローラはずっと妹で居て欲しいと思っているよ」
まあ、フローラも自分と結婚したいという気持ちは今だけのものだろうと思う。
学園に入れば同学年のイケメンや性格のよい子だって沢山いるだろう。
「やっ~!!」
最終的にはフローラが泣き出してしまったので、お母さんに任せて自分は【チェスガン】行きの馬車に乗り込むのだった。
☆
学園に向かう馬車の中で。
「レイも大変そうだな。俺には兄弟がいないから分からないけど」
自分とフローラのやり取りを馬車から見ていたブラットはちょっと笑いながら話しかけてきた。
「まさか、兄妹で結婚出来るなんて知らなかったよ。」
「俺としてはレイが知らなかったことにビックリだぜ。レイは何でも詳しいから知ってると思ったぜ。ちなみにドワーフは家族での結婚は出来ないぜ。」
「獣人族はそれぞれにゃ。」
「へぇ、ちなみにエレナの種族は?」
ちょっとエレナの種族がどんな感じなのか気になった。
「私の種族は結婚しないみたいにゃ。」
「結婚しない?」
「そうにゃ。詳しくはママから教えてもらえないからわからにゃいけど、私にパパはいないにゃ」
「そう言えばエレナのお父さんはみたことないなと思っていたけど、そういう理由なんだ……」
個人的には更に突っ込んで知りたいなと思ったけど、子供であるエレナに聞いても良くないだろうと思い、とりあえずは納得した。
☆
チェスガンに到着して、2人と別れたら真っ直ぐに住宅の地下に来ていた。
『ただいま、セシリア。』
2ヶ月間、遠距離で会話は定期的にしていたけど、やっぱりセシリアには人格もあるのだし、近くで会話した方が良いかなと考えていた。
『おかえりなさい。ますたー。』
『【虹結晶】との【同期】はどう?』
『ぜんにじけっしょうとのどうきにはせいこう。 じがにはめざめていません。』
やはりか……
『自我はセシリアだけか、まだ結晶が育ってないからかもしれないから、引き続き結晶は大きくしよう。』
『それでますたー、わたしはあたらしいのうりょくをしゅとくしました。』
『え? 能力を取れるの?』
『はい、まそあっしゅくきゅうしゅう、というのうりょくです。』
『【魔素圧縮吸収】か、名前からするとセシリアの入ってる機械の機能だよな?』
『はい、こののうりょくにより、わたしはここのそとでもせいちょうできるらしいです。』
『おお! それは凄いな!』
『それなら今度一緒に外へ出るか?』
『はい、ますたーといっしょがいいです。』
『今のセシリアの大きさは5センチはあるからペンダントにするとおかしいしな……ペット型のロボットでも作るか? いや、セシリアのイメージは人型の女性だろうから、【魔導細胞生成】を試してアンドロイドをつくるのも有りか?』
【魔導細胞生成】は簡易的な回復性能もあるけど、別の使い方が正しいと考えている。
『どうしました……?』
『とりあえず、一緒に出るのは少し待ってもらって良いかな?』
『はい、ますたー。』
そうなると骨組みはどうするかな……
いろいろ考え、いくつかの候補が思い浮かんだけど、どれもお金がかかるな。
金策のために余裕のある時、練度上げを兼ねてお菓子とポーションを大量に作って置こう。
そして住宅地下にある箱型【ストレージ】に大量なお菓子の在庫が保管されていった。
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