第67話 冬休み①
学園は冬休みに入り、実家に戻って来たが自分は日課のトレーニング以外、特にやる事があまりなかったので、日中はせっかくだからフローラを連れて町をぶらぶらしていた。
「フローラ、何して遊ぼうかね?」
「にぃさまとならなんでもいいよ~。」
「そうだなぁ~。どこかのお店でも覗いてみるかな。」
どこのお店に入るか考えながら歩いていたら、以前お世話になっていた食堂前を通った時にシーラさんが自分達を呼び止める。
「あっ! レイちゃんにフローラちゃん、ちょうど良いところに来たね。こっちにおいで~。」
「何だろう? シーラさんの食堂に行ってみよう。」
「あい!」
食堂に行くと直ぐに裏口の店長室に連れて行かれた。
「レイちゃん、前に職場体験時の最後に作ってくれた【なめらかプリン】の事で相談があるんだけどね……。」
「あれがどうしたんですか?」
確かに職場体験のお礼に得意のプリンを作ってプレゼントしたのだが……そう言えば、後日レシピもあげたけど、再現出来たのだろうか?
相談してきてるってことは再現に失敗したのだろう……
「貰ったレシピ通りに作ってもやっぱり再現が出来ないのよね……もう一度だけ作り方を教えて貰えないかしら?」
どうしよう……あのプリンが再現出来ない理由が【素材の極み】というスキルの結果とは言い辛いけど誤魔化せない気がするな……。
「シーラさん、プリンについて説明する内容を僕の両親にも内緒にして欲しいのですが大丈夫ですか……?」
「……なんか聞くのが怖いけど、内緒にするわ。」
「フローラも秘密にしてくれるか?」
「わかりました! にぃさまとのひみつですね?」
「よし、じゃあ言いますね。あのプリンがあんなに美味しかったのは簡単に言うと僕のスキルが影響しているんです。詳細は流石に言えませんが僕が作ると普段以上の美味しさになるのでレシピ通りに作っても再現は出来ないんです……騙したみたいで、すいません。」
「それはまた不思議なスキルね……。」
「それで話は飛びますが、半年後に学園のある街でも知り合いと共同でお菓子を販売するお店を出すんですが、そこで僕が正体を隠してお菓子を作ります。」
「ん? 何の話かしら?」
「プリンは僕しか作れないのでこちらで作ることは出来ないですが、向こうで出店するお菓子屋から定期的にこっちの食堂にもお菓子を卸すのはどうかなと思いまして。」
「なるほどね。それならうちの食堂でも数量限定とかにすればお菓子の販売は出来そうね……保存期間はどうなのかしら? 輸送するなら直ぐにダメになると厳しいわ。」
「現在輸送用の箱を開発していて、その専用の箱に入れていれば1週間は保存出来ると思います。」
「それなら、是非お願いしたいわ。」
「予定では夏頃にお店がオープンしますから、オープン日が決まったら帰省時に連絡しますね。」
最近【虹魔石】を量産した事でいろいろな実験が出来る様になり、その結果【虹魔石】を使うと箱に【ストレージ】を付与する事が出来る事と、【虹魔石】を普通の魔石に偽装する方法を思いついたのだ。
【虹魔石】の【魔導具】を使うには自分が【魔導操作】で補充しないと1週間位で使えなくなるのが難点だが、輸送時に時間停止機能を使えるのはとても便利だったりする。
【虹魔石】を組み込んだ物を【魔道具】として販売する事は騒ぎになるから出来ない、その為に箱型【ストレージ】を氷属性の【魔石】を使う保冷箱に偽装したいと考えたのだ。
そこで考えたの解決策がまず【虹魔石】を機能が維持出来る限界の大きさで作り、その周りを普通の【魔石】で覆うのだ。
普通の【魔石】で覆う方法は【虹魔石】の材料である【虹魔粉】を偽装したい属性に偏らせて特殊な【魔石】に変えるのだ。
面倒な、手間が増えるがこれが今のところ成功している偽装方法である。
将来的には偽装用の【魔導具】を作れば解決しそうな気はするがまだ成功はしていなかった。
偽装方法は単純な機械の改良で出来たが、偽装したい属性の分だけ専用の機械がいるから地下はさらに12個の偽装【魔石】を作るカプセルが増えて研究室は更にカオスな状態になった……。
しかしこの偽装【魔石】は優秀で自分の【鑑定】を欺き、普通の【魔石】として表示されるが効果は【虹魔石】なのだ。
唯一の欠点は【虹魔石】が小さいと性能も落ちるから、必要な性能を出す為に偽装後の【魔石】は普通より2周り大きい【魔石】になってしまった。
その辺は今後の研究課題だろう……。
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